今日は大阪地方裁判所で、13時10分から、市民会館建替え訴訟の判決言渡しが。残念ながら敗訴でした。
こちらからは、国会での都市公園法に関する審議についても主張したのですが・・・
★平成30年7月3日付原告準備書面2
・・・都市公園法の教養施設等の性質については、平成8年5月24日の衆議院建設委員会でも審議されている。同委員会で中島代議士は「・・・公園内につくることのできる教養施設や運動施設など特例施設の特例建ぺい率を従来の五%から一〇%ないし二〇%に緩和しました。この緩和は、ただでさえ少ない公園に人工的施設をたくさんつくらせるということになります。・・・ 緩和すると、今言ったように、もうされているのですけれども、そうすると公園の中にいろいろな建物ができてくるのですよ。それは壁はないかもしれないけれども、そういうものができてくる、あるいは緑と自然じゃないものができてくる。オープンスペースかもしれないけれどもそれは緑と公園じゃない、こういうものになっちゃうのだ。」と発言し、これを政府は否定していない(甲14・11頁3段目後半から4段目前半)。
つまり、都市公園法の趣旨においては、都市公園はオープンスペースであり、教養施設等は壁がないものだということである。この趣旨からすれば、野外劇場を屋内劇場と解することはできない。
また、この中島代議士の質問に対し、政府は「・・・現在、地方分権推進委員会で議論されている議論では、むしろこのオープンスペースについてはもっともっと低くして、公共団体の考え方によってはもっともっと箱物ができるようにという声もあるわけでございますが、私どもは基本的には、やはり都市公園の本質はオープンスペースということでございます・・・」などと答弁している(甲14・12頁1段目前半)。地方公共団体は都市公園内に箱物を造りたがっているが、国は、都市公園の本質はオープンスペースであるという考え方で対応するとしているのである。
被告としては、箱物を都市公園に造りたいのであろうが、オープンスペースである都市公園の中に、壁のある屋内集会所を造ることは、この国会での審議に照らして、法に反するといわざるをえない。
なお、被告は、平成15年の都市公園法の改正により、条例による施設の追加が可能になったと主張する。しかし、オープンスペースの原則は変わらないし(甲3)、都市公園法2条2項6号で「野外劇場」と、わざわざ「野外」と明記しているのであるから、これを条例で屋内劇場と定めることはできないというべきである。
・・・こう主張したのですが、判決文ではまったく触れられていません。この国会の審議で危惧された以上のことが為されようとしているのですが・・・
以下は判決中の主な裁判所の判断の部分です。
2 城跡公園内に新文化施設を設置することの違法性(共通の争点・争点②)
(1)本件条例2条の2の定めが都市公園法等に違反するか否かについて
ア 前記関係法令の定めのとおり,都市公園法2条2項は,同法において「公園施設」とは,都市公園の効用を全うするため当該都市公園に設けられる同項各号に掲げる施設をいう旨規定し,同項6号は,植物園,動物園,野外劇場その他の教養施設で政令で定めるものを掲げる。そして,都市公園法施行令5条5項3号は,同法2条2項6号の政令で定める教養施設は,同施行令5条5項1号及び2号に掲げるもののほか,都市公園ごとに,地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては当該地方公共団体が条例で定める教養施設等とする旨規定する。
このように,都市公園に設けられる教養施設につき,同項1号及び2号に掲げるもののほかに地方公共団体が条例で定めることができることとされている趣旨は,都市公園の機能とは無関係な公園施設やその機能を阻害する公園施設が設置されることにより,都市公園の健全な発達(都市公園法1条)が妨げられることを防ぐ一方,地域の実情に応じて都市公園の機能は異なり得るため,当該地域の実情に精通した地方公共団体が条例により都市公園ごとに必要な教養施設を定めることができるとすることが適切かつ合理的であることによるものと解される(乙3参照)。そうすると,都市公園法2条2項6号及び都市公園法施行令5条5項3号(以下「本件委任規定」という。)は,地方公共団体が条例により必要な教養施設を定めるに当たりj都市公園の効用を全うするための教養施設(同法2条2項柱書き)という範囲内において,地方公共団体に広範な裁量権を認めるものと解するのが相当である。
しかるところ,本件条例2条の2は,都市公園法施行令5条5項3号の条例で定める教養施設は,城跡公園にあっては劇場とする旨規定するところ,都市公園法2条2項6号及び都市公園法施行令5条5項1号が教養施設として劇場の一種である「野外劇場」を例示していることに加え,国土交通省都市局公園緑地・景観課が監修する「都市公園法解説(改訂新版)」61頁(乙10)において,教養施設として条例による追加が想定される施設として劇場,公会堂等があるとされていること(なお,同59頁は,野外音楽堂に類するものとして屋内音楽堂が考えられるとしている(乙5)。)にも照らすと,屋内型の劇場であっても,都市公園の効用を全うするための教養施設の範晴に含まれるものとみて何ら差し支えなく,本件条例2条の2の定めが,本件委任規定の委任の趣旨を逸脱する違法なものということはできない。
イ 原告は,都市公園は,原則として建築物によって建ぺいされないオープンスペースとしての基本的性格を有するものであること,都市公園法2条2項6号及び都市公園法施行令5条5項1号が,都市公園に設置し得る教養施設として「野外劇場」を掲げていることから,都市公園内に屋根や壁のある屋内劇場を設置することは禁止されている旨主張する。
確かに 都市公園は,本来,屋外における休息,レクリエーション活動を行う場所であることに加え,都市環境の改善等に大きな効用を発揮する緑地の確保,災害時における避難地等としての機能を目的とする施設であるから,原則として建築物によって建ぺいされない公共オープンスペースという基本的性格を有するものである(甲3,14,乙4)。しかし,都市公園法4条は,都市公園の上記機能を確保すべく,公園施設の建ぺい率を100分の2に制限するものの,建ぺい率の制限を設けているということは,屋根及び壁を有する公園施設の設置を禁止していないのであり,現に,都市公園法2条2項や都市公園法施行令5条5項においては,設置し得る公園施設として,水族館や図書館など屋内型の施設が例示として掲げられている。また,原告が主張するように,都市公園法2条2項6号及び都市公園法施行令5条5項1号には「野外劇場」が掲げられているが,その文理上,これは教養施設の例示にすぎないというべきであって,屋内型の劇場を教養施設として設置することを禁止する趣旨を含むものとはいえない。
なお,原告は,「都市公園法解説(改訂新版)」(乙5,10)につき,国土交通省に確認したが同省が監修したとする公文書は不存在であった,同書籍の上記アの記載には全く根拠が示されていない,地方公共団体の要望。意図が反映されているなどとして,何らかの意図で誤った記述がされていると主張する。しかし,所管庁である国土交通省都市局公園緑地・景観課が上記書籍を監修したことは同書籍の奥書(乙3)やその体裁・内容等に照らして十分に明らかであるし,既に説示したとおり,都市公園法2条2項6号及び都市公園法施行令5条5項各号は〆教養施設につき屋内型の施設を除外していないのであり,屋内型の劇場が教養施設に含まれることは,個別に根拠が示されるべきほどに解釈上疑義があるものともいえない。原告の上記主張は,独自の見解及び憶測に基づくものであって,採用することができない。
(中略)
(2) 新文化施設が本件条例2条の2に定める「劇場」に該当するか否か
ア(ア) 前記前提事実(2)及び証拠(甲4,乙1,2,11)によれば,高槻市は,文化芸術振興基本法及び劇場・音楽堂等の活性化に関する法律の制定により,文化芸術の振興に関する地方公共団体の責務が明らかにされたこと等から,舞台設備の老朽化等により,近年の舞台芸術の演出等に対応することが困難となっている本件市民会館を閉館し,文化芸術の創造・発信拠点として新しい市民会館(新文化施設)を建設すること,新文化施設の建設場所は文化施設にふさわしい立地環境であることや鉄道駅からのアクセス性等を勘案し,城跡公園内とすることを内容とする本件建替計画を策定し,これに伴い,城跡公園内に劇場を設置することを可能にするため,平成27年高槻市条例第38号の施行により本件条例2条の2を追加した事実が認められる。
このような同条の追加の経緯等に照らせば,本件条例2条の2の「劇場」とは,正に新文化施設を想定したものであると認められる。
(イ) 加えて,前記前提事実(2)及び証拠(乙2,11)によれば,本件建替計画では,新文化施設について,①その基本理念を「ひと・まち・未来が輝く 文化芸術の創造・発信拠点」とし,基本方針を「1 ひとが集い,交流し,成長する文化芸術創造拠点」「2 まちのにぎわい創出と都市魅力の向上」「3 ひととまちをつなぎ未来を創り育てる」と定めたこと,②上記基本理念・基本方針の実現に向けた事業(ソフトウェア),施設・設備(ハードウェア),管理運営(ヒューマンウェア)を整備する計画とし,事業方針を「1 誰もが文化芸術に親しめる機会の充実」「2 高槻の魅力となる文化芸術の創造・発信」「3 文化芸術活動を通じた地域のにぎわい創出」,施設整備方針を「1 多様な文化芸術に対応できる施設」「2 都市空間と調和した施設」「3 市民に愛され都市魅力を発信できる施設」,管理運営方針として「1 専門性を活かした管理運営」「2 公益性の高い管理運営」「3 戦略的な視点をもった管理運営」と定めたこと,③施設整備に関し,本件市民会館が有する機能を確保するとともに,文化芸術の創造・発信等の事業に必要な機能も確保すべく,舞台公演や音楽公演を催す大ホール部門,公演や実験的な創造活動への利用を目的とする小ホール部門,公演のリハーサルが行える練習室・スタジオ等を設ける創造・交流部門(大・中・小スタジオ),市民の日常的な交流の場となるスペースを確保する共用部門(エントランスロビー,カフェ,情報コーナー等),文化ホールを含めて一体的かつ機能的に管理できる諸室を整備する管理部門(管理事務室等),その他(駐車場・駐輪場等)により構成すると定めたこと,④上記③のうち創造・交流部門が整備する大・中・小スタジオでは,施設の有効活用を図るという目的で,会議,研修,展示等にも利用することができる計画とする旨定めたことが認められる。また,⑤高槻市が平成28年2月に策定した高槻市新文化施設管理運営方針は,本件建替計画に示す基本理念や基本方針を実現するため,事業(ソフトウェア)及び管理運営(ヒューマンウェア)の基本的な方針を定めたものであり,本件建替計画で定められた新文化施設の基本理念等を変更するものではないことが認められる。
上記のとおり,高槻市が,新文化施設を文化芸術の創造・発信拠点とすることを目的として,同施設において,事業(ソフトウェア)及び管理運営(ヒューマンウェア)の整備を計画するとともに,舞台公演や音楽公演を催す大小ホール及び上記舞台公演等を催すために必要なスタジオやカフェ等を備えた施設(ハードウェア)の整備を計画していること等に照らせば,新文化施設は,文化芸術に関する活動を行うための施設であって,施設の運営に係る人的体制の創意と知見をもって実演芸術の公演を企図等することにより,これを一般公衆に鑑賞させることを目的とするものということができる(劇場,音楽堂等の活性化に関する法律2条1項参照)。
そうすると,現に建設が予定されている新文化施設は,文化芸術の創造・発信拠点として,舞台公演や音楽公演を催す大小ホールを中心に,文化芸術に関する活動を行うための施設として活用されることが想定されており,本件条例2条の2を追加する際に想定されていた施設と組館するものではないから,新文化施設は,本件条例2条の2に定める「劇場」に該当すると認められる。
原告は,本件市民会館の稼働率を根拠として,新文化施設の実質は集会所であるなどと主張するが,新文化施設は,本件市民会館が老朽化し近年の舞台芸術の演出等に対応することが困難となっていることから,高槻市の文化芸術の創造・発信拠点となるべきものとして計画され,建設されるものであって,本件市民会館の従来の稼働状況等をそのまま当てはめることは相当でない。新文化施設においては,スタジオを会議や研修等に利用することが認められているが,本件市民会館が有する機能を確保し,施設の有効活用を図る見地から副次的に認められているものにすぎず(乙11・11~18頁等),新文化施設が,会議や研修等の利用を主目的とする集会所でないことは明らかである。原告の主張は採用することができない。