高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【駐車場訴訟】地裁で敗訴。控訴は断念。

高槻市役所の公用駐車場の出入り口

本日13時10分から、大阪地方裁判所で、駐車場訴訟の判決言渡しがありました。残念ながら敗訴でした。弁護士さんと相談した結果、控訴はしないことにしました。

高槻市役所には、市民の皆さん向けの原則有料の駐車場がありますが、それとは別に公用車用の駐車場もあります。この公用駐車場は議員も使えるのですが、高槻市が、元議員らの一部にも使用を許可していましたことが判明しました。この元議員らは、市役所の駐車場を無料で自由に使えていたわけです。

元議員らは既に公務員ではないわけですから、市民向けの駐車場を使うべきです。公用駐車場の無料使用の許可は、不当な便宜供与だと考え、議会で追及し、住民訴訟でも争いました。

しかし残念ながら、大阪地裁は違法ではないと判断しました。民間同士の争いであれば認められないようなことでも、裁判所は行政の裁量の範囲だとすることが多く、したがって行政を相手にした裁判は勝つのが難しいと弁護士さんは語っていたのですが、この裁判もそういった結果になったのだと思います。常識的にはおかしなことでも、それを違法だと裁判所に判断してもらうのは非常にハードルが高いのです。なので、控訴は断念することにしました。これで本件は終わりです。

以下は判決文の抜粋です。

カ 有功者の一部は,私的な団体として,高槻市有功者会(以下「有功者会」という。)を組織している。

(2) 本件駐車場の状況等
ア 本件駐車場は,高槻市桃園町2番1号所在の本庁舎の敷地に所在する駐車場であり,その収容可能台数は37台である。本件駐車場の出入口には,自動開閉機が設置されており,第三者は自由に入退場することができない。
 他方で,定期券の交付を受けた者は,定期券を自動開閉機に通すことにより,本件駐車場に入退場をし,空いている駐車区画がある場合には,駐車料を支払うことなく自動車を駐車することができる。なお,定期券は,平成27年4月時点で,349枚が使用に供されていた。
イ 総務課長は,本件有功者ら及び本件各組合(本件定期券受領者ら)に対し,本件要項が定める定期券の交付対象のうち「利用対象者の中で総務課長が特に認める場合」に該当するとして,定期券を交付した。

(3 )住民監査請求
ア 原告は,平成27年8月10日,高槻市の監査委員に対し,高槻市が一部の有功者及び労働組合に対して本件駐車場を無料で使用できる定期券を交付しており,有功者に対する定期券の交付は,法令上の根拠を欠き,労働組合に対する交付は,労働組合法7条3号の経理援助に当たる不当労働行為であるから,いずれも違法不当であり高槻市に損害を与えているとして,過去10年分の有功者や労働組合による本件駐車場の使用状況を明らかにした上,高槻市の関係職員及び関係人等に対し,不当利得返還請求又は損害賠償請求をし,定期券の交付を受けた者による本件駐車場の使用を差し止めることを求める旨の住民監査請求をした。

4 争点に関する当事者の主張の要旨
(2)
(原告の主張の要旨)
ア 本件有功者らへの定期券の交付等について
 定期券は,無料で無期限に本件駐車場を利用することを可能にするものであるところ,本件有功者らに対しては,定期的に公用等で来庁し,定期券の交付を受ける必要があるかを確認することなく,定期券が交付され,本件有功者らが実際に公用等のため本件駐車場を使用したかも不明である。
 なお,有功者会に所属する有功者が,年に各1回,市長との意見交換会並びに議長及び副議長との意見交換会に参加することは,有功者の業務ではないし,その回数が少ないことに照らして定期券を交付ずる必要性があるとはいえず,地域のため頻繁に本庁舎に来庁する自治会長に定期券の交付がされないことに照らしても,有功者に定期券を交付する必要はない。
 また,仮に有功者に定期券を交付するとしても,政治的に偏りを有する私的団体である有功者会に所属する者に対してのみ定期券を交付することは公平性を欠くものである。
 したがって,歴代総務課長らは,定期券を本件有功者らに交付すべきでなく,また,交付済みの定期券の使用停止及び返還請求をすべきであったにもかかわらず,これを怠り,本件有功者らに定期券を交付し,使用停止及び返還請求をしなかった。
イ 本件各組合への定期券の交付等について
 本件各組合は,組合活動のために本件駐車場を利用していたものであり,公用で使用する目的を有していたとはいえない。また,本件各組合への定期券の交付は,労働組合に対する経費援助を不当労働行為として禁止した労働組合法7条3号に反し,違法である。

第3 当裁判所の判断

(1) 判断枠組み
 本件駐車場は,本庁舎の敷地に所在する駐車場であり,高槻市の事務の用に供する建物である本庁舎の附帯施設に該当するから(庁舎管理規則2条),行政主体の事務の用に供せられるいわゆる公用物に該当する。そして,公用物である本件駐車場は,本庁舎で勤務する公務員に加えて,来庁者の使用に供することを目的としていると解されるから,来庁者に公用物である本件駐車場を利用させることは,当該公用物の使用目的の範囲内に属するものであって,その利用の可否,対象者,使用期間等の利用の態様についての判断は,公用物の管理権者の合理的裁量に委ねられているものと解される。そして,その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。
 総務課長は,本件定期券受領者らに対し,本庁舎に来庁する予定があることを前提に本件駐車場に入退場をすることができる定期券を交付しており,定期券の交付行為は,公用物の目的内使用における管理権行使の一態様としてされたものということができるから,前記の判断枠組みを前提として,定期券の交付行為及び定期券を回収しない不作為が裁量権の逸脱又は濫用に該当するかについて検討する。

(2) 本件有功者らに対する定期券交付について
ア 原告は,定期券は,無料で無期限に本件駐車場を利用することを可能にするものであるところ,本件有功者らに対しては,定期的に公用等で来庁し,定期券の交付を受ける必要があるかを確認することなく,定期券が交付され,本件有功者らが実際に公用等のため本件駐車場を使用したかも不明である旨を主張する。
イ そこで検討すると・・・定期券の受領者は,定期券を自動開閉機に通して本件駐車場に入退場し,駐車料を支払う必要はない一方で,空いている駐車区画がある場合に駐車できるにすぎず,37台の駐車区画に対して349枚の定期券が使用に供されている。そうすると,本件有功者らは,定期券の受領により,特定の駐車区画を排他的に使用できる地位を得ていたということはできない。
 また,本件要項が定めるとおり,議員,記者クラブの所属者等の本庁舎に複数回来庁することが予定されている者にあらかじめ定期券を交付することは,来庁ごとに本件駐車場の利用の申請の受付及び許可を行う事務・・・の負担を軽減する等の観点から一定の合理性があると考えられるところ,有功者は,市が行う式典への招待を受け得る(表彰条例13条)ことに加え・・・議員又は市役所の担当部署への市民の要望の伝達等のほか,有功者会に所属する場合には,市長との意見交換会並びに市議会議長及び副議長との意見交換会
に出席することが一般に予定されていたものといえる。そうすると,本件有功者らについて,本庁舎に複数回来庁することが予定されている者であり,本件要項にいう「利用対象者の中で総務課長が特に認める場合」に該当するとして,定期券を交付する必要があると評価することは,著しく不合理であるとまでいうことはできない。
 そして・・・本件有功者らからは,本庁舎に用件があって来庁する場合に本件駐車場を利用している,又は,そもそも定期券を利用したことがない旨の聴取がされている一方,本件有功者らが,本
庁舎に来訪する用件がないにもかかわらず,私的な目的で定期券を利用して本件駐車場に自動車を駐車したことを認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はないから,本件有功者らによる定期券の利用の実態がその交付の趣旨に反するものであるということもできない。
 以上の事情を総合すれば,総務課長が,本件有功者らに対して定期券を交付し,又はこれを回収しないと判断したことが,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることはできない。

ウ(ア)これに対し,原告は,①有功者会に所属する有功者が,年に各1回,市長との意見交換会並びに議長及び副議長との意見交換会に参加することは,有功者の業務ではないし,その回数が少ないことに照らして定期券を交付する必要性があるとはいえない,②地域のため頻繁に本庁舎に来庁する自治会長に定期券の交付がされないことに照らしても,有功者に定期券を交付する必要はない旨を主張する。
 しかしながら,前記①については・・・有功者は,有功者会が行う意見交換会への出席に加えて,議員又は市役所の担当部署への市民の要望の伝達等の目的で本庁舎に複数回来庁することが一般に予定されていたということができるから,原告の指摘する意見交換会の回数をもって,定期券を本件有功者らに交付することが不合理であるということはできない。なお,本件有功者らの一部は,定期
券をほとんど又は全く利用していないものの・・・前記のとおり,有功者一般については,本庁舎に複数回来庁することが予定されていることに加え,前記イのとおり,定期券の交付は特定の駐車区画を排他的に使用できる地位を与えるものではないことに照らせば,総務課長が,本件有功者らのうち,定期券をほとんど又は全く利用しなかった者に対して定期券を交付し,又はこれを回収しなかっ
たとしても,その判断が著しく不合理であるということはできない。
 また,前記②については,そもそも,一般に自治会長が有功者より頻繁に本庁舎を訪れる必要性があることを基礎付ける事情を認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。この点を措くとしても,本庁舎に複数回来庁することが予定されている者がある場合において,各駐車場の収容可能台数,当該者の利用頻度等を考慮して,そのうち一部の類型の者に,定期券を交付して本件駐車場を利用させ,その他の者には,定期券を交付することなく,例えば,来庁の都度,無料の駐車券を発行して本庁舎の近隣に位置する桃園町駐車場を利用させる・・・,本件駐車場の利用の申請を受け付け,許可を行う・・・などの取扱いをしたとしても,当該取扱いが著しく不合理であるということはできない。
 したがって,原告の前記主張は採用することができない。
(イ) 原告は,仮に有功者に定期券を交付するとしても,政治的に偏りを有する私的団体である有功者会に所属する者に対してのみ定期券を交付することは公平性を欠く旨を主張する。
 しかしながら,有功者会に所属する者のみが定期券の交付を受けていることを認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。また,議会の議員に4年以上在職した者が,その任期を終える場合,一般的に,高槻市の職員から,有功者として定期券の交付を受けられる旨の説明を受けているわけではなく,また,本件有功者らは定期券を受領している一方で,有功者の中には,定期券の交付を受けていない者がいるものの・・・これらの事実のみから,総務課長が,有功者の政治的意見等を考慮した上で一定の者を選別して定期券を交付していたことを認めることはできず,他にこのことを認めるに足りる客観的かつ的確な証拠もない。
 したがって,原告の前記主張は採用することができない。
エ 以上のとおり,総務課長が,本件有功者らに対して定期券を交付し,又はこれを回収しないと判断したことが,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることはできず,裁量権の逸脱又は濫用があったということはできない。

(3) 本件各組合に対する定期券交付について
ア 原告は,①本件各組合は,組合活動のために本件駐車場を利用していたものであり,公用で使用する目的を有していたとはいえない,②本件各組合への定期券の交付は,労働組合に対する経費援助を不当労働行為として禁止した労働組合法7条3号に反して違法である旨を主張する。
イ まず,①について検討すると,前記(1)で説示したとおり,本件駐車場は,本庁舎で勤務する公務員及び来庁者の使用に供することを目的としているところ,本件各組合が公務員の勤務条件の維持改善等を目的とする団体であること・・・に鑑みれば,高槻市で勤務する公務員が労働組合の組合員ないし職員団体の構成員として活動するため,定期券を用いて本件駐車場を一時的に利用することが,本件駐車場の使用目的の範囲を超えたものであるということはできない。そして,実際の利用態様についてみても,本件各組合は,組合の刊行物等の物品運搬のため,本件駐車場を利用しているほかジ本庁舎外に事務所を置く高槻市交通労働組合については,同組合から推薦を受けた組合員が,労働安全衛生委員会等の委員会に出席するために本件駐車場を利用しているのであるから・・・,本件駐車場の利用態様は,前記使用目的の範囲内であったということができる。
ウ 次に,②について検討する。・・・労働組合法7条は,「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」をしてはならない(同条3号本文)が,例外として「最小限の広さの事務所の供与」等を除く旨を規定する(同号ただし書)ところ,その趣旨は,使用者が労働組合に与える経済的利益に着目し,労働組合の自主性を阻害する経理上の援助を禁止する一方で,組合活動の便宜を確保する等の観点から,前記阻害のおそれがない経理上の援助については,これを許容することにあると解される。そうすると,高槻市が本件各組合に定期券を用いた本件駐車場の一時的な利用を認めることは,事務所の供与と同様に,労働組合の自主性を阻害するおそれがない経理上の援助に該当するというべきであって,同号に違反しないものと考えられる。
 したがって,本件各組合について,労働組合法7条3号の適用があり,又は前記に説示した経理上の援助の禁止の趣旨が及ぶと解したとしても,本件各組合に対する定期券交付は,同号に違反するものではなく,また,その趣旨にも反しないものというべきである…
エ 以上のとおり,総務課長が,本件各組合に対して定期券を交付し,又はこれを回収しないと判断したことが,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることはできず,裁量権の逸脱又は濫用があったということはできない。