高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

夏休みは小学生の市バス運賃無料に潜む危険性

一昨日から6月議会が始まりました。今日は本会議で質疑があったのですが、あまり議案もなく、お昼過ぎに終了。私は2件について質問したのですが、その一つが市バスの条例改正案。夏休みの間だけ、中学生以上の旅客が同伴する小学生の運賃を5人まで無料とするというもの。

最初は賛成しようと思ったのですが、条例を読んでみると危険な抜け道があると考えられるので、現在のところは反対しようと考えています。

以下は今日のやりとりです。原稿とメモに基づいていますので、正確でない部分があることをご容赦ください。

■議案69号・高槻市自動車運送事業条例中一部改正について

<質問>
 中学生以上の乗客に同伴する小学生を5人まで無料にしたいということです。まず6点質問します。 
1.これによる乗客の増加については、どの程度を見込んでいるのでしょうか?
2.業務に支障が出ることはないのでしょうか?
3.収入や経費についてはどれだけを見込んでいるのでしょうか?
4.一般会計などからの補助金が出るのでしょうか?
5.条例議案概要には「夏季休業期間等」とありますが、具体的には、いつからいつまでの期間なのでしょうか?
6.なぜ小学生だけが対象なのでしょうか?中高生はなぜ対象にしなかったのでしょうか?幼児は2人まで無料ですが、なぜ幼児を5人まで無料にしないのでしょうか?
 それぞれお答えください。

<答  弁>
 北岡議員お尋ねの数点に渡るご質問にお答えいたします。
 まず、増客の見込みについてですが、今回の企画につきましては市営バスの将来顧客である、小学生に市営バス利用の機会を提供することで、将来の需要喚起と利用促進を図ることを目的としており、あらかじめ増客を見込むものではございません。
 業務への支障についてのご質問ですが、特に運行上の支障はないものと考えております。また、一般会計からの補助につきましては、いただく予定はございません。
 実施期間につきましては、市内公立小学校の夏休みを基本に設定しており、本年7月27日から8月24日までを予定するものです。
 無料化事業の対象についてですが、冒頭に申し上げたとおり、今回の事業に関しましては将来の需要喚起と利用促進を図ることを目的としていることから、小児運賃である小学生に対象を限定したところです。
 また、同伴幼児の人数拡大については、お客様に対する安全面への配慮から対象外としております。


<質問>

 さらに4点質問させていただきます。

1.増客の見込みについては、今回の企画により、市営バスの将来顧客である、小学生に市営バス利用の機会を提供することで、将来の需要喚起と利用促進を図ることを目的としているとのことですが、将来、どれだけの需要喚起ができるのでしょうか?具体的に、小学生の運賃無料企画で将来的な需要喚起ができたというような他の事例はあるのでしょうか?お答えください。

2.高槻市自動車運送事業条例第4条第1項には、「旅客が同伴する1歳未満の乳児及び1歳以上6歳未満の幼児の運賃は、無料とする。ただし、無料とする幼児は、旅客1人につき2人までとする。」との規定があります。小学生は、今回の企画で無料になるとしても、本来は小児運賃を支払って乗車するので、条例上、「旅客」という扱いになります。その旅客である小学生に同伴する2人までの幼児と、乳児・・・乳児は人数無制限なんですが・・・乳児は、これまた条例上、無料ということになるんですね。そうすると、今回の企画では、極端な例でいうと、1人の中学1年生が運賃を払えば、その中学生に同伴する5人の小学1年生と、さらにその中学生と小学生計6人に同伴する12人の幼児と、彼らが1人ずつ乳児を抱えていれば、計18人の乳児で、総合計36人が、条例上、1人分の運賃でバスに乗ることができるということになります。この理解は正しいでしょうか?お答えください。

3.先ほど述べたようなことが条例上可能なのであれば、もしかすると、そのような大人数で子供達がバスに乗ってくるかもしれません。こういうことが起きた場合には、どのように対応されるのでしょうか?お答えください。

4.今回の企画で、はじめてバスに乗る低学年の小学生がいるかもしれません。タダでバスに乗れるということで、はしゃぐ子もいるかもしれません。かたや、運転手さんの中には、乗客に暴言を吐いたり、バスで市民の方の車を追いかけ回して因縁をつけたりした職員もいますが、もし小学生に対してそういうことがあれば、将来の需要喚起どころか、幼い心にトラウマを植え付けてしまうかもしれません。今回の企画の実施にあたって、小学生に対してどのように丁寧に接客するのかなどについて、乗務員にはどのような指導・研修をするのでしょうか?お答えください。


<答  弁>

 北岡議員お尋ねの数点に渡るご質問にお答えいたします。
 まず、1点目の将来需要の見込みについてですが、今回の企画につきましては、同伴無料対象である小学生に、実際に市営バスを利用していただくことで、より親しみを感じていただくための取組でございます。
 したがって本企画に関しましては、事業単体で将来の数値目標としていくらの増客を見込むというものではございません。
 なお、他市におきましても、京都市・神戸市などで同様の事業を実施しているところです。
 2点目3点目の本制度と既存制度との併用についてですが、ご指摘のような利用に関しましては、現実的にはありえない想定ではないかと思料いたします。
 4点目の乗務員の接客面でのお尋ねですが、6月半ばからに実施予定の乗務員研修において、十分な制度の説明と接客の研修を実施いたします。
 なお、北岡議員がいうような職員などいません。


<意見>

 そんな職員はいないと言いますが、新聞でも報道されたとおり、お客様に「死ね」と暴言を吐いた職員もいますし、他にもひどいことをした職員がいると聞いていますので、部長の答弁はおかしいということを指摘しておきます。
 今回の企画は、小学生に市バスを利用してもらうことで、より親しみを感じていただくための取組だから、将来の数値目標としていくらの増客を見込むというものではないというご答弁です。しかし、1回目の答弁では、「将来の需要喚起と利用促進を図ることを目的」としているということでした。答弁の内容が矛盾しているのではないでしょうか?「将来の需要喚起」というのなら、大まかでも何らかの見込みがないとおかしいのではないでしょうか?
 私は小学生を無料にしても、そんなに将来の需要喚起につながるとは思えません。中学生・高校生・大学生になれば、自転車に乗る、バイクに乗る、自動車に乗る、そういった経験をするでしょうし、そうすると、市バスは遅いとか、渋滞に巻き込まれるとますます遅くなるとか、しょっちゅう時間に遅れてやってくるとか、そういうもどかしさ・デメリットも感じるようになると思います。
 本当に、需要喚起したいのであれば、携帯電話の会社も、つながりやすさ1位だとか、そういうテレビコマーシャルを流していますけれども、市バスも、徒歩・自転車・バイク・自動車と比較して、経済性・安全性・環境への影響などの面でどれだけ優位なのかを市民に分かりやすく伝えるほうがよいのではないかと思います。
 次に、子供達が多数バスに乗り込んでくる可能性についてです。条例上、1人分の運賃で、極例として、中学1年生1人と小学1年生5人、幼児12人、乳児18人が乗れるようになることに関して質問したところ、ご答弁では、現実的にはありえない想定だというお答えしかありませんでした。一応念のために申しておきますが、こういうことが現実的に可能なのか、事前に交通部に確認したところ、可能であるといったような答えをいただいております。
 1回目の質問で、幼児5人までを無料にしないのかと尋ねたところ、「お客様に対する安全面への配慮から対象外」とするという答弁でした。つまり、中学生以上の方が1人付いていても、幼児5人がバスに乗るのは安全ではない、危険だということです。
 けれども、この条例案が可決されると、先ほどの極例のようなことが、条例上可能になります。現実的にはありえないだろうなと思っていても、起きないとは言い切れません。
 もしこういうことが起きても、現場での運用で何とかすると交通部の幹部の方はおっしゃっていたんですが、議会で承認された条例で認められている権利を、一運転士職員が制限した場合、問題にならないのでしょうか?こういう抜け道のようなことを事前に想定し、審議をして、あらためさせるのが、議会・議員の役割であり務めであると思うのですが、議員の皆さん、いかがでしょうか?
 私は、小学生の運賃を夏休みの間だけ無料にして、バスの乗車体験をしてもらおうという趣旨には賛成ですが、こういう危険な抜け道を許すような条例改正案は、安全面で欠陥があるといわざるをえませんので、反対します。
 条例改正をするのであれば、小学生が無料で乗車する場合は、幼児を同伴できるのは中学生以上に限るとか、乳児も人数に制限を設けるとかするべきだと思います。
 以上です。