高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

通学路に410台防犯カメラ・・・果たして防犯効果は?

今日は6月議会の本会議3日目。条例案や補正予算案に対する質疑が。補正予算案には、通学路に防犯カメラを設置する経費等も計上されていましたので、これについても質問しました。

日弁連が2012年2月8日付けで警察庁長官に提出した「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」によると、防犯カメラによる犯罪抑止効果は限定的とされていたので、これにも基づき高槻市の見解を尋ねましたが、「犯罪の抑止効果はある」と答弁するばかりで、具体的な根拠は示されませんでした。ちゃんと具体的な犯罪抑止の事例を答えてくれれば、少しは安心できたのですが・・・

日弁連の意見書からすると、防犯カメラを設置したとしても、犯罪抑止効果は薄いと考えられますので、最後に、今後も、子供達の見守りを継続していく必要があると意見を述べました。

以下は本日の議会でのやり取りです。原稿に基づいていますので、不正確な部分もあることをお許しください。

<1回目>

1.平成23年12月の総務消防委員会で、自治会に対する防犯カメラ設置の補助に関して、「合法合憲なのか、違法違憲の可能性があるのか」と質問させていただいたんですが、その時には明確なご答弁はなく、高槻市として法的な整理がついていないようでした。今回の防犯カメラに関しては、設置主体が違うので、事例が異なるのかもしれませんが、法的な整理はされているのでしょうか?教育委員会の見解をお聞かせください。

⇒防犯カメラ設置については、犯罪の抑止、子どもの安全確保という目的の正当性とプライバシー保護との比較衡量等の総合判断の結果、違法性はないと認識しております。また、運用にあたっては、高槻市個人情報保護条例に基づき、適切に管理してまいります。

2.資料のイメージ図を見ると、「防犯カメラ設置中 高槻市」と書かれています。予算案としては教育委員会であがっていますが、設置主体は、教育委員会ではなく、市ということになるのでしょうか?また、防犯カメラの管理はどこの部署になるのでしょうか?

⇒防犯カメラ設置については、教育委員会が設置主体であり、管理していく予定です。
「防犯カメラ設置中」の表示につきましては、今後、その方法、表現等を検討していく予定です。

3.410台の防犯カメラを通学路に設置するということですが、資料には、単に犯罪の抑止や犯罪捜査への貢献など、ということで、子供の安全には限定されていません。子供の関係する犯罪以外のものについても、映像が利用されるということでしょうか?

⇒映像の利用に関しましては、警察等からの要請に対し、内容等を確認し、対応してまいります。

4.映像の利用・提供は、捜査機関や弁護士に限られるのでしょうか?それとも、例えば、人命救助の瞬間や、ツキノワグマや何かの珍しい動物が現れたとか、民事上の紛争の解決のために必要だとか、そういう理由でも開示されるのでしょうか?

⇒画像情報の提供ですが、捜査機関などを想定しており、それ以外については、高槻市個人情報保護条例の規定に基づき対応してまいります。

5.実際の犯罪の抑止の効果については、どのようにお考えでしょうか?

⇒これまでの設置事例から、抑止効果は在ると考えております。

6.稼働時間や記録媒体の保存期間、夜間も撮影できるのかなど、基本的な仕様については、どのようになっているのでしょうか?

⇒稼動時間につきましては、24時間、365日で、基本的なカメラの仕様は130万画素以上、記録媒体の保存期間は、7~10日としております。

7.プライバシーに関する方針や規定はどのようなものになるのでしょうか?

⇒プライバシーに関する方針や規定でございますが、高槻市個人情報保護条例に基づき、防犯カメラの設置及び管理・運用に関する要領等を定め、個人情報保護の徹底を図ってまいります。


<2回目>

1.日本弁護士連合会が平成24年1月19日付で「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」というものを出しています。日弁連は、「監視カメラ」(防犯カメラ)について、「犯罪の発生を前提とせず,不特定多数人の肖像を,個人識別可能な精度で,連続して撮影し,録画ないし配信を行う「監視カメラ」の増加は,プライバシー権等の保障の観点から看過できない。」として、「道路や公園など,不特定かつ多数の者が自由に通行したり」する場所に監視カメラを設置する場合は,「犯罪多発地帯であること,または将来犯罪が発生する高度の蓋然性が認められる場所であること。」などの要件を求めています。また、「監視カメラが,法で定めた設置・運用基準に反していないかを監督する機関として,行政機関から独立した第三者機関を設置し,設置者に対する調査権限及び勧告・是正命令等の権限を付与すべきである。」ともしています。これらの日弁連の意見に関してはどのようにお考えでしょうか?見解をお聞かせください。

日弁連の意見書についてですが、本市としては、1問目で答弁いたしましたとおり、設置に当たり、犯罪の抑止、子どもの安全確保という目的の正当性とプライバシー保護との比較衡量等を総合的に判断しております。特に、個人情報保護は重要であると認識しており、高槻市個人情報保護条例に基づき、適正に管理してまいります。

2.防犯カメラの台数は「410台」ということですが、この根拠は何なのでしょうか?どのような基準で防犯カメラを配置するのでしょうか?児童数・生徒数に比例するような形で台数が決められるのでしょうか?犯罪の発生件数に応じて配分されるのでしょうか?警察の要望に応じた配置になるのでしょうか?詳細をお教えください。

⇒設置台数についてですが、1小学校区につき、平均10台の設置を考えております。場所については、大阪府警本部等から、犯罪の発生状況や犯罪抑止に効果的な場所などについて助言をいただき、選定してまいります。

3.テレビでは、犯罪の瞬間の映像なども放映されることがありますが、防犯カメラの映像を報道機関に提供するということもあるのでしょうか?

4.画像情報の提供は、「捜査機関など」を想定しているということですが、捜査機関以外にも想定しているものがあるのでしょうか?具体的にお答えください。

⇒映像の提供についてですが、報道機関への提供は想定しておりません。また、捜査機関以外には、司法機関を想定しております。

5.犯罪の抑止効果については、これまでの設置事例から、効果が在ると考えているとのことです。先ほどの日弁連の意見書には、防犯カメラの有用性についてもいくつかの研究事例が書かれてます。3つの事例を紹介します。
 ロンドンでは,2008年の1年間で,1000台の監視カメラによって,わずか1件の犯罪しか検挙できておらず,「監視カメラは多額の費用がかかるのに効果はほとんどない。膨大なプライバシー侵害を引き起こす反面,安全に関してはほとんど改善をもたらさない。ロンドン警察は,監視カメラの無効性に向き合おうとしていない。」とマスコミに指摘されたということです。
 2003年にキャンベル共同計画が、監視カメラによる犯罪減少効果に関する分析をしたのですが、「監視カメラの効果は,駐車場での自動車関係の犯罪に対しては防犯効果が認められるが,暴力犯罪については効果が認められない。」などとされています。
 警察庁の研究会・「警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会」は、川崎駅東口に設置した監視カメラの効果測定結果について、①刑法犯認知件数全体,ひったくり,自転車盗は、犯罪の発生する場所が監視カメラのないところへ移っているだけの可能性がある,②車両関連犯罪は周囲でも犯罪が減少する,③粗暴犯については影響が小さい、などとまとめているそうです。
 どうやら、防犯カメラは、駐車場や車両関連以外の犯罪に関しては、効果が薄いようです。
 高槻市でも、今年の1月19日に、高槻センター街で、防犯カメラがあるにもかかわらず、女子高生の顔などに劇物の「水酸化ナトリウム水溶液」がかけられるという事件がありました。犯人はサングラスやマスクやカツラで変装していたので、防犯カメラの映像では誰なのかを特定できませんでした。
 こうした研究結果や事例については、どのようにお考えでしょうか?見解をお聞かせください。

⇒効果についてですが、犯罪の抑止効果はあると考えております。
 これまでと同様、「こども見守り中」の旗の普及活動やセーフティボランティア活動等への支援を通じて、地域全体で子どもを見守る意識の高揚も図ってまいります。


<3回目>

1.映像の提供は、捜査機関や司法機関を想定しているということですが、たとえば逮捕された方が、「自分は冤罪である。高槻市教育委員会が設置した防犯カメラに自分の姿が映っているはずだから、それでアリバイが立証できるはずだ。」と主張している場合、その人の代理人である弁護士さんに、映像を開示したりということはあるのでしょうか?

⇒詳細な内容を確認した上で、判断することとなります。今後も引き続き、子どもの安全を守る取り組みを進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

あとは意見です。

防犯カメラを設置すれば、検察・警察の検挙には役立つ場合があると思います。しかし、先ほど申し上げた研究の結果によると、駐車場や車両関係の犯罪に対しては防犯効果があるけれども、他にはあまり効果がないようです。先ほど申し上げた、今年初めに高槻センター街で女子高生が被害を受けた事件は、皆さんもご記憶のことかと思います。

防犯カメラがあっても、犯罪行為をする人や、やるんです。防犯カメラがあるから安心だとは、決して言えないわけです。

防犯カメラの設置によって、子供達の安全・安心のための取り組みが軽減できるわけではなくて、今後も、継続して子供達の見守りに取り組んでいかなければならないし、防犯カメラのない場所では、これまで以上に犯罪の発生率が高まる可能性があるので、注意しなければならないわけです。

それらのことを、指摘して、質問を終わります。