高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【京大農場】ゲリラ豪雨対策の雨水貯留施設・・・過大な被害額想定と浸水シミュレーション

3月議会の一般質問ではこの件を含む4つの件について質問しました。高槻市は、集中豪雨への対策として、京大農場に整備予定の防災公園の地下に「雨水貯留施設」を建設するとしているのですが、その前提となる被害額の想定が過大だったので問いただした次第です。

この施設の設置は、高槻市が行った浸水シミュレーションや被害想定等が根拠となっています。その資料は昨年12月議会の都市環境委員会協議会で示されました。下のほうに全部を載せていますが、注目していただきたいのは以下の抜粋部分。

shinsui00.jpg

(仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設について

1 基本的な考え方
 (仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設は、計画降雨を超える集中豪雨への対策として、実施するものであり、高槻東排水分区の浸水被害軽減対策のひとつとして取り組むものである。

(1)浸水シミュレーション
 高槻東排水分区における浸水シミュレーションを実施するに当たり、前提として以下の設定を行った。
 ① 対策前の降雨については、既往最大降雨である、昨年8月14日の時間当たり110mmを採用し、雨の降り方(降雨量と時間との関係)も当時のものを再現した。
(中略)

2 雨水貯留施設の規模と効果
 ハード整備の対策目標を満たす(仮称)安満遺跡公園内の雨水貯留施設の貯留量は、浸水シミュレーションを実施し、費用対効果も含め検討した結果、貯留量別費用対効果(表2-1)に示すとおりであり、最小規模20,000m3が妥当という結果となった。

表2-1 貯留量別費用対効果
貯留量
(m3)
B 便益
(億円)
C 建設費 ※
(億円)
費用対効果
(B/C)
20,000 54.35 23.30 2.33

(中略)



まず「東排水分区」というのは、下水道の離合の都合により区分けされた地域の一つで、京大農場を含む地区のこと。下の図の青色の線で囲った部分です(黄色が京大農場)。

shinsuihigaihigashihaisuiku.jpg

この「東排水分区」には、一昨年8月のゲリラ豪雨で浸水被害のあった地域のうち、約6分の1が含まれています。浸水シミュレーションは、この「東排水分区」だけを対象に、京大農場に「雨水貯留施設」を設置した場合と、しなかった場合について行われました。

なぜ京大農場に「雨水貯留施設」を設置した場合しか想定しなかったのかということも、それありきじゃないかということで問題ですが、最も注目していただきたいのは表2-1の「B 便益」です。この「便益」というのは、京大農場に「雨水貯留施設」を設置した場合に得られるメリット=被害軽減される金額のことです。

では、この「便益」の基となった「被害総額」はどれだけなのか?また、その「被害総額」の算定根拠は何なのか?

議会での答弁によると、「被害総額」は約270億円。この算定根拠は、30年確率の雨が降った場合は約104億円、50年確率では約165億円だから、とのこと(質問前に受けた説明では、「雨水貯留施設」の耐用年数が50年だから、50年確率は1回、30年確率は約1.67回起こるとして計算したのこと)。

一昨年8月14日の時間当たり110mmの雨は何年確率かというと、「・・・大阪府の計画雨量は、200年確率において91.9ミリとされており、それ以上につきましては、推定されておりません。」とのことなので、200年以上に1度の確率ということになります。

ここで疑問が。普通は、30年確率のシミュレーションに対しては30年確率の被害額で、50年確率のシミュレーションに対しては50年確率の被害額で、それぞれ被害額や便益額や費用対効果を考えるべきなのに、なぜ200年以上に1度起きるような豪雨のシミュレーションをして、被害額の根拠は30年確率と50年確率のものを用いているのか。議会で質問しても、資料や事前説明とは違う答弁がされるばかり。いったい200年確率の被害想定額というのは、どれだけなのか?あまりにも現実離れした金額なので使えなかったのではないか?

仮に270億がその被害額としても、これも過大ではないか。上記のとおり、「東排水分区」における浸水被害は、市全体の約6分の1。つまり、高槻市全域では270億×6=1620億円の被害が出たということになります。市の一般会計の1.5倍もの被害が本当に出たのでしょうか?

実際の被害額はどれだけであったのか・・・・日経BP社のサイトには、 

・・・住友林業によると、床上浸水住宅の補修費は1 戸当たり300万~500万円。通常のリフォームの平均単価よりは少し高額になるという。住宅の1 階にはエアコンの室外機をはじめ、給湯器、洗面、キッチンなど、水に弱そうな設備機器が多い。補修費用が高額化する最大の理由はこうした設備の交換費だ。 

・・・とあります。つまり住宅1階の設備機器などを含めて、補修費用が300万から500万円とのことです。 

昨年の9月議会で、私が、市民の皆さんの被害についてお聞きしたところ、床上浸水264戸、床下浸水640戸との答弁でした。床上浸水の補修費を500万円、床下をその半分の250万円とすると、床上は264戸×500万円で13億2000万円、床下は640戸×250万円で16億円。他の資料によると火災が1件あったとのことですので、これを5000万円と考えると合計29億7千万円。高槻市役所の被害は6500万円とのことですから、これを足すと30億3500万円。

「東排水分区」の被害額は、30億の6分の1で5億円くらいが実際のところではないかと考えられます。この倍としても10億円です。200年以上に1度のゲリラ豪雨でこれだけなのですから、50年に1度、30年に1度の被害はさらに低いでしょう。それらを合わせても、約270億円というのは過大です。

270億円という被害総額の算定は、国土交通省のマニュアルに従ったのだということですが、その国土交通省の発表によると、平成24年8月の豪雨の水害被害額は、全国で見ても約620億円となっています。内訳は死傷者7名、被災建物棟数27123棟、浸水面積640haです。単純計算ですが、高槻市の被災建物は、床上浸水264戸+床下浸水640戸=904戸なので、620億×904/27123=約21億・・・この数字から考えても、市の言う270億というのは、あまりにも過大であるといえます。

高槻市役所はこの被害想定額約270億円を根拠に、雨水貯留施設を設置すれば約54億円が軽減でき(つまり54億/270億=0.2=2割の被害が軽減できるということです)、その建設費用は約23億円なので、費用対効果(B/C)を54億/23億=2.33としています。

しかし、実際には、被害総額10億円、被害軽減額はその2割の2億円で、2億/23億=0.087が費用対効果といったところでしょうか?50年確率と30年確率の被害を考慮しても到底1以上にはなりません。

実は、この費用対効果が1以上だと、国から交付金という形でお金がもらえるのです。だから、過大な被害額の想定をしているのかもしれませんが、常識的な金額で費用対効果を出さなければ、税金の無駄遣いにつながってしまいます。

高槻市役所は、京大農場に雨水貯留施設を設置することだけを前提としたシミュレーションしか行いませんでした。これには2000万円かかったとのことですが、シミュレーションというのは、普通は、様々な場合を想定して、行うべきものではないでしょうか。高槻市役所は、本当によりよい水害対策を考えているのでしょうか?市民の安全・被害軽減を考えているのでしょうか?私には疑問です。下水管やポンプも含めて、どのようにすればよりよい効果が出るのか、費用対効果が高いのか、誰もが納得できるきちんとしたシミュレーションと被害額の算定をしていただきたいものです。


一般質問では他に、史跡指定地も、避難地として指定可能かとも質問しました。すると「可能」であるとの答弁。京大農場の史跡部分は約6.3ヘクタール、その北側の史跡部分は、まだ公有地化されていない部分も含めて約6.4ヘクタール。一方、(仮称)安満遺跡公園で、緊急時の避難スペースとして確保すべきとされているのが5.6ヘクタールとされています。

「史跡部分だけで充分に避難スペースが確保できるように思えますが、そのような理解でよろしいのでしょうか?」とさらに訊くと、「防災公園部分に配置することが望ましい」との答弁でした。ということは、京大農場の史跡部分だけで避難スペースの確保は十分可能だということです。やはり防災公園街区整備事業でURに防災公園を造らせるのは無駄といわざるをえません。

URの予算執行に不適切なものがあった場合についても質問しましたが、高槻市として是正させる具体的な手段はないというような答弁でした。ならばなおさら、不要な防災公園の整備はやめるべきです。

他の史跡も避難地にしていないものが約12.9ヘクタールあるとのことです。高槻市にはすでに人口の2倍分の避難地がありますが、「歴史のまち高槻」「史跡のまち高槻」なら、史跡を避難地に指定することで、さらに「避難地の多いまち高槻」ともなりうるのではないでしょうか。そのほうが無駄な防災公園を造るより素敵なPRになるのではないかと思います。


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以下は質問と答弁の内容です。原稿やメモ、記憶に基づいているので、不正確な部分もあることをご了承ください。

平成26年3月議会・一般質問

■4 京大農場や防災等について

<質問1>

1.先日の本会議での平成26年度の当初予算案の質疑で、(仮称)安満遺跡公園の整備促進について質問したところ、URに対する負担金として16億7400万円を計上しているとのことでした。これは防災公園街区整備事業に基づく負担であり、これら市からの負担金と国からの補助金とで、URが入札や工事などを行って、公園を整備するということになります。 
 古曽部防災公園についても同じ防災公園街区整備事業がとられたんですが、その際に、URの行った入札で、落札率が100%のものがあり、問題ではないかと指摘する声がありました。 
 京大農場の公園整備についても今後URに任せることになるのですが、URが適切に予算を執行しているかどうか、高槻市としてどのようにチェックするのでしょうか?また、不適切な執行があった場合、市としてどのように是正させることができるのでしょうか? 

2.先日の答弁では、事業経費1億7200万円の具体的な内容は、用地取得に関する業務や、国の事業採択に向けた調査・調整業務など、URが公園事業を執行するために必要とする経費とのことだったのですが、ということは、国の事業採択はまだだということでしょうか?国の事業採択にあたってはどのような調査・調整業務・その他の手続きが必要なのでしょうか?また、いつ事業採択される見込みなのでしょうか。 

3.京大農場に隣接する史跡地が準広域避難地や仮設広場となっています。史跡も準広域避難地や広域避難地にできるのでしょうか?また、避難地にするにはどのような要件が必要なのでしょうか? 

4.(仮称)安満遺跡公園の地下に、貯留量2万立米、概算ですが建設費23億3千万円で、雨水貯留施設を設置する方針が、昨年12月6日の都市環境委員会で報告されました。この雨水貯留施設は、防災公園街区整備事業に含まれるのでしょうか?それとも含まれないのでしょうか?

5.その都市環境委員会で示された資料には、京大農場に雨水貯留施設を設置した場合の便益の額、つまり、貯留施設によってどれだけその貯留施設が関係する東排水区の被害額が軽減されるのかという数値は示されているのですが、被害総額は示されていません。被害総額をどれだけとしてこの便益の額、約54億円というのは算定されたのでしょうか?また、その被害総額の算定方法はどのようなものなのでしょうか。 

6.先ほどの算定方法に基づけば、東排水分区を含めた高槻市全体の被害総額はどれだけになるのでしょうか? 

7.平成24年8月の豪雨による被害額はどれだけだったのでしょうか?高槻市役所とそれ以外のものについて、それぞれお答えください。 

8.平成24年8月14日のゲリラ豪雨の降雨量は、1時間当たり110mmでしたが、国の基準では、何年に1度のものといえるのでしょうか? 

9.浸水シミュレーションの費用は2000万円だったとのことですが、京大農場以外に雨水貯留施設を設置した場合についてはシミュレーションは行っていないのでしょうか?行っていないのであれば、なぜ行わなかったのでしょうか。 

10.資料には、雨水貯留施設の費用対効果(B/C)として、便益を建設費で割った数値が示されています。この数値が1以上でないと国から交付金がもらえないと聞いたのですが、事実でしょうか?
それぞれお答えください。 

<答弁1> 

1 URによる防災公園街区整備事業については、事業実施にあたり、URと充分に協議を行う中で、全体協定及び年度毎に費用負担契約を締結するとともに、それに基づく予算の執行状況等の確認を適切に行っていきます。 

2 事業採択についてですが、現在、防災公園街区整備事業に必要な手続きを経て事業を進めており、今後は、都市計画事業として実施するため、都市計画決定後に、事業承認の手続きを行います。 
 この事業承認にあたっては、URが事業承認図書を作成し、国への申請・大臣承認の手続きを行います。 
 スケジュールとしましては、平成26年11月に高槻市都市計画決定を行い、平成26年度末の事業承認を予定しています。 

3 準広域避難地等に関するお尋ねですが、史跡指定地も、避難地としての指定は可能となっております。 
 次に、要件は、地域防災計画にも記載しておりますとおり、概ね10ha以上のものを広域避難地としており、また、概ね2ha以上のものを準広域避難地としております。 

4 雨水貯留施設の整備につきましては、防災公園街区整備事業には含まれておりません。 

5 被害総額についてですが、下水道事業の費用効果分析マニュアルにより、被害額の算出を行っており、高槻東排水分区における被害額は、30年確率の雨が降った場合は約104億円、50年確率では約165億円と算出しております。 

6 現時点では、市内全域の被害総額は算出しておりません。 

7 平成24年8月の豪雨の被害額については、市が支出した分として、約6,500万円、それ以外については把握しておりません。 

8 1時間当たり降雨量110ミリに対する降雨確率年につきましては、大阪府の計画雨量は、200年確率において91.9ミリとされており、それ以上につきましては、推定されておりません。 

9 浸水シミュレーションは、浸水被害が大きかった地域を中心に行っております。今回、雨水貯留施設の整備を行う東排水分区では、浸水被害区域と下水道幹線管渠の位置を考慮のうえ、用地の確保の面で優れている(仮称)安満遺跡公園が、今般の計画となったものです。 

10 費用対効果の数値が、1未満では交付金の対象とならないとされております。 


<質問2>

1.雨水を排水する下水道に、地下に埋設した雨水貯留施設を接続して、ピーク時の流出量を抑制するということなんですが、鉄道に喩えて考えてみると、たとえJR大阪駅のホームが広くても、JR高槻の利用客が多ければ、特急に乗りきれずに、乗客は駅に取り残されてしまいます。これを解消するためには、特急の本数を増やすしかありません。同じように、雨水貯留施設を、浸水被害のあった場所から離れたところに設置しても、下水管が48ミリ対応のもののままでは、110ミリの豪雨が降った場合、雨水が溢れるのではないのでしょうか?資料には貯水槽の貯留量を2万立米から3万立米までの5段階の設定をしていて、それぞれの便益を計算しているけれども、便益の額は54億円台でほとんど変わりません。このことは、まさにその証左ではないかと思います。資料には2万立米以降しかありませんが、2万立米よりも少ない貯留量であれば、便益の額や建設費、費用対効果はどうなるのでしょうか?5000立米、1万立米、1万5000立米、それぞれの場合についてお答えください。 

2.下水管を太くした場合のシミュレーションはしなかったのでしょうか?しなかったのであれば、その理由もお答えください。

3.日経BP社のサイトには、 

・・・住友林業によると、床上浸水住宅の補修費は1 戸当たり300万~500万円。通常のリフォームの平均単価よりは少し高額になるという。住宅の1 階にはエアコンの室外機をはじめ、給湯器、洗面、キッチンなど、水に弱そうな設備機器が多い。補修費用が高額化する最大の理由はこうした設備の交換費だ。 

・・・とあります。つまり住宅1階の設備機器などを含めて、補修費用が300万から500万円とのことです。 

 昨年の9月議会で、私が、市民の皆さんの被害についてお聞きしたところ、床上浸水264戸、床下浸水640戸との答弁でした。床上浸水の補修費を500万円、床下をその半分の250万円とすると、床上は264戸×500万円で13億2000万円、床下は640戸×250万円で16億円。他の資料によると火災が1件あったとのことですので、これを5000万円と考えると合計29億7千万円。ご答弁では高槻市は6500万円とのことですから、これを足すと30億3500万円。 

 東排水分区内の浸水被害の面積は、以前いただいた資料からすると、高槻市全体の浸水被害の面積の6分の1くらいに見えますので、30億の6分の1で5億円くらいが実際の被害額ではないのでしょうか?この倍としても10億円です。200年以上に1度のゲリラ豪雨でこれだけなのですから、50年に1度、30年に1度の被害を合わせて約270億円というのは過大ではないのでしょうか?市の見解をお聞かせ下さい。 

4.東排水分区内の被害総額を270億円としたとき、2万立米の貯水槽の雨水貯留施設を設置すれば約54億円の便益がある、すなわち54億円分の被害が軽減できるということですが、仮に被害総額を10億円としたとき、それ以外は同じ前提条件として、どれだけの便益が出ることになるのでしょうか? 

5.便益の額の約54億円を、貯水施設の建設費約23億円で割って、費用対効果2.33と算出していますが、被害総額が10億円のとき、この費用対効果はどれだけになるのでしょうか?

6.被害額約270億円の根拠は、30年確率の雨が降った場合は約104億円、50年確率では約165億円で、これを足すと約270億円だからとのことです。浸水シミュレーションは110ミリの雨、つまり200年以上に1度起きるような豪雨が降ったと想定してされていますが、200年に1度の確率の雨が降った場合の被害額はどれだけなのでしょうか?

7.貯留施設の費用対効果の算出にあたっては、200年以上に1度起きるような豪雨のシミュレーションをして、被害額の根拠は30年確率と50年確率のものを用いているとのことです。普通は、30年確率のシミュレーションに対しては30年確率の被害額で、50年確率のシミュレーションに対しては50年確率の被害額で、それぞれ被害額や便益額や費用対効果を考えるべきだと思うのですが、何故、200年以上に1度の豪雨のシミュレーションを行って便益額を出しながら、被害額の根拠は30年確率と50年確率のものを用いているのでしょうか?

8.この浸水被害のシミュレーションの結果や費用対効果なども防災公園街区整備事業に関係するものとして、国やURに提出されるのでしょうか? 

9.史跡指定地も、避難地としての指定は可能とのご答弁です。京大農場の史跡部分は約6.3ヘクタール、その北側の史跡部分は、まだ公有地化されていない部分も含めて約6.4ヘクタール。一方、(仮称)安満遺跡公園で、緊急時の避難スペースとして確保すべきとされているのが5.6ヘクタールとされています。史跡部分だけで充分に避難スペースが確保できるように思えますが、そのような理解でよろしいのでしょうか?市の見解をお聞かせ下さい。 

10.市の有する史跡地のうち、避難地として指定は可能だけれども、指定されていない史跡はどれだけの面積があるのでしょうか? 

11.URの予算の執行に不適切なものがあった場合、市としてどのように是正させることができるのかという質問についてはお答えがないようでした。改めてお訊きしますので、URの予算の執行に不適切なものがあった場合、具体的に市としてどのように是正させることができるのか、明確にお答えください。


<答弁2>

1.東排水分区における雨水貯留施設の費用対効果を検討するうえで、対策目標を設定し、浸水シミュレーションを行っており、この目標値を達成できる最小規模が2万立米であります。それ以下の規模については、目標を達成できないため算出はしておりません。

2.下水道施設は、大阪府の流域下水道幹線や、最下流の雨水ポンプ場も含め、時間当たり48ミリに対応する能力で整備を行っておりますので、下水管を太くするシミュレーションは行っておりません。

3.被害額が過大ではないかとのご質問ですが、算出方法については、下水道事業の費用効果分析マニュアルに基づいており、雨水貯留施設を設置しない場合の30年確率の降雨と、50年確率の降雨における各々の被害額を算出しております。

4・5.4点目と5点目についてですが、あくまでも仮定の話ですので、算出しておりません。

6・7.6点目、7点目につきましても、3点目でお答えしたとおり、下水道事業の費用効果分析マニュアルに基づき、30年確率、50年確率それぞれのシミュレーションを行い、それぞれの被害額を基に便益を算出しております。

8.防災公園街区整備事業には関係しませんが、下水道浸水被害軽減総合事業として、国及び大阪府へ提出しております。

9.避難スペースについては、本市として、防災機能が確保される防災公園部分に配置することが望ましいと考えております。

10.避難地に関するご質問にお答えいたします。現在、史跡指定地である今城塚古墳および安満遺跡の一部を広域避難地等に指定しておりますが、その他、史跡に指定している面積は、約12.9haでございます。

11.URの予算執行については、これまでも適切に執行されており、今後も適切に執行されるものと考えておりますが、本市としても、URと十分に協議しながら、適正な執行を確認してまいります。

<意見>

 私の質問に対して、仮定の話だから答えないといったご答弁がありましたが、シミュレーションや、30年や50年の被害額の想定は、まさに仮の話じゃないですか。
 その仮定の話である被害想定が、仮の話としてもおかしいからいろいろとお訊きしているわけです。
 都市環境委員会協議会で昨年12月に出された資料には、110mmの豪雨、つまり200年以上に1度の豪雨を想定したシミュレーションを行ったとしか書かれていません。一方で、被害額の算定は30年確率と50年確率のものとの説明でした。答弁では30年確率と50年確率のシミュレーションも行ったというのですが、そんなことは資料には書いていません。やったのなら何故書かないのでしょうか。やはりこの齟齬の部分はおかしいといわざるをえません。
 被害額については270億ということですが、これが6分の1の地域のものだとすると、高槻市全域では270億の6倍の1620億円の損害がでたということになります。高槻市の一般会計の1.5倍もの被害が出たとは考えられません。
 国土交通省の発表によると、24年の8月豪雨の水害被害額は、全国で見ても約620億円となっています。内訳は死傷者7名、被災建物棟数27123棟、浸水面積640haです。この数字から考えても高槻市の被害は30億円くらいです。これから見ても、市の言う270億というのは、あまりにも過大であるといえます。
 私は東排水分区の被害額を5億円と試算しましたが、その倍の10億円という額で費用対効果を考えると、まず便益については、市の資料によると、雨水貯留施設の設置により270億の被害のうち54億が軽減できたということですから、54億÷270億=0.2、つまり2割の被害が軽減できるということです。したがって、10億の被害の場合は2億の便益となります。建設費用は23億なので、費用対効果B/Cは2億÷23億=0.087。国が交付金をくれるという基準の1を大きく下回ります。
 費用対効果が1以上でなければ国から交付金が出ないので、想定の被害額が過大となっているのかもしれませんが、常識的な金額で費用対効果を出さなければ、税金の無駄遣いにつながってしまいます。
 シミュレーションというのは、普通は、様々な場合を想定して、行うものだと思いますが、市は、京大農場に雨水貯留施設を設置することだけを前提としたシミュレーションしか行わなかった。本当によりよい水害対策を考えているのでしょうか?市民の安全・被害軽減を考えているのでしょうか?大いに疑問です。下水管やポンプも含めて、どのようにすればよりよい効果が出るのか、費用対効果が高いのか、誰もが納得できるきちんとしたシミュレーションと被害額の算定をしていただきたい。強く要望します。
 それから、(仮称)安満遺跡公園の避難スペースについては、「防災公園部分に配置することが望ましい」とのご答弁です。ということは、遺跡部分でも可能だということですよね。面積的には遺跡部分だけで十分なので、やはり防災公園部分を防災公園街区整備事業で防災公園にするのはムダといわざるをえません。
 他の史跡も避難地にしていないものが約12.9haあるとのことです。高槻市にはすでに人口の2倍分の避難地がありますが、歴史のまち高槻、史跡のまち高槻なら、史跡を避難地に指定することで、さらに「避難地の多いまち高槻」ともなりうるのではないでしょうか。そのほうが無駄な防災公園を造るより素敵なPRになるのではないかと思います。
 URの予算執行については、結局、不適切なものがあっても、市として是正させる手段がないようです。ならばなおさら、不要な防災公園の整備はやめるべきです。



(仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設について1
(仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設について2
(仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設について3
浸水シミュレーション比較図.jpg

案件7(仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設について
平成25年12月6日
都市創造部

(仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設について

1 基本的な考え方
 (仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設は、計画降雨を超える集中豪雨への対策として、実施するものであり、高槻東排水分区の浸水被害軽減対策のひとつとして取り組むものである。

(1)浸水シミュレーション
 高槻東排水分区における浸水シミュレーションを実施するに当たり、前提として以下の設定を行った。
 ① 対策前の降雨については、既往最大降雨である、昨年8月14日の時間当たり110mmを採用し、雨の降り方(降雨量と時間との関係)も当時のものを再現した。
 ② 流出係数については、コンピューター解析を行う上で、当時の再現を行うため精査した。
 ③その他解析に必要な水路情報などの諸元を踏まえ、解析モデルを作成した。

(2)対策目標の設定
 「総合雨水対策基本方針」では、これまでの下水道を中心とした施設整備に加え、計画降雨を超える降雨時のピーク流出量を抑える対策として、雨水貯留浸透施設の設置や、ソフト対策など、自助・共助の取組の強化も含めた対策を行っていくとしている。

図1-1 総合雨水対策の考え方

 このような方針のもとで、雨水貯留施設等のハード整備を実施していくためには、費用対効果を検討する上でも対策目標を設定する必要があり、以下のとおり、ハード整備の対策目標を設定する。

ハード整備の対策目標
 ○既往最大降雨(時間当たり降雨量110mm)に対し、一般市街地の家屋の床上浸水防止を目的とし、浸水深45c m以下にする。
 *床の高さは、直下の地面から45cm以上とすること。(建築基準法施行令第22条)
 ○緊急交通路について、乗物の移動限界とされる20cnQを目標として、浸水深20cm以下にする。
 *水深が20c m以下であれば乗物の移動は可能。(「下水道総合浸水対策策定マニュアル(案)」平成18年3月国土交通省都市・地域整備局下水道部)


2 雨水貯留施設の規模と効果

 ハード整備の対策目標を満たす(仮称)安満遺跡公園内の雨水貯留施設の貯留量は、浸水シミュレーションを実施し、費用対効果も含め検討した結果、貯留量別費用対効果(表2-1)に示すとおりであり、最小規模20,000m3が妥当という結果となった。

表2-1 貯留量別費用対効果
貯留量(m3) B便益(億円) C建設費※(億円) 費用対効果(B/C)
20,000 54.35 23.30 2.33
22,500 54.76 25.50 2.15
25,000 54.95 28.90 1.90
27,500 54.95 31.10 1.77
30,000 54.95 33.40 1.65

※建設費については概算(オープンカット・プレキャストエ法)であり、今後、基本設計及び実施設計により確定するものである。
 既往最大降雨(時間当たり降雨量110mm)での雨水貯留施設(貯留量20,000m3)の効果について、浸水シミュレーション結果(資料1および資料2)と浸水軽減面積(表2-2)を示す。

表2-2 浸水軽減面積

浸水面積(ha) 浸水面積(ha)(対策前⇒対策後) 軽減率(%)
20cm未満 75.67⇒65.40 14%
20cm以上45cm未満 8.21⇒4.13 50%
45cm以上 0.34⇒0.05 85%


3 今後の対策
 (仮称)安満遺跡公園内における雨水貯留施設については、費用対効果を含め検討し、最小規模の20,000m3としているが、今後策定する総合雨水対策アクションプランの中で、公園及びグラウンド等の公共施設を活用した対策を検討し、更なる浸水被害軽減を図る必要がある。

4 スケジユール(案)
 今年度において、雨水貯留施設の基本的な配置、構造及び工法等を検討する基本設計を行い、来年度に埋蔵文化財調査及び実施設計、平成27.28年度で工事を予定しているが、(仮称)安満遺跡公園の整備スケジュールと調整し取り組む考えである。

資料1-1 高槻東排水分区
既往最大降雨(時間当たり110mm)の浸水シミュレーション結果 対策前・対策後