高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

地方議会の役割とは?

議会の役割

先月、亀岡市議選に出たある候補の応援をして、あらためて「議会の役割」を考えさせられました。高槻市議会のサイトでは、

1.市民の意思を市政に反映させる役割
2.執行機関を監視し、公平、適正に行政が行われているかチェックするという役割



を担っているとされています。しかし、2の「行政をチェックする役割」を果たしているとは言い難い地方議会が多いようで。

ほぼ全ての議員が、「福祉を充実させろ」「保育所を増やせ」「防災対策をしっかり」などと要望するけれども(つまり1の役割)、行政の不正を指摘し正そうとする議員は少数派。これは、多くの議員市長与党だからでしょう。あるいは能力ややる気がないのか。改革を標榜しながら議会でほとんど質問しない新人議員もいますし。

私は何度も議会で行政等の違法行為を指摘してきました。しかし、大多数の議員は黙ったまま。違法行為を見逃すわけにはいかないので、住民訴訟で争えるものは提訴してきたのですが、裁判で行政に勝つのは非常に難しい(住民訴訟における住民の勝訴率は総務省の資料によると平成19~20年度で5.7%)。

住民側が勝てない理由はいくつかあるのですが、まず裁判所の姿勢。以前も書きましたが、裁判所は違法なものしか対象としないし、違法性の認定もかなりハードルが高い。その理由は、弁護士さんによると、裁判所は、行政の独立性をかなり尊重しているから。三権分立で互いに暴走をけん制しているといえども、それが過ぎれば独立性を損なってしまうから、ということのようです。

そして立証の難しさ。行政の行為に関する証拠は、ほとんどが役所の中にある。情報公開請求しても黒塗りにされて出てきたり、破棄されたり。

費用もかかります。住民が裁判を起こす場合の費用は、住民自身が負担しなければならない。住民が裁判に勝っても、取り戻したお金は市役所に入るだけで、住民には何のメリットもない。そもそも裁判を起こせるだけの知識をもつ人はほとんどいないと思いますが、裁判を起こせたとしても、弁護士のサポートがなければ裁判を戦うのは大変厳しい。勝訴すれば弁護士費用を行政に請求できる場合もありますが、それすら高槻市役所は汚いやり方で阻止しようとする

だから、なかなか住民側が勝てないわけですが、逆に言えば、行政が負ける場合というのは、違法性がそれだけ顕著であったということです。

でも、その違法行為については、そもそも「議会の役割」からすれば、議会が止めたり、償わせたりしなければならなかったはず。議員が知らないところで密かに行政が不正を働いていることもありますが、議会で取り上げられた問題については、議会として知らん顔をするのはおかしい。でも、素知らぬ顔のいかに多いことか。

議会で指摘された問題に関する住民訴訟で行政が敗訴するということは、行政だけでなく、その違法行為を承認・黙認した議会にも責任があるのです。違法行為に何ら異を唱えなかった議員らは、自らの役割を果たせなかったと、恥を知るべきだと思います。


議員が住民訴訟の原告になることを批判する人もいるようですが、議会のチェック機能が働いていない場合、司法の判断を仰ごうとするのは当然。行政をチェックするという「議会の役割」からすれば、議員として、行政の違法行為を見逃すことはできないはず。

「議員は議会の中でだけ質問しろ」と以前、今城塚古墳の工事の住民説明会で大声の野次を受けたことがあるのですが、後で訊くと、野次った人は、高槻市役所の元職員とのことでした。市長・市役所にとってみれば、裁判で負けるのは大変不名誉なことですから、「議員は住民訴訟をするな」と言いたくなるのかもしれません。

しかし、議員が住民訴訟をしてはいけないという法律はありません。それどころか、日本国憲法第三十二条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」とされているのですから、特に法律の専門家や護憲派の人達は、議員が住民訴訟をすることに、反対するのはおかしいはずです。

住民訴訟が起こされると、市役所側の弁護士を頼む費用が市に発生することを批判する人もいるようですが、だとしたら、もし、市役所側が負けた場合、その弁護士費用は、市長や市職員が個人的に負担すべきなのでしょうか?

私の場合は、少なくとも3億円以上は、住民訴訟によって、税金の無駄遣いをストップさせたり、取り戻したりしていますので、弁護士費用を優に超える財政的貢献を高槻市に対してしているはずです。


議会のチェック機能が働かない問題は、有権者の政治への関心が高まって選挙の投票率が上がったくらいで解決できるものではありません。この機能不全は、高槻市議会に限らず、全国的な問題であり、地方議会の制度・仕組みを根本的に変えなければ解決できないと私は考えています。

その解決策は、①投票を義務化し、②議員の半分を裁判員のように有権者から無作為で選ぶことだと、以前書きましたので、ご興味のある方はご覧いただきたいと思いますが、その実現はとても難しい。ですので、今後も、違法行為と考えられるものについては、まず議会で指摘し、それでも満足な対策がとられなければ、住民訴訟の要件を満たすものは裁判所に提起をするという、これまでのやり方を続けなければならないと考えています。