高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【元AETへの不当労働行為】労働委員会の命令を受け入れ早期解決を図ってもよかったのでは?

12月議会の初日に3件の即決議案が審議・採決されました。その最初は市長の専決処分に関する報告。オーストラリア人の元英語指導助手(AET)らを卒業式に出席させなかったこと等が、大阪府労働委員会から不当労働行為と認定され、謝罪の文書を手交するように命じられたのですが、この命令を取り消すことを求める裁判を、議会にかける時間がなかったので、市長の専決で起こしたというのです。

<提起の要旨>
高槻市立小学校の卒業式に英語指導助手(AET)2名が出席を認められなかったことに係る不当労働行為救済申立事件において、大阪府労働委員会の命令(平成28年10月14日)を不服とし、取消訴訟を提起したもの。
<専決処分理由>
本件提訴について、市議会を招集する時間的余裕がなく、地方自治法第179条第1項の規定により専決処分を行ったものである。



なお、府労委が手交するよう命じた文書の内容は以下のものです。

 当市が行った次の(1)及び(2)の行為は、大阪府労働委員会において、それぞれ、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1)平成27年3月19日に高槻市立■■小学校及び同■■小学校において行われた卒業式について、貴組合員である■■氏及び同■■氏の出席をそれぞれ認めなかったこと。(労働組合法第7条第1号、第3号及び第4号該当)
(2)平成27年3月18日に行われた高槻市議会本会議での答弁において、当市教育委員会教育指導部長が、同月19日に高槻市立■■小学校及び同■■小学校において行われる卒業式について、貴組合員である■■氏及び同■■氏の出席をそれぞれ認めないことに関連して、貴組合が不当労働行為救済の申立てをしたことや貴組合及び組合員らが行ったビラ配布、要請行動等の活動を批判する発言を行ったこと。(労働組合法第7条第3号該当)



大阪府労働委員会の命令が不当なものであれば、この議案に賛成したのですが、議会で質問してみると、どうも市の提訴のほうが妥当性を欠くと考えられたので、賛成しませんでした。

以下は議会でのやり取りです。原稿とメモに基づいているので、本番の発言とは違う部分もあることをご了承ください。

■報告第9号 不当労働行為救済申立事件の大阪府労働委員会の命令に対する取消訴訟の提起の専決処分報告について

<1回目>

1.先ほど高木議員の質問にもありましたように、訴訟の当事者である労働組合やその組合員である元AETらが、不当労働行為救済申立て、春闘集会、記者会見等を行ったことも問題になっているようですが、これらのことについては、何らかの違法性があったのでしょうか?

⇒英語指導助手が行った活動に違法性があるという捉えはしておりません。

2.その労働組合や組合員が配布したビラには、市の業務を妨害したり、卒業式等の運営に支障をきたしたりするような内容が書かれていたのでしょうか?

⇒配布したビラにつきましては、市の業務を妨害するような内容ではありませんでしたが、事実とは違う内容が一部ございました。

3.元AETが職員室内で校長に断りなくビラを配布したといったことがあったようですが、市や教育委員会の許可を受けて機関紙やビラの類を配布している職員団体や労働組合はどれだけあるのでしょうか?

⇒3団体と認識しています。

4.元AETが教職員や保護者に主張を訴えたりしたことはあったようですが、児童らに直接そういったことをしたことはあったのでしょうか?

⇒学校からそのようなことがあったという報告は受けておりません。

5.卒業式に出席したいという元AETに対しては、卒業式の日は、児童の目につく場所で活動等を自粛するようにとお願いすればよかったのではないかとも思いますが、そのようなお願いも聞いてくれるような方々ではなかったのでしょうか?なかったのであれば、何故そのように考えるのか、お答えください。

⇒教育活動として行う卒業式の出席者や具体的な実施方法につきましては、校長や設置者である教育委員会の判断にゆだねられております。新しい生活への動機づけを行う機会となる卒業式は、厳粛かつ清新な雰囲気をつくり出すような工夫が極めて大切でございます。
 したがって、式の実施に際して多少なりとも混乱が予見されるのであれば、事前に最善の対処を行うことが、執行責任者としての校長及び指導助言を行う教育委員会の責務でございます。

<2回目>

1.配布したビラについては、事実とは違う内容が一部あったということですが、どのように事実と違っていたのでしょうか? また、それは、卒業式等の運営に支障をきたしたりするようなものではないような答弁でしたが、市に何らかの影響を与えるようなものなのでしょうか? それぞれお答えください。

⇒英語指導助手を突然廃止する方針を決定したと書かれておりましたが、今回の見直しは、国の計画に基づいて、小学校の英語の教科化を見据えた計画的なものでございます。
 なお、ビラの内容自体は、市の施策に影響を与えるようなものではございません。

2.ご答弁によると、卒業式の実施に多少の混乱が予見されたということですが、なぜそのような予見がされたのでしょうか? 元AETに何らかの問題があったのでしょうか? 具体的にお答えください。

⇒卒業式の直前である2月末から3月にかけて、教職員の勤務時間中に行われた研修会で突然自らの主張を述べると言ったことや、職員室内で校長に断りなくビラの配付を行なったことがございました。
 卒業式、あるいは、その前後でも類似の行為が行なわれることにより、混乱が式場にまで及ぶことを懸念しておりました。

3.市や教育委員会の許可を受けて機関紙やビラの類を配布している職員団体や労働組合は3団体だということですが、元AETの所属している労働組合も、ビラ配布の許可を申請すれば、市や市教委は許可をしたのでしょうか? しないのであれば、何故しないのか、お答えください。

⇒違法な態様でなされる場合を除けば、組合の活動は基本的に制限できるものではないと考えております。

4.英語指導助手が行った不当労働行為救済申立て等の活動には、教育委員会としては、違法性があるとは捉えていないということですし、他の3団体については学校での機関紙等の配布を許可されているということです。労働組合ですから、場合によっては使用者側を批判するようなビラを配ったりするのは当たり前ではないかと思います。そういうことを、卒業式に出席させなかった理由として議会でも答弁しているわけですから、不当労働行為といわれても、私は仕方がないと思います。大阪府労働委員会の命令を受け入れるという選択肢もあったかと思いますが、なぜその選択をせずに、提訴をしたのでしょうか? 裁判で負ければ恥の上塗りみたいになってしまいかねませんが、裁判で勝訴できる見込みはどれだけあると考えているのでしょうか? それぞれお答えください。

⇒2点目でお答えしたような状況から混乱を懸念し、指導助言を行いました。しかし、労働委員会は、学校および教育委員会が考えるような懸念について、現実的かつ具体的な事実はなかったとして不当労働行為を認定しました。また、労働委員会の判断は、学校長の責任と権限を狭く解釈する判断をしたと考えております。そこで、労働組合に関連する法令と、学校教育や地方教育行政に関連する法令の解釈に基づく判断をしていただくため、司法機関である裁判所での判断を求めるものでございます。

<3回目>

1.元AETは、研修会で自らの主張を述べたということですが、その研修会はどんな内容のものだったのでしょうか?
2.元AETは、その研修会の中で、どのような時に、どのような態度で、自分の主張を述べたのでしょうか?研修会の冒頭で、研修を邪魔するようにして、したのでしょうか?それとも、研修の後半に、研修があらかた終わったところで、紳士的に述べたのでしょうか?具体的にお答えください。

⇒市内の小学校で勤務時間中に行われた英語科の研究会の終了間際に、スーパーバイザーが突然前に出て、参加していた教員の前で自らの主張を述べたものでございます。

3.そのことによって、元AETは、処分等はされたのでしょうか?されたのであれば、どのような処分等がされたのでしょうか?具体的にお答えください。

⇒処分につきましては、教育委員会はそのような権限を有していないため、行っておりません。

 あとは意見です。
 元AETが、研修会のどんなタイミングのときに自分の主張を述べたのか分かりませんけど、勤務時間中であっても、職場内で、自分の待遇について不満を述べるということも、一般的に、ないこともないと思います。そんなことは絶対にやってはいけない、というほどのものでもないですよね。
 学校外での元AETの活動については、教育委員会としては、違法性はないという認識のようですし、職員室内でビラを配布したことについても、許可をとれば配布してもよかったというような答弁でした。
 元AETは、授業中や、児童に対しては、そういうことはしていないということなので、TPOはわきまえていた感じもします。そうすると、卒業式でも、児童らの式を邪魔するようなことはしなかったのではないでしょうか。
 勝訴の見込みをお聞きしたら、それについては明言せずに、労働委員会は、学校長の責任と権限を狭く解釈する判断をしたので、裁判所に対して、あらためて、労働組合や学校教育などに関する法令に基づく判断を求めたいということでした。
 卒業式というのは、児童にとっては、さよならと旅立ちの儀式であるわけですけれども、教職員の皆さんにとっても、さよならの儀式であると思います。その卒業式には、我々議員や地域の方々といった、直接、学校教育に関係のない、いわば部外者もお招きいただけるわけです。なのに、違法行為もしていないのに、勤務時間中に自分の主張を述べたりしただけで、児童と教育現場で直接かかわってきたAETを、卒業式に出席させないという権限・裁量まで、学校長にあるのかどうか。仮にあったとしても、社会常識的にそんなことをやっていいのかどうか。私は疑問です。
 AETについては、今回の件も含めて、いろいろと報道されて、大きな問題になりました。その原因はAETにあるのか?市や教育委員会のほうにあるのか?・・・報道のされ方や、労働委員会の決定から見ると、市や教育委員会のほうが、分が悪いと思います。労働委員会の命令を受け入れて、早期に解決を図ってもよかったのではないでしょうか。
 以上です。