高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【入札制度】失格基準価格を引き上げても「トリクルダウン」は起きないのでは?

落札率99.8%・・・3社が応札し、うち2社が失格。残りの1社が99.8%、つまりほぼ100%で落札したのですが、2社の失格の理由は、入札額が安過ぎたから・・・そんな契約案件が6月議会で上程されました。

安過ぎて失格というのはどういうことかいうと、工事の入札については「失格基準価格」というものが設定されており、これを下回ると基本的には失格になるのです。

ところで、高槻市では、今年4月から、この「失格基準価格」を引き上げました。理由は、議会答弁によると「今般の厳しい経済情勢を背景として、特に業者側の安全管理や労働条件の水準の低下を招かないよう配慮したもののほか、品質確保、安全対策、下請けへのしわ寄せの防止を図ることなどの総合的な観点に立って実施したものです。」ということです。

これは高槻市が独自に引き上げ水準を決めたのではなく、国の「中央公共工事契約制度運用連絡協議会」の標準モデルが参考になっています。国が主導しているようです。

こうやって、落札額を引き上げ、労働者や下請けの報酬を引き上げようとしているようですが、思うような効果が上がるとは思えません。

企業が儲かれば、そのおこぼれが、蜜が滴り落ちるように、労働者や下請けに降ってくることを「トリクルダウン理論」というのですが、その理論は、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・E・スティグリッツによって破綻していることが指摘されています。

つまり、落札額を引き上げたところで、たいてい、元請けの企業が儲かるだけに終わるということです。

国は、労働者等のことを考えるのであれば、最低賃金の引き上げや下請法の厳罰化等を行うべきではないのでしょうか。

6月議会で、失格基準価格の引き上げ前後の平均落札率を尋ねたところ、建築の議決対象案件については、前年度2件で72.9%、本年度は4件で84.1%とのこと。母数が増えると平均が変わってくるかもしれませんが、この数字だけを見ると10%以上の差になっています。

また、仮に、失格基準価格を引き上げていなければ、今回の入札で失格した事業者はどれだけなのかと尋ねたところ、「今回全体4件の入札で7者失格となっていますが、仮に変更前の基準であれば3者失格」とのことでした。4社は失格にならなかったわけです。

もし、失格基準価格を据え置きにしていたのであれば、かなりのお金が、入札の差金として、高槻市役所の手元に残ったはずです。

労働条件の改善や下請けへのしわ寄せ防止などについて、実はあまり考慮もせず、漫然と国のモデルに従い、失格基準価格の引き上げを行って、結果、労働条件や下請けへのシワ寄せ等は改善されず、単に落札額が増えただけということであれば、その増加分は、高槻市の損害ということになるのではないのでしょうか・・・

以下は6月議会での質問と答弁の原稿です。なお3回目の答弁原稿はもらっていないので記載していません。本番の発言とは異なる部分もあると思いますがご容赦ください。

■議案第60号JR高槻駅南人口デッキ上屋設置工事請負契約締結について

<1回目の質問>
 まず入札の状況についてお聞きします。
 この契約については、制限付一般競争入札が行われたんですが、3者が応札し、そのうち2者が失格しました。残った1者が落札したわけですが、その落札率は99.8%、ほぼ100%ということでした。2者が何故失格したのかというと、失格基準価格を下回ったからだということです。この件を含め、入札の状況について2点伺います。
(1)高槻市では、入札契約制度を、今年4月から変更していますが、変更以前の基準であれば、今回の入札で失格した事業者は、失格していなかったのでしょうか?それとも変更以前の基準であっても、失格していたのでしょうか。お答えください。
(2)入札契約制度の変更前後で落札率はどうなったのでしょうか。今年の4月から始めたばかりなのでデータは少ないと思いますが、変更前後の平均落札率をお教え下さい。
 次に、太陽光発電のパネルについてお聞きします。
 横浜市での事件なんですが、民家の屋根に取り付けられた太陽光パネルの反射光が家の中に差し込んで、日常生活に支障が出たということで裁判になりまして、結果、裁判所がパネルの撤去と22万円の支払いを命じたということがありました。JR高槻駅の南口は、グリーンプラザ等の高いビルで取り囲まれていますけれども、太陽光パネルの反射光による被害が生じる恐れはないのでしょうか?以上です。

(回答)
 低入札価格調査制度の失格基準価格については、直接工事費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費の各項目に一定の率を乗じて算定しているもので、本年4月にこの算定率を引き上げました。
 今回全体4件の入札で7者失格となっていますが、仮に変更前の基準であれば3者失格となります。
 また、建築の議決対象案件の平均落札率については、前年度2件で72.9%、本年度は4件で84.1パーセントとなっています。 
(回答)
 今回の太陽光パネルは、発電効率を高めるため光吸収率が高い素材で表面をコーティングしており、反射に対しても防眩効果がありますので、反射光害の可能性はないと考えております。

(2回目の質問)
(1)今回の4件の入札では7者が失格だけれども、変更前の基準であれば3者が失格であった。すなわち4者が失格にはならなかったということですが、仮にその4者が失格でなかったとすると、金額としては、どれだけの差があるのでしょうか。
(2)そもそも、入札契約制度を今年度から変更したのは何故なのでしょうか。制度改正の趣旨をお教え下さい。
(3)失格基準価格を、直接工事費で6%、共通仮設費で3%、現場管理費で9%、一般管理費で3%引き上げていますが、その数字の根拠をお教え下さい。
(4)落札率が上昇したのであれば、改正は失敗だった、改悪だったとも考えられますが、市の見解をお聞かせ下さい。

(回答2)
 今回の低入札価格調査制度の失格基準価格の算定率の引き上げについては、今般の厳しい経済情勢を背景として、特に業者側の安全管理や労働条件の水準の低下を招かないよう配慮したもののほか、品質確保、安全対策、下請けへのしわ寄せの防止を図ることなどの総合的な観点に立って実施したものです。
 落札率の設定基準については、国の各省庁から構成される中央公共工事契約制度運用連絡協議会が標準モデルを定めており、地方自治体の基準価格決定の参考となっています。低入札基準についても、ここ数年連続して引き上げられており各自治体においても引き上げる傾向にあります。今回これらのことも踏まえて、基準価格の算定率を引き上げたもので、特に、現場管理費の引上げ幅を他より9%と大きくした理由は、安全管理や労働条件の水準を確保するためのものです。
 変更前の基準であればとのお尋ねですが、当然落札率も低くなりますが、入札参加者においては、変更後の算定率を踏まえて積算の上、入札に参加されますので、その結果として本年度は落札率が上昇するものと想定していたところです。

(3回目の質問)
(1)先ほどの2回目の質問の1問目にはお答えいただけないのは何故なんでしょうか?金額にどれだけの差があるのか、しっかりと数字を答えていただきたいと思います。あらためてお尋ねしますが、今回は失格になったけれども、昨年度の基準であれば失格にはならなかった事業者が、もし失格でなかったとしたら、その場合の落札金額と、今回の落札金額との間に、どれだけの差があるのでしょうか。「何円です」と、具体的に金額でお答えください。
(2)入札参加者は、「変更後の算定率を踏まえて積算の上、入札に参加」しているとのことですが、これほど失格者が出るのは何故なんでしょうか?理由をお答えください。
(3)失格基準価格の算定率の引き上げについては、「業者側の安全管理や労働条件の水準の低下を招かないよう配慮したほか、品質確保、安全対策、下請けへのしわ寄せの防止」を図ったということですが、本当に労働条件の改善や下請けへのしわ寄せの防止につながるのでしょうか?下請けへのしわ寄せはそのままで、元請けだけが儲かることになるのではないのでしょうか?現状はどのようなもので、算定率の引き上げでどの程度改善がされるのかなどについて、調査などはされたのでしょうか?高槻市発注の工事における労働条件や下請けの状況は劣悪なんでしょうか?また、労働条件等について、どの程度の基準であれば、市は適正と考えるのでしょうか?お答えください。
(4)業者側の安全管理や、労働条件の水準の確保、品質の確保、下請けへのしわ寄せ防止などについて、市が業者に対して、チェックをし、場合によっては改善を指導するというようなことは行っているのでしょうか?お答えください。
(5)今回の入札契約制度の変更については、業者や業界団体などからの圧力や要望があったのでしょうか?お答えください。
(6)建築の議決対象案件の平均落札率は、前年度で72.9%、本年度は84.1%ということで、これだけを見ると10%以上の差になっています。金額にすると数千万円の差になるのではないかと思います。労働条件の改善や下請けへのしわ寄せ防止などについて、何の調査も、指導もせずに、漫然と、失格基準価格の引き上げを行って、結果、労働条件や下請けへのシワ寄せ等は改善されず、単に請負契約の金額が増えただけということであれば、その増加分・差額分というのは市の損害になるのではないのでしょうか。市の見解をお聞かせ下さい。