高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【医科大市有地占有訴訟】第1回口頭弁論は8月18日


高槻市大阪医科大学の敷地内に、高槻市の所有する土地があることが分かりました。

大阪医科大学敷地内の高槻市有地

上の図は地図と公図を重ねたもの。この図の真ん中あたりの、大阪医科大学の敷地を東西に貫いている赤い横線の部分が、高槻市有地が存在すると考えられる場所。この土地は、フェンス等で囲まれているだけではなく、病棟まで建てられています。土地から北にやや離れたところに門があるのですが・・・

大阪医科大学の東門

大学の関係者以外は立ち入り禁止とされています。完全に大学が自身の敷地として扱っているわけです。

無論、何らかの正式な契約や許可があれば問題はありませんが、高槻市に対して情報公開請求したところ・・・

大阪医科大は無許可・公文書不存在による非公開決定通知書

「公文書不存在による非公開決定通知書」が通知されました。つまり、何も契約も許可もないわけです。そうすると、不法に占有されているとしかいえません。

この件については今年の3月議会で取り上げたかったんですが、改選前で一般質問がありませんでしたので、できませんでした。裁判をするにしても、6月議会で質問してからにしようかなとも考えたんですが、選挙で当選できるかどうかも分かりませんでしたし、時効や期間徒過の問題もありましたので、住民監査請求をし、結果に不服だったので、住民訴訟を提起いたしました。

先日の6月議会の一般質問で取り上げたのですが・・・

大阪医科大学敷地内に存在する市有地等について>

1.大阪医科大学の敷地内に高槻市が所有する土地が3筆あります。何らの許可・契約等もなく、もちろん使用料や地代等も支払われず、つまり、不法に占有されているとしかいえないのですが、何故このような状態になっているのでしょうか?経緯と理由をお教えください。また今後はどうされるのか、お答えください。

2.当然、地代相当額を大阪医科大学か、これを許してきた責任者に請求すべきですが、市としてはどのようにお考えでしょうか?見解をお聞かせください。

3.以前、奥本前市長が大阪医科大学の理事に就任し、報酬を得ていたことがありましたが、これまで市や議会の関係者・元関係者は、大阪医科大学から、どういった形で、どれだけの報酬・謝礼等を得てきたのでしょうか?お答えください。

<答弁>
 1点目と2点目につきましては、現在係争中の案件でございますので、ご答弁は差し控えさせていただきます。
 3点目につきましては、把握しておりません。



係争中であっても市は答弁すべきだと思いますが、答弁をしないということなので、この件についてはこれで終わりました。

住民訴訟の第1回口頭弁論は8月18日午前10時から大阪地裁806号法廷です。

以下は住民監査請求の監査結果です。市側はいろいろと主張しましたが、情報公開請求しても何も公文書が出てこなかったのですから、後付けの言い訳としか考えられません。

住民監査請求監査結果

1 請求の受理
 平成27年2月26日に請求人から地方自治法(以下「自治法」という。)第242条第1項の規定に基づき提出された住民監査請求(高監委第434号)は、形式上の要件を具備しているものと認め、同日付けで受理した。

2 請求の要旨及び理由
 監査に当たり、請求書記載事項及び事実証明並びに請求人の陳述から請求の要旨及び理由を次のように解した。

(1) 請求の要旨
 高槻市(以下「市」という。)が所有する地番高槻市大学町350番1(13㎡)、同355番11(33㎡)及び同1189番3(0.26㎡)の土地(以下「本件土地」という。)を、学校法人大阪医科大学(以下「医大」という。)が全く使用権限、法的根拠がないにもかかわらず不法に占有し続けてきた。過去に医大が本件土地を不法に占有していた期間の地代相当額及び時効消滅した債権の額が市の損害である。よって、過去10年分の当該地代相当額について、その詳細及びその責任者を明らかにした上で、医大その他関係団体、関係人、市の関係職員、決裁権者、専決権者、市長その他の責任者に対し、不当利得返還請求又は損害賠償請求すること及び本件土地上の建物等を撤去し明け渡させて原状回復し、その費用を前記各人らに対し請求することを勧告することを求める。
 また、それらの不当利得返還請求又は損害賠償請求を怠る事実及び故意過失により時効消滅した債権につき当該責任者に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法不当であることの確認を求める。

(2) 請求の理由
 本件土地は、いずれも昭和28年11月1日に市に寄附され、その所有権は市にある。医大は本件土地を敷地として囲い込んでおり、建物を建設するなど不法に占有している。請求人が市長に対し本件土地の契約や使用許可、使用状況、使用経緯に関する情報公開請求をし、市長からは公文書不存在による非公開決定通知がされた。このことは市と医大との間には何ら契約や使用許可の関係が存在しないということである。

3 監査の実施

(1) 監査対象事項
 請求人は、本件土地に係る過去10年分の地代ないし地代相当額(以下「地代等」という。)について、不当利得返還請求又は損害賠償請求することを求めていることから、過去10年間における本件土地について、自治法第242条第1項に規定する違法又は不当に財産の管理を怠る事実があるか否かを監査対象事項とした。
 なお、請求人は、本件土地の不法占有による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実、故意過失により時効消滅した債権について当該責任者に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法不当であることの確認を求めているが、当該確認は、自治法第242条第1項所定の監査対象事項ではないことから監査の対象外とした。

(2) 監査対象部課
 都市創造部管理課

(3) 請求人の証拠の提出及び意見陳述
 平成27年3月18日に、自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人から新たな証拠の提出があり、概要、次の陳述があった。
 医大の敷地を東側から撮影した写真からフェンスと柵で敷地が囲われていることが分かる。本件土地があると考えられる場所もフェンスで囲われている。
 西側は請求時に提出した写真から明らかなとおり建物が建っている。この建物は北から南まで一体であり、本件土地の上にも建物があり完全に医大によって不法占有されている。

(4) 関係職員の陳述
 平成27年3月18日に、都市創造部の部長、部長代理、同部管理課の課長、課長代理が陳述を行った。その際、自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人の立会いを認めた。

ア 関係職員の陳述は、概要、次のとおりである。
 本件土地は昭和13年に分筆され、昭和28年11月1日に市に寄附されたが、本件土地の取得に関する資料がないため寄附を受けた理由等は不明であり、本件土地の管理に関する記録も存在していない。3筆のうち1189番3は地目が宅地となっており、他の2筆の地目は用悪水路となっている。公図上も3筆は東西に連続していることから、実態は3筆とも敷地内の雨水を敷地外に排出するための排水路となっていた可能性が高いと考えている。
 また、本件土地は分筆された時期が古く、地積測量図は存在しないが、公簿面積とその延長からすると幅は30cm 程度に過ぎず、通常の水路に比べ幅員が極端に狭く、道路の側溝程度の幅員しかない土地である。なお、市が本件土地の寄附を受けた当時、北側隣接地には京都大学化学研究所が所在し、南側隣接地は土地所有者が医大の建設用地として譲渡した時期である。昭和43年に京都大学化学研究所の敷地が医大に払い下げられて以降、本件土地は医大の所有地に挟まれて存在することとなった。
 医大は、都市再生特別措置法による都市再生緊急整備地域の指定を受けた「高槻駅周辺地域」において、本部キャンパスの校舎・研究施設や病院施設の建て替え計画を効率的に促進し、教育・研究・医療機能を充実強化し、市民開放や良好な都市環境の形成に資する施設整備を進める目的で大阪府知事に同法に基づく都市計画提案を行い、平成16年12月28日に大阪府により都市計画決定の告示が行われた。この提案では敷地境界から5mから7m壁面後退し緑歩道等を整備することが計画され、周辺への景観保護や歩道としての機能の充実が図られるなど、良好な都市環境の形成が期待できるものであり、市としても当該地域のまちづくりへの貢献が期待できることから、これら事業の推進について積極的に協力を行うものとし、これを機に医大と市は新たな開発計画について協議を行うこととなった。
 その一つは、新講義実習棟(以下「PA会館」という。)の開発協議であり、この都市計画提案に基づく開発行為として大学施設内にPA会館の建築計画がなされることとなり、開発事業の手続等に関する条例(以下「市条例」という。)に基づき市と協議を行うこととなった。この協議の中で管理課としては、開発区域内に存在する本件土地が既に用悪水路機能を喪失していることを認識することとなった。このため、境界確定を行うことにより本件土地の位置・面積等を明確にすることとし、平成16年11月9日に医大からの境界確定申請を受け、後に境界を確定した。また、都市再生特別措置法に基づく良好なまちづくりについても検討を行い、医大が都市計画提案に基づく5mから7mの壁面後退を行い、緑歩道の整備を実施するに当たり、市としてもこれにあわせて医大北側に位置する都市計画道路高槻駅松原線(以下「高槻駅松原線」という。)の右折レーンの設置に伴う道路改良、南側にある都市計画道路阪急北側線(以下「阪急北側線」という。)の拡幅等も同時に検討する方向で調整を行っていくこととなった。これら事業の実施には医大所有地の提供が必要となることから、本件土地との交換等を含めて医大と協議を行うこととし、平成17年1月11日に市条例に基づき市と医大との間で覚書(以下「平成17年覚書」という。)を締結した。この覚書には、開発区域内に存在する市有地の用地処理について関係課と別途協議すること、阪急北側線及び高槻駅松原線の後退道路部分の取扱いについて関係課と別途協議することの内容が記載されている。
 二つ目は覚書締結後の協議等である。この覚書締結後はそれぞれの課題について協議を行っていたが、阪急北側線については平成20年度から医大の了解を得て道路改良事業を実施し、工事完了後の同22年10月1日に正式に医大から土地(542㎡)を無償で借り受ける旨の土地使用貸借契約を締結した。これら医大の都市計画提案による事業は、当初は15年程の期間を想定し完成させる予定となっていたが、病院機能や教育機能を維持したままで建て替えを行う必要があることから、これについての検討や対策に時間を要したため事業の進捗が大幅に遅れている。また、市としても高槻駅松原線については市における道路線形の検討中の段階で、安満遺跡公園整備に伴う都市計画道路の線形の検討や平成28年度に予定されている新名神高速道路高槻インターチェンジの開通に伴う影響等から、新たに府道伏見柳谷高槻線の拡幅等の課題についても検討する必要が生じたことなどの事情により用地の取扱いが確定できない状況となっていた。なお、高槻駅松原線の交差点改良は、平成26年度事業の中で設計を行っており、これが確定し次第、改めて医大との間で用地の処理について最終的な協議を行うこととしている。
 次に不法占用についてである。前述の医大が都市計画提案を行い、施設の再整備の開発行為に関する手続を行う段階で、本件土地の存在と現況を把握し用地処理の課題を認識した。その後、医大との間で平成17年覚書を締結し、平成17年1月17日に本件土地の境界確定を行うなどして用地処理に向け医大との協議を進める中で、上記土地使用貸借契約を締結するなど、都市再生特別措置法に基づく良好なまちづくりを行う中で医大も誠実に対応されており、用地の処理を漫然と放置していたという状況はない。医大の事業全体の進捗については様々な要因により当初予定より時間を要しているが、市としてはまちづくりの観点から様々な課題に対して総合的に取り組んでいく必要があると認識し、本件土地の処理についてもこれらの歩調とあわせて解決を図っていかなければならず、やむを得ないと考えている。
 また、本件土地は、平成17年3月に行政財産としての用途を廃止した普通財産である。普通財産は、財産の経済的価値を保全発揮することにより間接的に市の行政に貢献させることを目的に所有する財産と位置付けられている。当該開発区域内の周辺道路網の整備においては医大から用地の提供等を受ける必要がある。このため、都市計画法に基づく開発協議や交換等の手法により市の財政負担を軽減する方向で協議を行うことは、むしろ当該財産価値を最大限生かすもので最善の方法と考えている。これらの事情を勘案すると本件土地の管理について違法な点はなく、これによる損害も発生していない。

イ 関係職員の陳述に対する請求人の反論の概要は、次のとおりである。
 本件土地の取得の記録がなく管理の記録もないというのは管理不足である。
 平成16年に本件土地の存在と現況を把握し、平成17年覚書を締結したというが本件土地に関してその覚書は有効なのか。証拠として提出した公文書不存在による非公開決定通知書について、当該覚書が本件土地に関係するものなら出てきたはずであるが出てこなかった。ということは、覚書は本件土地には関係がないということである。医大がその土地を無償で貸してくれているとかは関係がない。占有している本件土地に関して契約がなかったら本件土地に関しては普通財産となり地代相当額は払ってもらわないといけない。

(5) 実地調査
 平成27年3月25日に実地調査を行った。
(6) 関係職員の事情聴取
 平成27年3月27日に都市創造部の部長、部長代理、管理課の課長、課長代理に対して事情聴取を行った。
 また、請求書及び証拠書類について調査し、関係職員に対し質疑を行った。

4 監査の結果

(1) 事実の確認
ア 本件土地の取得の経緯等について
 本件土地の土地登記簿上の地目は、大学町350番1及び同355番11は用悪水路、同1189番3は宅地となっており、公図(地図に準ずる図面)ではほぼ東西方向に走る細長い土地となっている。昭和28年11月1日に市が寄附収受したものの、当時の本件土地の取得に関する資料や管理に関する資料は存在せずその実態は明らかでない。市によると、昭和13年に分筆され、地積測量図は存在せず、公簿面積46.26㎡とその延長から考えると、その幅は30cm 程度で道路の側溝程度の幅員しかない土地である。昭和43年4月10日に医大が本件土地の北側に位置する土地(大学町344番3)を京都大学から取得したことから、本件土地は医大の所有地に挟まれて存在することとなった。

イ 本件土地の占有について
 本件土地の全体は医大の敷地に取り込まれた状態となっており、その一部は医大の雨水等を処理するための雨水管が通り、病院5号館が建っているなど医大に占有されている状況であることを実地調査において確認した。

ウ 本件土地の公用廃止について
(ア)都市再生特別措置法による都市再生緊急整備地域の指定
 医大は、都市再生特別措置法による都市再生緊急整備地域の指定を受けた「高槻駅周辺地域」において、大学・病院の建て替えにより教育研究・医療機能を充実強化し、市民開放や良好な都市環境の形成に資する施設整備を進め、都市機能の高度化を図る目的で大阪府知事に同法に基づく都市計画提案を行い、平成16年12月28日に都市計画決定が告示された。
 この提案では医大の敷地境界から5mから7m壁面後退し緑歩道等を整備することが計画され、周辺への景観保護や歩道機能の充実が図られるなど良好な都市環境の形成が期待できることから、市も当該事業の推進について積極的に協力を行うこととし、これを契機に市と医大とは新たな開発計画について協議を行うこととなった。

(イ)本件土地の公用廃止について
 この都市計画提案に基づく開発行為として、医大敷地内にPA会館の建築計画がなされ、平成16年9月1日付けで医大から市条例に基づく開発事業事前相談書が提出され、その中で当該開発区域内に本件土地が存在することを市と医大が認識することとなり、市の意見書に本件土地について協議すること等とされた。同年11月9日には医大から本件土地の境界明示申請書が提出され、同年12月2日に境界明示のための立会いを実施し水路機能が喪失していることが確認され、同月15日付けで医大から土地の一体利用のためとして市有水路公用廃止申請書が市に提出された。平成17年1月17日に境界明示が結了し、本件土地の実測面積は、合計59.13㎡(大学町350番1は31.30㎡、同355番11は27.56㎡、同1189番3は0.27㎡)と確定した。同年3月18日付け決裁により本件土地を公用廃止し、行政財産から普通財産に変更され、同年6月に財産管理主担課に公有財産異動通知を行った。なお、同決裁には「公用廃止後、管財課へ公有財産異動通知し管財課で用地交換等の処理をおこないます」との記載があり、上記公有財産異動通知の異動事由の内容欄には「公用廃止し学校法人大阪医科大学と交換予定」、添付書類欄には「市道との交換予定があり、当該事務は建設部で行う」と記載されている。

(ウ)医大所有地の使用貸借契約について
 平成16年12月14日付けで医大から阪急北側線計画区域内の医大の土地(大学町336番3他)約660㎡を道路法上の市道として市が無償使用することを承諾する旨の通知がなされた。また、同月16日付けで市と医大との間で、都市再生特別地区の都市計画を決定するに当たり、覚書(以下「平成16年覚書」という。)が締結された。その主な内容は、①医大は、市が計画している阪急北側線の整備に協力するものとし、市、医大双方協力して早期の事業化に努めるものとする、②医大は、敷地周辺の境界から北、東及び南側(南側は阪急北側線から)は5m以上、西側は7m以上の壁面後退を行うものとする、③医大は、壁面後退部分を緑歩道として整備し市民の利用に供するものとする、④医大は、敷地南側に阪急北側線から利用できる広場を設置し市民に開放するものとする等である。
 そして、平成22年10月1日付けで市と医大は、医大所有地(大学町336番3他の一部)542㎡を借り受ける旨の使用貸借契約(以下「本件使用貸借契約」という。)を締結した。その内容は、①医大は市に対し当該土地を無償で貸与する、②当該土地の使用目的は道路法上の市道の用に供すること、③契約期間は契約日から10年間とする等とするものである。

エ 普通財産としての本件土地の扱いについて
 市は、都市再生特別措置法による都市再生緊急整備地域の指定を受けて医大が行う本部キャンパス施設の整備にあわせて、高槻駅松原線の右折レーンの設置に伴う道路改良、阪急北側線の拡幅等も同時に検討する方向で調整を行っていくこととなった。これら事業の実施には、医大からその所有地の一部の提供が必要となることから、本件土地との交換等を含めて医大と協議を行うこととし、平成17年覚書を交換した。その第1条は、「医大は、市の指導事項(別紙1~20)を遵守して、医大が市に提出した開発事業事前協議申出書の添付図面のとおり開発事業を施行する」とされ、その別紙9「事業主学校法人大阪医科大学(PA会館について)」の建設部道路管理室管理課の項6項では「開発区域内にある市有地の用地処理について、関係課と別途協議すること」、7項では「都市計画道路(阪急北側線)及び市道高槻駅松原線の後退道路部分の取り扱いについて、関係課と別途協議すること」とされている。この覚書に基づき、阪急北側線については、平成20年度から道路改良事業を実施し、本件使用貸借契約を締結した。これら医大の都市計画提案による事業は、当初は15年程度の期間を想定し計画を完成させるとされていたが、病院機能や教育機能を維持したまま建て替えを行うことの検討や対策に想定以上の時間を要したことから事業の進捗が大幅に遅れている。また、市としては、高槻駅松原線の道路線形を検討中の段階で、安満遺跡公園整備に伴う都市計画道路の線形の検討や新名神高槻インターチェンジの開通に伴う府道伏見柳谷高槻線の拡幅等の課題についても新たに検討する必要が生じたことなどにより、本件土地の取扱いが確定できない状況となっている。高槻駅松原線の交差点改良は平成26年度事業の中で設計が行われ、確定し次第、改めて医大との間で本件土地の処理について最終的な協議を行うこととなっている。

(2) 判断
 請求の要旨及び理由、請求人の陳述、関係職員の陳述及び事情聴取、実地調査並びに関係書類から判断した結果は、次のとおりである。
 本件土地は、医大の都市計画提案に基づく開発行為のなかでその存在が市及び医大により確認された。実質的に水路機能を喪失していることから、医大は、平成16年12月15日に市に対し土地の一体利用を理由に本件土地について市有水路公用廃止申請書を提出し、市は、平成17年1月17日の境界明示の結了を待って、同年3月18日付け決裁により本件土地の公用を廃止し、行政財産から普通財産に変更した。そして、本件土地の扱いは、平成17年覚書の指導事項別紙9において、開発区域内にある本件土地の用地処理について関係課と別途協議すること、及び阪急北側線及び高槻駅松原線の後退道路部分の取扱いについて関係課と別途協議することとされていること、並びに平成17年3月18日付け上記決裁文書及び公有財産異動通知における記載からすると、市は、本件土地が高槻駅松原線の拡幅及び交差点改良工事に伴い医大から提供を受けることとなる土地と交換することを前提に医大と協議していたものであることが認められる。そして従前どおり医大による本件土地の占有を認めてきたことについて、本件土地は土地の交換を行うことを前提として市と医大が双方合意し手続を進めている過程であり、あえて貸借契約を行う必要がないものとしている。自治法第242条第1項の「違法又は不当に財産の管理を怠る事実」とは、普通財産を権原なく占有する者があるにもかかわらず、是正のための措置を何ら講じない場合(昭和38年12月19日行政実例)とされていることからすると、本件土地に関して医大との貸借契約書や本件土地を医大が使用することについて明らかにした覚書等の文書は存在しないものの、上記のとおり本件土地の処理については、市と医大が双方合意の上、開発事業における協議の中で扱われることとなったものであり、これら文書が存在しないことをもって直ちに違法又は不当に本件土地の管理を怠っているということはできない。
 また、本件土地に係る地代等を徴収しないことについて、市は、土地の交換を前提として市と医大が双方合意し手続を進めている過程であり、阪急北側線の市道敷として医大所有地の一部を無償使用していることをも考慮し、地代等を徴収していないとし、仮に貸付けを行う場合であっても、高槻市財産の交換、譲渡及び貸付けに関する条例第4条第1号の規定により無償貸与が可能としている。
 そこで、本件土地について地代等を徴収しないことについて、市の損害が発生しているかどうかについて判断する。
 普通財産は、貸付け、交換、売払い、譲与、出資の目的の対象となるものであり(自治法第238条の5第1項)、行政財産のように行政執行上直接使用されるべきものではなく、その経済的価値を保全発揮することにより、間接的に普通地方公共団体の行政に貢献することとなるもので、原則として一般私法の適用を受けて管理処分されるべき性質のものである(新版逐条地方自治法第7次改訂版、松本英昭著956 頁参照)。市は、普通財産である本件土地については医大への貸付けの対象としてではなく、高槻駅松原線の拡幅及び交差点改良工事に伴い医大から提供を受けることとなる土地と交換することが本件土地の経済的価値を高め、市の道路行政に貢献すると考えて医大と協議しているものであることが認められる。そして、本件使用貸借契約に基づき阪急北側線の市道敷として医大の土地について無償使用していることをも考慮し、当該協議が調うまでの間、従前どおり医大が本件土地を占有することを認め、地代等を徴収しないこととしたことについて、市に損害が発生しているとまでいうことはできない。
 以上のことから、市は、本件土地について違法又は不当に財産の管理を怠っているとはいえない。

(3) 結論
 よって、請求人の主張に理由はなく、請求人が求める措置の必要は認められない。