高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

情報公開条例に権利濫用禁止条項?要らないのでは?

12月議会では、高槻市情報公開条例の一部改正も議案となっています。

改正したいとしているのは第4条。現在は・・・

(利用者の責務)
第4条 公文書の公開の請求(以下「公開請求」という。)をしようとするものは、この条例により保障された権利を正当に行使するとともに、それによって得た情報を適正に用いなければならない。



・・・となっています。これを・・・

第4条
 第1項 この条例により保障された権利は、これを濫用してはならない。
 第2項 公文書の公開の請求(以下「公開請求」という。)をしようとするものは、前項の権利を正当に行使するとともに、それによって得た情報を適正に用いなければならない。



・・・としたいということです。情報公開を請求する権利があるからといって、濫用=めちゃくちゃをやってはいけませんよ、というような一文を入れようとしているわけです。

この条例改正案については、「高槻市情報公開審査会」で審査されたのですが、平成24年5月24日の審査会で、ある委員さんがこのように発言しました。

 まず前提として、権利濫用というのは、法の一般原則であるから、明文化しなければ権利濫用法理が使えないというものではない。これは従来の裁判例にもある。結局、権利濫用というのは、今の説明にもあったように、権利濫用的な請求に対する威嚇効果、というと言い方が悪いが、そういった請求がされないようにということで、確認的に明記するということだと思う。明記するということは、必要があればそれを使おうという姿勢を示すことになる。
 ただ、権利濫用法理と言うのは、非常に範囲が漠然としていて、裁判例でもかなり分かれているところがある。その範囲を明確化しないと、ただ権利濫用を規定するだけだと、情報公開としてかなり消極的な姿勢だと見られかねない。



・・・ということで、権利濫用規定は、法的に明文化の必要はなく、威嚇効果を狙ったものであって、高槻市が情報公開にかなり消極的な姿勢だと見られる可能性がある。それでも条例に書きたいのなら、濫用の範囲をちゃんと明らかにしないといけないという意見です。

情報公開の濫用の範囲について、判例では、「職員1名を専従作業員とし、1日8時間全く休憩なしで、同じ作業効率で作業を進めたとしても、9か月以上かかる」ことになっても、「開示請求権の濫用として、開示請求を拒む」ことはできないというものがあります。

ただし、開示請求者が、専ら、通常業務に著しい支障を生じさせることを目的として開示請求をするときや、より迅速・合理的な開示請求の方法があるにもかかわらず、そのような請求方法によることを拒否し、あえて迂遠な請求を行うことにより、当該行政機関に著しい負担を生じさせるような場合は、権利の濫用とされています。総務省のサイトに他にも濫用の事例があります。

高槻市役所は、先日の総務消防委員会で、私の質問に対して・・・

 条例に、「公開請求など、条例により保障された権利を濫用してはならない旨」を明文化することで、請求者・実施機関の双方にとって、「権利の濫用に当たる公開請求は却下となる場合があること」が明確になるとともに、改正を契機として判断基準を作成することにより、実施機関において情報公開請求制度がより一層適正に運営されるようになることから、改正するものでございます。



というので、「一層適正に運営されるということですが、これまでと変わらないのではないのでしょうか?変わるとすれば、具体的にどう変わるのかお答えください。」と質問したのですが、具体的にどう変わるのかについて答弁では説明されませんでした。

高槻市には、「高槻市情報公開制度の手引」というのがあるので、条例を改正しなくても、これに権利の濫用の範囲を明記すれば済む話ではないかと思います。

高槻市のこれまでの情報公開制度の運用についても、先日の総務消防委員会で尋ねたのですが、以下のような答弁でした。

<北岡>
(1)高槻市でこれまで権利の濫用の事例はあったのでしょうか?お答えください。
(2)○○議員が12月4日の本会議の質疑で取り上げた教員の出張に関する情報公開請求の件についてです。途中で請求者が補正をし、1校のものだけを請求したということですが、もし、そのまま全校の出張に関する文書を請求した場合、それは権利の濫用となったのでしょうか?
(3)教員の出張の件ですが、学校毎にすると、平均して何枚のコピーをしたのでしょうか?お答えください。
(4)本会議の質疑では、その文書のコピーにかかった費用や人件費の額を算出して答弁していましたが、平成23年度において、教育委員会や公営企業を含め高槻市全体で、情報公開請求のためにかかったコピーの費用や人件費の総額はどれだけなのでしょうか?お答えください。

<答弁>
(1)本会議で答弁しましたとおり、権利の濫用と判断した事例はございません。
(2)仮定のお話でございますので、お答えいたしかねます。
(3)、(4)につきましては、把握しておりません。 

<北岡>
 仮定の話には答弁しないということですが、○○議員が12月4日の本会議で取り上げた教員の出張に関する情報公開請求の件は、実際に起こった話です。これについて、権利の濫用なのかどうなのか判断できないというのはおかしい。これだけ経験豊富な市職員の皆さんがいて、市長は弁護士さんなのに、権利の濫用なのかどうか判断できないんでしょうか?
 教員の出張の書類のコピーの件、学校毎の平均も答えられないということは、結局、学校毎の数字は大したことがなかったんじゃないですか?コピーにかかった人件費も算出していましたが、勤務時間中の業務と業務の間の時間などで処理ができたんじゃないんでしょうか?職員の皆さんは、勤務時間中、ひたすらシャカリキになって仕事をしているわけではないでしょう。隙間のような時間もあると思います。そういう時間にコピーをしていたのであれば、人件費を算出すること自体ナンセンスではないのでしょうか?また、教員の出張費の費用は算出しながら、情報公開請求のためにかかったコピーの費用や人件費の総額を出さないということは、総額から比較すれば、微々たるものだということではないのでしょうか?本会議で具体的な数字を答えたのは、何らかの意図を感じますね。それこそ威嚇効果を狙ったように思います。



これまで実際に大量の公文書を情報公開せねばならないような請求を受けた場合、どうしてきたのか。そうした請求者との調整についても質問しました。

<北岡>
(1)情報公開請求により、公開すべき公文書が大量になる、あるいは事務作業が大変になるというとき、私が請求する場合には、担当課から相談があれば、極力それに応じるようにしてきました。教員の出張についても、1校だけでいいと補正を行ったり、アンケート用紙については、ホッチキスがあるのでコピーが大変だというので閲覧に変更したりと、協力をしてきましたけれども、そのような協力の要請を、他の請求者の方にもしているのでしょうか?また、そのように協力を要請した場合、請求者の方はどれくらい応じてくれるのでしょうか?お答えください。
(2)情報公開請求ではなく、情報提供をしてくれるという場合もよくあるのですが、情報提供にすれば、公開請求に係る事務手続きもなくなって職員の皆さんも仕事が楽になるし、市民の皆さんも早く情報が得られて、一石二鳥だと思いますので、各課は積極的に情報提供に努めるべきだと思いますが、情報公開請求を受けるのか、それとも情報提供をするのか、その判断基準はどういったものなんでしょうか?お答えください。

<答弁>
(1) これまで基本的には、協力要請に応じていただいております。
(2) 原則として、全部公開できる公文書につきましては、情報提供しております。

<北岡>
(3)全部公開として公開決定した件数は、平成23年度で何件あったのでしょうか?また、情報公開請求を受けた件数は、平成23年度で何件あったのでしょうか?

<答弁>
(3)全部公開として公開決定した文書の件数は、平成23年度に273件ございました。また、公開請求を受けた文書の件数は、平成23年度で1045件ございました。

<北岡>
 1045件中、全部公開273件。全部公開は約3割。全部公開のものを全て情報提供にすれば、公開に係る事務の3割丸々というわけではないでしょうけれども、かなりの事務手続きを減らすことができるのではないのでしょうか?
 答弁では「原則として、全部公開できる公文書については、情報提供」しているということでしたが、そうじゃなかったケースもあります。最近では、全ての救急車のナンバープレートが何故119なのか、消防本部に尋ねたところ、救急車の入札の仕様書にナンバープレートを119にするよう指示する記載をしているとのことでした。その仕様書を、私はくださいと言ったんですが、消防本部の責任者の方は、手元にお持ちなのに、渡せません、見せられません、欲しかったら情報公開請求して下さいと言いました。議員に対して、そんな対応をしたのは何故なんでしょうか?

<答弁>(あまりよく分からない答弁)

<北岡>
 高槻市がもっとちゃんと情報を開示すれば、情報公開請求の数も減ると思いますよ。私は、11月19日に市民課の課長に対して、「市民の方に、別人の証明書の類を発行したと聞いていますが、どうなんでしょうか?コンプライアンス室から行政監察を受けていると聞いたので、詳細を教えて下さい。」と尋ねましたけれども、なかなか教えてくれなかった。何度も電話やメールをして、やっと11月30日に「今年7月、市民の方からのご連絡で、請求内容と異なる戸籍届書記載事項証明1通を交付していたことが分かり、即日ご自宅に訪問して謝罪し、正しいものと差し替えさせていただきました。再発防止のため、事務改善の検討を進めている中で、コンプライアンス室とも連繋して改善を進めています。なお、本件に関し、市民課長が口頭による厳重注意処分をうけています。」というメールが返ってきました。この件は○○委員が12月4日の本会議で取り上げていましたが、市の対応は遅すぎる、というか、職員が処分されもしたのに自ら公表しなかったことからすれば、隠ぺいしていたといわざるをえないと思います。
 こんなふうに、議員の私が尋ねても、なかなか教えてくれないから、やむなく情報公開請求をしましたけれども、ちゃんと詳細を公表すれば、そういうことに関する情報公開請求も少なくなるんじゃないですか?



以上より、私の結論ですが・・・
・条例に権利の濫用の禁止を謳っても、請求者に対する威嚇効果はあるが、情報公開としてかなり消極的な姿勢だと見られかねない。情報公開の窓口を1階の入り口横から4階の奥に移動させたのと相まって、むしろマイナス。
・請求者も、文書等が大量になる場合は、高槻市に協力してくれている。
・条例を改正しても、実質的に運営・運用はこれまでと変わらないと考えられる。
・権利濫用の判断基準を少し詳しく手引きに書けば充分。
・・・ということで、、私はこの議案には反対すると表明しました。総務消防委員会では、私以外賛成でしたので、本会議では可決されそうですが。

※私の質問や市の答弁としているものは、原稿やメモに基づくものなので、正確ではない可能性もあります。ご了承ください。