高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

高槻市の「待機児童ゼロ」のまやかし

「待機児童」公表の6.8倍 定義あいまい

今日の産経新聞の夕刊に政令市の「待機児童」に対し疑問視する記事が掲載されました。他紙でもこうした問題が最近取り上げられています。

現在、高槻市議会は6月議会の最中なのですが、臨時保育室の条例案等が上程されたので、先日の本会議で私は高槻市のいう「待機児童ゼロ」についても問い質しました。この臨時保育室が「年間を通じて待機児童0を維持することを目的」としているというからです。

平成26年5月議会での市長のあいさつ

5月臨時議会の初日にも濱田市長から「保育所待機児童数について・・・平成26年4月1日現在の厚労省報告基準による保育所待機児童数を、0人とすることができました。」との報告がありましたが、私がこのことを「すばらしいですね。」とネットに書いたところ、ある市民の方から、「私の周りには保育園にはいれず、育児休業を泣く泣く延長したママ達が何人かいます」と教えられました。

調べてみると、産経新聞のサイトにはこのような記事が・・・

★数え方まちまち 消える待機児童

 「あの基準なら、われわれも待機児童ゼロだよ」。都への待機児数の報告期限を13日に控え、都内自治体の保育担当者からたびたびこんな言葉が漏れる。

 昨春、政令市では横浜が待機児童ゼロを発表。札幌、大阪も数百人減らし、今春、千葉、福岡両市がゼロを実現した。

 減った要因は、入園できなかったために退職したり、育児休暇を延長した家庭をカウントから外したため。横浜は昨年、希望園に入れなかった“保留児童”から「求職中」(100人)や「育休関連」(203人)など8項目を除いてゼロとした。



高槻市も「入園できなかったために退職したり、育児休暇を延長した家庭」をカウントから外していたわけです。

では、高槻市には、どれだけそのような家庭があるのか。情報公開請求したところ、担当課が「育児休業を延長した家庭の数」と題する資料をもってきてくれました。それによると、26年4月1日現在で「11」とのことでした。

退職された方は何人いたのか。高槻市は、把握していないということでした。

高槻市が「厚労省報告基準」つまり国の基準で待機児童が0になったことを記事にしたのは、私がチェックした限り、朝日新聞だけでしたが、その記事には、「ただ、特定の保育所を希望して入所待ちをしているケースなどは含まれず、計120人いるという。」とされていました。記事を素直に読むと、120人の方は、「特定の保育所を希望」している、少しわがままな人のようにも感じます。

この120人に、育休を延長した方は含まれているのか議会で確認したところ、含まれていないということでした。

報道機関に提供された資料に、育休を延長した家庭の数についての記載がなかったとことからすると、報道機関には知らされなかったと考えられます。そうすると、高槻市は、育休を延長した家庭の数を把握していながら、その情報を提供しなかったといえます。

本来なら、こうした数も公表すべきではないのでしょうか?

たとえば、東京都杉並区の場合、以下の画像のとおり、育休延長や退職だけでなく、その他のケースについてもちゃんと公表しています(この資料は杉並区の担当者の方に送っていただきました)。

杉並区の待機児童数

退職された方について、高槻市は「把握していない」ということですが、杉並区が把握できるのだから、高槻市でも把握できるはずです。

私は議会で・・・

高槻市にとって、「待機児童0」とはどういう状態を指すのでしょうか?国基準で年度当初に0の状態なのか、それとも育休延長や退職などの実態的な待機児童数が、年度末に0の状態なのか?どういう状態なのでしょうか?お答えください。



・・・と尋ねました。すると高槻市の担当部長の答弁は・・・

高槻市にとって「待機児童0」はというお尋ねでございます。本年5月に公表したのは、4月1日時点の厚生労働省報告基準に基づく待機児童数でございますが、それにとどまらず、年間を通じた待機児童の解消を目的として臨時保育室を設置しようとするものでございます。



・・・という的を得ないものでした。

高槻市が保育園の定員を増やしてきた努力は評価していますし、臨時保育室の設置にも賛成です。

しかし、国基準で待機児童が0になったといわれても、実際には、育休の延長や退職などを余儀なくされている方も、まだ、おられるわけです。そんな保護者や子供達にとって、国の基準なんて、あまり意味がないのではないでしょうか。

高槻市も、杉並区などを見習って、実際の待機児童の数を調査・公表して、本当の意味での「待機児童0」を目指すべきです。

以下は私の質問と答弁の内容です。原稿とメモに基づいているので、不正確な部分があるかもしれないことをお許しください。


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■議案第97号 高槻市立臨時保育室条例制定について

<1回目>

(1)転入や育児休業明けなどによる年度途中の保育需要に対応するための定員50人の臨時保育室を12月から開室するということです。5月16日付の市の報道提供資料によれば、「臨時保育室事業は、保育の必要性が高いにもかかわらず入所できない児童を臨時的に預かり、年間を通じて待機児童0を維持することを目的とします。」とされています。
 高槻市では、今年の4月1日現在の保育所待機児童数が、厚生労働省報告基準で0人となったということですが、これまで、年度内でどれだけ待機児童が増えていたのか、担当課に資料を求めたところ、年度初日の4月1日のほかは、10月1日現在の数字しかないということでしたので、それを出してもらいました。その資料の過去3年度の4月1日現在と10月1日現在の数字を比べると、平成23年度は134人から230人へと96人の増加、24年度は70人から151人で81人の増加、25年度は55人から122人で67人の増加となっています。年度末にはさらに増えていたと考えられますが、なぜ臨時保育室の定員を50人としたのか、その理由をお答えください。

(答弁)臨時保育室の定員を50人とした理由ですが、平成25年度の申し込み状況から、保育の必要性の高い児童数の実績等をもとに、50人と設定したものでございます。

(2)厚生労働省報告基準という国の基準では待機児童が0になったということですが、朝日新聞の5月17日の記事によると、これには「特定の保育所を希望して入所待ちをしているケースなどは含まれず、計120人」が入所待ちだということです。この高槻市内の120人の方の内訳はどのようなものなのでしょうか?また、こういった方々については、市として今後どうされるのでしょうか?お答えください。

(答弁)厚生労働省基準の待機児調査において「特定の保育所を希望している」等の待機児童数に含まれない120人の内訳等については、特定の保育所のみを希望している方、内定した保育所があるにもかかわらず、辞退をされるなど、私的な理由で待機となられた方、通常の交通手段により自宅から30分未満で登園が可能な保育所への入所が可能であるが希望されない方等となっております。

(3)国の基準で待機児童が0になったということを、私は素晴らしいことだということでネットに書いたのですが、そうすると、市民の方から、「私の周りには保育園にはいれず、育児休業を泣く泣く延長したママ達が何人かいます」と言われました。そこで、保育園に入所できなかったために育児休業・育休を延長したケースの数について、担当課に情報を求めたところ、「育児休業を延長した家庭の数」と題する資料をいただきました。この資料にも、待機児童と同様、4月1日現在と10月1日現在の数字だけしかなかったのですが、過去3年度の数字を述べますと、23年度が23から88へと65の増加、24年度が16から80へと64の増加、25年度が41から76へと35の増加。そして26年4月1日が11ということでした。このように、育休を延長された方については、市として、どのようにお考えなのでしょうか?この臨時保育室で、減らす、なくす、というお考えはないのでしょうか?お答えください。

(答弁)育児休業の延長についてですが、比較的入所がしやすい4月に合わせて職場に復帰されるケースや、育児休業を延長するケースがあることは認識いたしております。
 今回設置いたします、臨時保育室においては、これら年度途中に生じる保育需要に積極的に対応していくものでございます。

(4)産経新聞のサイトには5月9日付で「数え方まちまち 消える待機児童」というタイトルの記事があります。記事の冒頭部分を読み上げますと・・・
・・・ 「あの基準なら、われわれも待機児童ゼロだよ」。都への待機児童数の報告期限を13日に控え、都内自治体の保育担当者からたびたびこんな言葉が漏れる。
 昨春、政令市では横浜が待機児童ゼロを発表。札幌、大阪も数百人減らし、今春、千葉、福岡両市がゼロを実現した。
 減った要因は、入園できなかったために退職したり、育児休暇を延長した家庭をカウントから外したため。横浜は昨年、希望園に入れなかった“保留児童”から「求職中」(100人)や「育休関連」(203人)など8項目を除いてゼロとした。
・・・ということです。
育休の延長だけではなく、入園できなかったために退職した方も除いているということが指摘されているのですが、退職した方は、高槻市ではどれだけおられるのでしょうか?また、市として、このような方については、どうされるおつもりなのでしょうか?お答えください。

(答弁)保育所に入所できず、保護者が退職された方については、把握しておりません。


<2回目>

(1)臨時保育室の定員に関してですが、50人とした理由について、「平成25年度の申し込み状況から、保育の必要性の高い児童数の実績等をもとに、50人と設定した」との答弁でした。25年度の状況は、先ほど申し上げたとおり、少なくとも半年で67人の増加となっています。これは厚生労働省報告基準・国の基準の待機児童数であって、育児休業を延長された方や退職された方は含まれていません。「育児休業を延長した家庭の数」は、先ほど述べたとおり、25年度中に少なくとも半年で35増加しています。国基準と育休延長を併せると100人以上増加していたわけです。臨時保育室事業は、「年間を通じて待機児童0」を維持することを目的としているとのことですが、定員50人では、先ほどの25年度の数字からすると達成できるか疑問なので、答弁は矛盾しているように感じるのですが、定員50人で、本当に、「年間を通じて待機児童0」を維持できるのでしょうか。お答えください。

(答弁)臨時保育室の定員を50人で「年間を通じて待機児童0」を維持できるのかとのお尋ねですが、状況に応じて定員を超えた受け入れも想定しております。

(2)「特定の保育所を希望している」等の待機児童数に含まれない120人の内訳等については、特定の保育所のみを希望している方、私的な理由で待機となられた方、通常の交通手段により自宅から30分未満で登園が可能だけれども希望されない方等だということですが、こうした方々については、高槻市は何か対応をされるのでしょうか?それとも、特定の保育所のみを希望していたり、私的な理由で待機になったりしているので、市として何もする必要はないと考えているのでしょうか?お答えください。

(答弁)「特定の保育所を希望している」等の待機児童数に含まれない方への対応としましては、入所できる可能性がより高い保育所を斡旋するなどの対応をさらに進めてまいります。

(3)育児休業の延長については、今回設置する臨時保育室で、年度途中に生じる保育需要に積極的に対応していくとのことですが、具体的にどれだけの方が入所できるようになるのでしょうか。育休延長の数字も0になるということなのでしょうか。お答えください。

(答弁)育児休業明けの職場復帰が必要な方については、積極的に臨時保育室への入所を働きかけてまいります。

(4)保育所に入所できなかったために保護者が退職されたケースについては、高槻市は把握していないということですが、たとえば東京都杉並区では、「国の定義では、保育需要の実態との乖離がある」として、国の基準の待機児童のケースや数だけでなく、「より実態を踏まえた待機児童数」を公表しています。その項目は、「仕事を退職した、内定した仕事を辞退した、求職活動を止めた」「育児休業を延長した」といったものをはじめ、ベビーホテルを利用する、一時保育を利用する、ベビーシッターを利用する、求職中のひとり親家庭などといったものです。杉並区でできるなら、高槻市でもできるはずだと思うのですが、なぜこういう実態を市は公表しないのでしょうか?お答えください。

(答弁)保育所に入所できなかった場合の個々の対応につきましては、詳細は把握しておりません。今後も引き続き施設整備等に努め、多様な保育ニーズに適切に対応していくことが重要であると考えております。


<3回目>

「年間を通じて待機児童0」を維持するための臨時保育室にしては、非常に答弁が曖昧ですよね。さらに3点質問します。

(1)「年間を通じて待機児童0」ということなんですが、高槻市にとって、「待機児童0」とはどういう状態を指すのでしょうか?国基準で年度当初に0の状態なのか、それとも育休延長や退職などの実態的な待機児童数が、年度末に0の状態なのか?どういう状態なのでしょうか?お答えください。

(答弁)高槻市にとって「待機児童0」はというお尋ねでございます。本年5月に公表したのは、4月1日時点の厚生労働省報告基準に基づく待機児童数でございますが、それにとどまらず、年間を通じた待機児童の解消を目的として臨時保育室を設置しようとするものでございます。

(2)念のためおききしますが、「特定の保育所を希望して入所待ちをしているケースなどの計120人」の中には、育休を延長した数は含まれているのでしょうか?お答えください。

(答弁)特定の保育所を希望して入所待ちをされている方等の120人については、育児休業を延長された方は含まれておりません。

(3)高槻市では、今後、東京都杉並区のように、国の定義する待機児童の数だけではなく、実態を踏まえた待機児童数を公表するお考えはないのでしょうか?お答えください。

(答弁)待機児童の実態やニーズを把握することは、今後どのような施策を展開するのかといった観点からも重要であると認識していますので、引き続き、状態の把握に努め、多様な保育需要にも積極的に取り組んでいく所存です。

 最後に意見です。
 国基準で待機児童が0になったといわれても、実際には、育休の延長や退職などを余儀なくされている方も、まだ、おられるわけですから、保護者や子供達にとっては、国の基準なんて、あまり意味がないと思います。
 高槻市も、杉並区などを見習って、先ほど述べたような待機児童の実態を調査・公表して、本当の意味での待機児童0を目指すべきです。臨時保育室には賛成ですが、これらのことを指摘・要望しておきます。以上です。