6月議会のため出廷できなかったのですが、7月11日に大阪高等裁判所で市民会館建替え訴訟の控訴審の判決言渡しがありました。地裁での敗訴に続き、高裁でも敗訴でした。不当判決だと思いますが、再び行政の裁量の範囲とされる可能性が高いと考え、上告は断念します。ですので、これでこの件は終了です。
以下は控訴審判決の判断の主な部分です。
第3 当裁判所の判断
争点(1)(城跡公園内に新文化施設を設置することの違法性の有無)について
当裁判所も,本件条例2条の2の定めが都市公園法等に違反するものでなく,また,新文化施設は本件条例2条の2に定める「劇場」に当たるため,城跡公園内に新文化施設を設置することは都市公園法等に違反するものではないと判断する。
(中略)
(当審における控訴人の主張に対する判断)
(1) 控訴人は,国会審議を踏まえると,国は,都市公園法2条2項6号及び都市公園法施行令5条5項1号の「教養施設」について,壁がないものと
扱っていると主張する。
この点,証拠(甲14)によれば,平成8年5月24日の衆議院建設委員会において,都市公園等整備緊急措置法の一部を改正する法律案が審議された際,中島武敏委員(以下「中島委員」という。)が,「….そうすると公園の中にいろいろな建物ができてくるのですよ。それは壁はないかもしれないけれども,そういうものができてくる,あるいは緑と自然じゃないものができてくる。オープンスペースかもしれないけれどもそれは緑と公園じゃない,こういうものになっちゃうのだ。」などと発言したことが認められる。
しかし,中島委員の上記発言は,あくまでオープンスペースを例にとった発言であり,これに対して,近藤茂夫政府委員は,建ぺい率に関する制度改正の概要について述べた上,改正の背景について「(都市公園の)基本はオープンスペースだろうと思います。ただ,とりわけ地方の公共団体からはやはり教養施設,図書館,こういったものも整備していきたいという要望が非常に強くあるわけでございます。」と発言している。上記発言によると,都市公園内の建物について,全てをオープンスペースとするなど,壁がないもののみを念頭に置いているわけでないことは明らかである。
上記では、近藤茂夫政府委員の発言を、意図的に途中で切っている。議事録では「・・・とりわけ地方の公共団体の考え方によってはもっともっと箱物ができるようにという声もあるわけでございますが、私どもは基本的には、やはり都市公園の本質はオープンスペースということでございます・・・」とされている。つまり、政府は、地方公共団体の要望をはねのけ、都市公園の本質たるオープンスペース性を保持しようとしているのである。控訴審は、中島委員の発言はあくまでオープンスペースを「例にとった発言」としているが、都市公園の本質はオープンスペースなのであるから、「例にとった発言」とするのはおかしい。そうではなく、都市公園の本質についての発言と言うべきであり、やはり、都市公園における「教養施設」は、壁のないものとされるべきである。
また,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の2(1)イにおいて説示のとおり,都市公園法4条において建ぺい率の制限があることは,屋根及び壁を有する公園施設の設置が禁止されていないことを意味するし,都市公園法2条2項や都市公園法施行令5条5項は,水族館及び図書館等の屋内型の施設も設置し得るものとしていることに照らし,前記の認定判断は左右されないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
なお,控訴人は,国が,高槻市に対し,市民会館を建て替えるために条例や公園等を変えていくのは本末転倒である旨,そもそも市民会館の建替えが都市公園事業であるのかが疑問である旨,たとえ事業内容が条件を満たしていたとしても,事業費100億円のものに都市公園事業の補助が出ることはない旨を述べたとも主張し,甲17(平成30年9月10日の高槻市議会での質問と答弁を記録したもの)を提出する。しかし,甲17のうち国が述べたとする部分は,控訴人の質問内容と意見に過ぎず,控訴人の上記主張を裏付けるものはなく,むしろ,高槻市からは,「国からは,条例で市民会館を教養施設と位置付ければ何ら問題なく公園内に建設できるとの意見をいただいております。」などと答弁されていることが認められる。
市の答弁も裏付けるものはないのに、控訴人の発言だけを一方的に裏付けがないなどとするのは公正を欠く。
(2) 都市公園法施行令にも「野外」の語が用いられていることについて
控訴人は,都市公園法施行令でも「野外」の語が用いられていることを挙げ,都市公園法2条.2項6号が「野外劇場」としている以上,屋内型の劇場は許されない旨主張する。
しかし,本件では,新文化施設が都市公園法2条2項6号の教養施設といえるかどうかが問題となっているところ,控訴人が挙げる公園施設の名称で「野外」を含むものものうち,「野外卓」(同法施行令5条2項1号)は,都市公園法2条2項3号の休養施設として定められたものであり,「野外ダンス場」(同法施行令5条3項1号)は,都市公園法2条2項4号の遊戯施設として定められたものであり,いずれも同法2条2項6号の教養施設について定められたものではない。
また,控訴人が挙げる公園施設の名称で「野外」を含むものものうち,「野外劇場」「野外音楽堂」は,都市公園法2条2項6号の教養施設として,同法施行令5条5項1号が定めるものであるが,これとは別に,同法施行令5条5項3号は,地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては,都市公園ごとに,当該地方公共団体の条例に委ねている。本件条例2条の2は,これを受けて「城跡公園にあっては劇場とする」旨定め,新文化施設はこれを根拠としているわけであるが,地方公共団体が条例により必要な教養施設を定めるに当たり,都市公園の効用を全うするための教養施設という範囲内において,地方公共団体に広範な裁量権を認めるものと解すべきことは,前記引用にかかる原判決「事実及び理由」第3の2(1)アに記載のとおりであり,都市公園法施行令5条5項1号に「野外」を含む名称の施設があるからといって,同項3号により委任を受けた条例から,屋内型の劇場を排除すべきことにはならない。
法律でわざわざ「野外劇場」と定めているのに、条例で「屋内型の劇場」と定めることで「市民会館」を建てることができるのであれば、何のために法律にそんな条項が存在するのか。裁判所が法律をこんなふうに解釈していいのだろうか。