高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

給与を支給できないはずの自己啓発等休業に例外規定を設ける高槻市

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日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は、「国会の質問なんかどうでもいい」「(野党が)いくら言っても決まっちゃう。」といった発言をしたとのことですが、私も同じようなことを感じることがよくあります。いくら根拠を示してその議案は違法だと議会で指摘しても、あっさり賛成多数で可決されてしまう与野党相乗り議会の現状に、唖然とすることもしばしば。議会で質問しても、あいまいではぐらかしたような答弁が返ってくることが多いですし、こんなやりとりに意味があるのかと、無力感を覚えることもしょっちゅうです。

3月議会でもそういったことが何回かあったのですが、今日は「高槻市職員の自己啓発等休業に関する条例」について。総務消防委員会で違法ではないかと指摘したのですが、本会議で反対は私一人でした。

この議案は、資料によると・・・

 職員に自己啓発及び国際協力の機会を提供することを目的として、地方公務員法の規定に基づき、職員の自発的な大学等の課程の履修又は国際貢献活動を可能とするための休業(以下「自己啓発等休業」という。)制度を実施するため、必要な事項を次のとおり定める。


・・・とのことでした。

国際貢献活動については・・・

(4) 自己啓発等休業の対象となる奉仕活動は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が行う派遣業務の目的となる開発途上地域における奉仕活動とする。(第5条関係)


・・・とJICAの派遣で発展途上国に行く場合に限定されています。

地方公務員法の規定に基づき」ということなんですが、どんな規定が法律にあるかというと・・・

地方公務員法
第二十六条の五(自己啓発等休業)
1  任命権者は、職員・・・が申請した場合において、公務の運営に支障がなく、かつ、当該職員の公務に関する能力の向上に資すると認めるときは、条例で定めるところにより、当該職員が、三年を超えない範囲内において条例で定める期間、大学等課程の履修・・・又は国際貢献活動・・・のための休業・・・をすることを承認することができる。 
2 (略)
3  自己啓発等休業をしている期間については、給与を支給しない。


・・・ということで、条例案とほぼ同じ趣旨が書かれています。

ところが、高槻市は、給与に関しては例外規定を設けたのです。

法律では、給与は支給してはならないと定められているのですから、当然、条例でも、給与を支給しないとしなければなりません。「給与」という言葉は、給料と手当という意味で、この手当には退職手当も含まれています。しかし、高槻市は・・・

(9) 自己啓発等休業をした職員に係る退職手当の算定については、自己啓発等休業の期間の全部(公務の能率的な運営に特に資するものと認められることその他の規則で定める場合は、2分の1)を在職期間から除算することとする。(第11条関係)


・・・として、原則は退職手当の算定期間から除くとしながらも、「公務の能率的な運営に特に資するものと認められることその他の規則で定める場合は、2分の1」の期間を算定期間に含めるというのです。

これはいったい何なのかと質問したのですが、「国家公務員に準じた形」だというのです。それ以上の具体的な答弁はありませんでした。

しかし、地方公務員法で定められている以上は、退職手当を含め、いかなる給与も支給してはならないはずです。何故こんな例外規定を設けるのか。

しかも、JICAの規則を調べてみると・・・

○専門家等として派遣される独立行政法人国際協力機構職員の身分等の取扱いに関する規程
(退職金ポイントの計算)
第8条 派遣職員又は派遣職員であった職員に関する独立行政法人国際協力機構職員退職手当規程・・・の適用については、・・・その派遣期間につき人事担当理事が別に定める退職金ポイントを付与する。

○独立行政法人国際協力機構職員退職手当規程
(退職金の支給制限)
第7条 退職金は、職員が次の各号の一に該当する場合においては、支給しない。
(1) 勤続6月未満で退職したとき。


・・・つまり、6ヶ月以上勤務した場合には、退職金がもらえると考えられますので、退職金の二重取りということも起こりえます。

そもそも発展途上国での活動に、この休業を認めていいのか・・・条例案に記載された条件の中に、「職員の公務に関する能力の向上に資すると認めるとき」というのがあるのですが、「開発途上地域における奉仕活動」において「当該職員の公務に関する能力の向上に資する」場合というのは、具体的には、どのようなものがあるかと、委員会で質問したところ、

 開発途上地域における奉仕活動を通じて、全体の奉仕者としての使命感をより一層自覚することに役立つものと考えております。



・・・といった答弁でした。

「全体の奉仕者としての使命感をより一層自覚する」ことと、「職員の公務に関する能力の向上に資する」ということとは、直接関係はないはずです。まあ、公文書を改ざん・破棄して不正の隠蔽を謀ったり、公金で厚遇を受けていたりした職員の方には、行ってもらったほうがいいかもしれませんけどね。

全体の奉仕者としての使命感に目覚めた方には、是非、この休業期間中の退職手当については、辞退していただきたいものです。

以下は総務消防委員会でのやりとりです。若干実際の発言と異なっている部分があることをご了承ください。

★議案第17号 高槻市職員の自己啓発等休業に関する条例制定について

<質問1>
 資料によりますと、職員の方が、大学等の課程を履修したり、国際貢献活動をしたりする場合には、3年までの自己啓発等休業を取得することができるように条例を制定したいとのことです。
 国際貢献活動というのは、「独立行政法人国際協力機構(通称:JICA)が行う派遣業務の目的となる開発途上地域における奉仕活動」と定義されています。
 条例案に記載されたいくつかある条件の中に、「公務の運営に支障がなく、かつ、当該職員の公務に関する能力の向上に資すると認めるとき」というのがあるのですが、「開発途上地域における奉仕活動」において「当該職員の公務に関する能力の向上に資する」場合というのは、具体的には、どのようなものがあるのでしょうか?

<答弁>
 開発途上地域における奉仕活動を通じて、全体の奉仕者としての使命感をより一層自覚することに役立つものと考えております。具体的には、個々の事案に応じて判断することになるものと考えております。

<質問2>
 「全体の奉仕者としての使命感をより一層自覚することに役立つ」というご答弁ですが、それは「当該職員の公務に関する能力の向上に資する」というのとは違うんじゃないでしょうか。それはちょっとおいて、さらに2点質問します。
(1)地方公務員法26条の5第1項では、単に、「国際協力の促進に資する外国における奉仕活動」としかされていないのですが、なぜ高槻市では、「開発途上地域における奉仕活動」としようとするのでしょうか?お答え下さい。
(2)地方公務員法26条の5第3項では、「自己啓発等休業をしている期間については、給与を支給しない。」と定められています。「給与」とは、給料と手当のことですよね。この手当の中には退職手当も含まれているはずです。
 本条例案では、「公務の能率的な運営に特に資するものと認められることその他の規則で定める場合」は、自己啓発等休業の期間の2分の1を退職手当の算定期間に含めるとされています。
 法律上、「自己啓発等休業をしている期間については、給与を支給しない。」となっている以上は、退職手当の期間算入も含めて、実質的に給与を支給することは、許されないのではないのでしょうか?お答え下さい。
 また、この「公務の能率的な運営に特に資するものと認められることその他の規則で定める場合」とありますが、この「特に資するもの」というのは具体的にどういうものなのか、「その他規則」とはどういったものなのかについても、それぞれお答え下さい。

<答弁>
(1)1点目の「開発途上地域における奉仕活動」としておりますのは、国家公務員に準じて定めているものでございます。
(2)2点目の質問についてですが、自己啓発等休業期間の退職手当の算定期間の取り扱いについては、国家公務員に準じた形となっております。また、「公務の能率的な運営に特に資するものと認められることその他の規則で定める場合」に関してでございますが、国家公務員に準じて判断していきたいと考えています。

<質問3>
 「国家公務員に準じて定めている」、「国家公務員に準じた形」、「国家公務員に準じて判断」ということですが、具体的にはどういう定めや形や判断なのか、お答えください。

<答弁要旨>
 国家公務員に準じるというのは、人事規則や国の通知に準じるということです。

<質問4>
 「国家公務員に準じて定めている」「人事規則や国の通知に準じたものだ」ということなんですが、地方公務員法という法律に、「自己啓発等休業をしている期間については、給与を支給しない。」と定められている以上は、退職手当に係る期間算入も含めて、実質的に給与を支給することは、許されないと考えられます。
 また、「公務の能率的な運営に特に資するものと認められることその他の規則で定める場合」とありますが、この例外規定は、具体的にどういったものなのか、どういった規則なのか、どういった場合に適用されるのかについて、明確な答弁はありませんでした。
 「独立行政法人国際協力機構(通称:JICA)の「専門家等として派遣される独立行政法人国際協力機構職員の身分等の取扱いに関する規程」8条には、「派遣職員又は派遣職員であった職員に関する・・・退職手当規程・・・の適用については・・・、その派遣期間につき人事担当理事が別に定める退職金ポイントを付与する。」とあります。つまり、退職金がもらえるかもしれない。高槻市からも、この期間について退職手当が出るとすると、退職金の二重取りになることもありえるのではないでしょうか。
 開発途上国で奉仕活動をすると、「全体の奉仕者としての使命感をより一層自覚することに役立つ」ということなので、公文書を改ざんや破棄したり、公金で厚遇を受けていたりした職員の方には行ってもらってもいいかもしれないとは思いますが、先ほど述べましたとおり、それは「職員の公務に関する能力の向上に資する」というのとは直接的には関係がないと思います。
 条例案の趣旨には賛成なんですが、こういった理由から、この議案には反対します。