高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【裏金訴訟】敗訴 【生活保護費不正支出事件】懲役3年の実刑判決

本日、裏金訴訟の判決言渡しがありましたが、残念ながら敗訴でした。

また、生活保護費不正支出事件の判決言渡しも同じ時間帯にあったのですが、元課長に対して懲役3年の実刑判決が下されました。

★生活保護費:不正支出の高槻市元職員に懲役3年 大阪地裁
毎日新聞 2013年02月07日 18時50分(最終更新 02月07日 19時17分)


 生活保護費を不正支出したとして、詐欺、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた大阪府高槻市元副主幹の近藤正嗣被告(62)に対し、大阪地裁は7日、懲役3年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡した。西田真基裁判長は「職務上の地位を利用した計画的な犯行で、被害金額も高額で市民の信頼喪失は著しい」と述べた。

 近藤被告は不正に支出した金について「窓口で対応に苦慮する相手に渡す金などに使った。他の職員も認めていた。個人的に使っていない」などと主張した。しかし判決は、他の職員が不正支出に気付くことは困難だった上、私的用途への流用もあったと指摘し、被告の主張を退けた。(後略)



反省の態度もなく情状酌量の余地もないというふうに裁判長は言っていたとのことです。即日控訴したということですから、高裁で争われることになりますが、私的流用がなかったことを裁判官に納得させるような何かがなければ、控訴審でも厳しい判決が下されるのではないでしょうか。

さて、裏金訴訟の判決ですが、原資が公金であることを裁判所は勘案してくれなかったような感じです。訴状に書いたのですが、

被告は、読売新聞の取材に対し、解散時に本件裏金を交通部に返還すべきだったと答えた(甲3)。また、産経新聞の取材に対して、本件裏金を返還しなかった理由について「正式な予算に組み込んでしまうと許認可などが面倒で、喫煙施設などは不要として断られてしまう可能性もあったため」と答えている(甲4)。



返還すべきだったのに返さず、喫煙施設やマッサージチェアなど不要なものを正式な手続きを経ずに購入していたわけです。

その点について、裁判所も、「本件各物件の設置につき,高槻市当局から本件各施設の使用許可等の占有権原設定手続は執られていない」「高槻市当局から占有権原の設定等を受けていないにもかかわらず,高槻市の所有する本件各施設に設置されているものと認められる」「高槻市は,本件各物件のうち高槻市の所有に属していないものについては,本件各物件の占有者たる福祉会に対して本件各施設のうち本件各物件が設置されている部分の明渡請求権を有する」と認定しています。

しかし、「不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得することとされているところ(民法242条本文)・・・喫煙施設,喫煙施設上屋及びテント上屋については,いずれも営業所あるいは休憩所の外壁又は非常階段に接着して固定されており・・・これらの施設等が接着する営業所又は休憩所と構造上独立したものとは認められず・・・高槻市はこれらにつき所有権を取得しており,福祉会に対する明渡請求権を有しない」として、これらは既に高槻市のものであると認定しました。

また、マッサージチェアなどについては、「・・・現に交通部職員の福利厚生に寄与しているものといえる。かかる本件各物件の設置に至る経緯やその使用実態に加え,本件各物件が本件各施設において占める面積はさほど大きいものとはいえず,本件各施設の利用に具体的な支障を来しているとも認められないこと(乙3)に照らせば,歴代総務課長が本件各物件の購入を決定したことや,本件各施設の管理権者として福祉会に対し明渡請求権の行使をしなかったことが違法であるとまでは認められない」としました。

「面積はさほど大きいものとはいえず」ということですが、マッサージチェアや冷蔵庫は結構大きいと思うんですけどね・・・



こういう判断をされてしまうと、互助団体を解散した際に生じた残余金が、たとえ原資が公金であっても、やりたい放題にできるということになりかねません。

しかし、世間的な感覚ではおかしいものでも、住民訴訟では、明確に法律に反したものしか「違法」と裁判所は認定してくれません。大阪地裁は証人尋問までしてくれましたが、これが住民訴訟の限界かなと思います。

また、この裏金が作られたのは平成10年で、10年以上の前のこと。当時の管理者も事故死しており、公金分の返還を求めるのも厳しいのではないかとおっしゃる弁護士の方もおられましたので、この責任を追及するためには不法占拠の違法性を問うしかないという苦しい部分もありました。

判決言渡し後、弁護士さんや他の原告の方と話し合ったのですが、控訴はしないことにしました。

喫煙施設などの面積の大きいものが既に高槻市のものであると認定されましたので、それ以外について争うとしても、金額的に小さいものになる。マッサージチェア等についても高槻市に明渡請求権があるとされたのだから、トップがまともなら排除させるであろうと。

敗訴という残念な形ですが、交通部の裏金の問題は、これで終了です。

以下は判決文のうち大阪地方裁判所の判断の部分です(個人名は削除しています)。

第3 争点に対する判断

1 認定事実

 前記前提事実に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。

(1)福祉会について(乙6)

ア 福祉会は,交通部職員の相互共済及び福祉増進を図り,進んで地方公営企業の本旨の実現に協力することを目的として昭和38年9月に設置された,交通部職員を会員とする権利能力なき社団である。
イ 福祉会は,上記アの目的を達成するため,共済給付及び福利厚生事業等を行うこととされているところ,福利厚生事業の具体的内容として,会員の利用に供する福利厚生施設の設置及び運営や会員の生活に必要な物資の購買の斡旋等が定められている。
ウ 福祉会は平成10年3月20日に総会を開催し,同月31日をもって福祉会を解散すること,解散後の残余資金の運用については,交通部職員の文化・情報活動や健康管理に資するため,図書及び健康器具の購入とその維持管理並びにその他福利厚生に関する事柄に使用すること,総務課長の職にある個人及び高槻市交通労働組合書記長が残余資金の運用機関としてその管理をしていくこと,庶務係長の職にある個人及び書記次長が運用執行者として残余資金による物品購入等の具体的執行に当たることをそれぞれ決議した。なお,福祉会の解散の理由は,高槻市職員全体で構成する職員厚生会と重複していること等によるものであった。(甲4,5,乙7,証人)。

(2)本件各物件の購入手続
ア 総務課長の職にあった個人は,福祉会の残余資金を,福祉会の肩書きを付した個人名の預金口座で管理していた(証人)。
イ 残余資金による物品購入等は,高槻市交通労働組合が年度ごとに交通部職員からの要望を集約した上,総務課長に対して残余資金により購入する物品に関する提案を行い,総務課長の職にあった個人において,施設管理に支障が生じないかあるいは当該提案が交通部職員の福利厚生に適うものかなどの観点から当該提案を検討した上で支出の決定をし,庶務係長の職にあった個人あるいは書記次長が具体的な支出手続や設置行為を執行するという方法で行われていた(証人)。
ウ 本件各物件の設置につき,高槻市当局から本件各施設の使用許可等の占有権原設定手続は執られていない(証人,弁論の全趣旨)。

(3)喫煙施設,テント上屋の状況等(乙3)
ア 芝生営業所の南側風除喫煙室・換気扇(別紙1①)は,同営業所1階の外壁に沿って設置されているところ,その形状は,外壁の外側にある灰皿等が設置された空間を屋根及び周壁で囲うものであって,支柱は外壁にビス止めされるなどの方法によって接着しており,周壁の中央部に換気扇が設置されている。
イ 芝生営業所非常階段にあるテント上屋(別紙1④⑤)は,同営業所の外壁沿いに設置されている非常階段につき,1階及び2階部分の上部に設置されているところ,その形状は,上部にテントが張られており,周壁は存しないものであって,骨格部分は同営業所の外壁又は非常階段の支柱にビス止めされるなどの方法で固定されている。
ウ 寺谷町休憩所の喫煙施設上屋(別紙1⑩)は,同休憩所の外壁に沿って設置されているところ,その形状は,上部にテントが張られており,周壁は存しないものであって,骨格部分は休憩所の外壁に接着して固定されており,その支柱は休憩所敷地のアスファルト塗装部分にコンクリートで固定されている。
エ ジェイアール高槻西滞留休憩所の喫煙施設(別紙1⑪)は,同休憩所の外壁に沿って設置されているところ,その形状は,外壁の外側にある空間を屋根及び周壁の一部で囲うものであって(ただし,周壁については,外壁と並行する部分についてのみ存在する。),支柱は外壁に固定されているほか,休憩所敷地のアスファルト塗装部分にコンクリートで固定されている。
オ 弁天駐車場休憩所の喫煙施設(別紙1⑫)は,同休憩所の外壁に沿って設置されているところ,その形状は,外壁の外側にある灰皿等が設置された空間を屋根及び周壁で囲うものであって,支柱は外壁に固定されているほか,休憩所敷地にビス止めされている。

2 争点(1)(本件訴えの適法性(本案前の争点))について

(1)地方公共団体の所有する不動産及び地方公共団体が第三者に対して有する損害賠償債権はいずれも地方公共団体の財産であり(地方自治法237条1項,238条1項1号,240条1項),その管理を怠っている場合には,財産の管理を怠るものとして(同法242条1項),当該怠る事実の違法確認又は怠る事実に係る相手方に損害賠償の請求をすることを求める住民訴訟を提起することが可能である(同法242条の2第1項3号,4号)。
 原告らは,本件訴えにおいて,本件各施設につき,本件各物件の設置主体である福祉会に対する明渡請求を怠っていることの違法確認を求めるとともに,歴代総務課長及び歴代管理者を損害賠償債権の管理を怠る事実に係る相手方として当該損害賠償請求の義務付けを求めているのであるから,本件訴えはいずれも財務会計上の行為を対象とするものとして,適法である。

(2)被告は,歴代総務課長による行政財産の管理行為は,行政財産の効率的利用を目的とする行為であってその財産的価値に着目してその維持等を図ることを直接の目的とするものではないから,財務会計行為に当たらない旨主張するが,原告らは本件各施設につき妨害排除請求をしないという管理態様の当否を問題としているのであって,高槻市の財産につきその財産的価値の維持等を問題としているものといえるから,被告の上記主張は失当である。

3 争点(2)(高槻市の福祉会に対する明渡請求権の存否)について

(1)前記前提事実(3)並びに前記認定事実(1)及び(2)によれば,本件各物件は,交通部職員の福利厚生を図るとの目的で,福祉会の残余資金によって購入され,高槻市当局から占有権原の設定等を受けていないにもかかわらず,高槻市の所有する本件各施設に設置されているものと認められるところ,かかる事実関係によれば,高槻市は,本件各物件のうち高槻市の所有に属していないものについては,本件各物件の占有者たる福祉会に対して本件各施設のうち本件各物件が設置されている部分の明渡請求権を有するというべきである(なお,上記のとおり,福祉会は平成10年3月31日をもって解散する旨の決議をしているが,福祉会の所有に属する本件各物件の処分が未了である以上,福祉会はなおその限度で存続していると認めるのが相当である。)。

(2)被告は,本件各物件が本件各施設の使用目的に沿って利用されていることや,本件各物件について所有権又は占有権を主張する者がいないことをもって,不法占有の事実は存在しない旨主張するが,本件各物件が本件各施設に無権原で設置されている以上,その利用態様や積極的な権利主張をする者の有無に関係なく,高槻市には本件各物件の設置者たる福祉会に対する明渡請求権が存するというべきであるから,被告の主張は失当である(なお,福祉会が占有権原を有することを認めるに足りる主張立証はされていない。)。

(3)付合について

ア 被告は,本件各物件のうち喫煙施設及びテント上屋(別紙1の①④⑤,⑩ないし⑫)については,本件各施設のうちこれらが設置されている不動産に付合しており,高槻市の所有に属している旨主張する。
 不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得することとされているところ(民法242条本文),ここでいう付合の成否については,不動産と当該物との接着の程度及び当該物の構造,利用方法を考察し,当該物が構造上の独立性を欠き,これが接着する不動産と一体となって利用され,取引されるべき状態にあるか否かという観点から判断すべきである(最高裁昭和42年(オ)第585号同43年6月13日第一小法廷判決・民集22巻6号1183頁参照)。原告らは,殴損せずに分離することが容易であるか否かという観点のみから付合の成否を判断すべきかのような主張をするが,上記説示に照らし採用できない。

イ これを本件についてみるに,前記認定事実(3)によれば,喫煙施設,喫煙施設上屋及びテント上屋については,いずれも営業所あるいは休憩所の外壁又は非常階段に接着して固定されており,営業所あるいは休憩所を利用する交通部職員らが風雨を避けて喫煙するための場所として設置されているものであって,これらの施設等が接着する営業所又は休憩所と構造上独立したものとは認められず,また,別個に利用され,取引の対象とされるようなものとも認められない。
 したがって,本件各物件のうち,別紙1の①④⑤,⑩ないし⑫の各喫煙施設等は,いずれも高槻市が所有する本件各施設に付合しているものと評価できるから,高槻市はこれらにつき所有権を取得しており,福祉会に対する明渡請求権を有しないというべきである。

(4)以上によれば,高槻市は,本件各物件のうち別紙1の①④⑤,⑩ないし⑫の各喫煙施設等を除いたものについて,福祉会に対し,本件各施設のうちこれらが設置されている部分に係る明渡請求権を有するものと認められる。

4 争点(3)(歴代総務課長が高槻市に対して不法行為責任又は財産管理を怠ったことに基づく債務不履行責任を負うか)について

 原告らは,歴代総務課長につき,本件各物件の購入手続を行ったことが高槻市に対する不法行為に該当し,また,高槻市の所有する本件各施設につき福祉会に対する明渡請求権を行使しなかったことが財産管理を怠る事実に該当するから,歴代総務課長は高槻市に対してこれらの行為によって生じた損害の賠償義務を負う旨主張する。
 そこで検討するに,本件各物件は,福祉会の総会決議において,残余資金を福祉会の会員たる交通部職員の福利厚生のために使用することとされたことを受け,本件各施設につき本件各物件を設置することについての目的外使用許可を行う専決権を有していた歴代総務課長(前記前提事実(2)ウ)が,総務課長の職務としてではなく個人としてではあるが,福祉会の解散時に決定された残余資金の管理者としての立場から,交通部職員らによる要望(具体的には,同要望を集約した高槻市交通労働組合の提案)に基づき,交通部職員の福利厚生に資するか否かという観点から検討した上で購入を決定したものであって(前記認定事実(2)イ),同決定を受けて庶務係長の職にあった個人又は書記次長によって購入されて本件各施設に設置され,実際に交通部職員により利用されていたものであり(前記前提事実(3),前記認定事実(2)),現に交通部職員の福利厚生に寄与しているものといえる。かかる本件各物件の設置に至る経緯やその使用実態に加え,本件各物件が本件各施設において占める面積はさほど大きいものとはいえず,本件各施設の利用に具体的な支障を来たしているとも認められないこと(乙3)に照らせば,歴代総務課長が本件各物件の購入を決定したことや,本件各施設の管理権者として福祉会に対し明渡請求権の行使をしなかったことが違法であるとまでは認められないと解するのが相当である。
 したがって,歴代総務課長は高槻市に対する損害賠償義務を負わないから,歴代総務課長に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実に係る原告らの主張は理由がない。

5 争点(4)(歴代管理者が高槻市に対し歴代総務課長に対する指揮監督義務違反に基づく債務不履行責任を負うか)について

 原告らは,歴代管理者は歴代総務課長による本件各施設の管理に係る指揮監督義務違反に基づく責任を負う旨主張するが,歴代総務課長が違法に本件各施設の管理を怠っていたとは認められないことは上記4で説示したとおりであるから、原告らの主張はその前提を欠くものとして失当である。

6 明渡請求権の行使を怠る事実の違法確認請求について

 歴代総務課長が福祉会に対して本件各施設の明渡請求権を行使しないことが違法であるとは認められないことは上記4で説示したとおりであるから,福祉会に対する明渡請求権の行使を怠っていることの違法確認を求める原告らの請求は理由がない。

7 結論
 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。