高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

ある不正請求事件について2


本日、産経新聞が報じましたが、出張でマッサージを行っている高槻市内の事業者が、国民健康保険後期高齢者医療保険の療養費を不正請求していたことが分かりました。マッサージの回数を水増しするなどして虚偽の請求をしていたのです。

【産経新聞】マッサージ業者が高齢者保険不正請求 代理受領を悪用
2011.7.20 14:02

 大阪府高槻市内で公的医療保険を用いてマッサージを行っている事業者が、後期高齢者医療保険などの療養費を不正請求していたことが20日、大阪府後期高齢者医療広域連合などへの取材で分かった。同連合は、不正が確認された時期に事業者が受け取った約1700万円全額を返還請求する方針を固めた。
(中略)
 また、国民健康保険についても不正請求していた疑いがあるとして、高槻市も患者の自宅を訪問し領収書を確認するなどして調査を進めている。産経新聞の取材に市の国民健康保険課は「6月に市民からの通報があり、発覚した。事業者の代表や従業員から話を聞き、事実確認を急いでいる」と話している。



柔道整復師の不正請求事件はかなり報道されていますが、マッサージの事件は珍しいのではないかと思います。

記事では、高槻市は今年6月に市民から相談を受けたとありますが、実はそうではありません。昨年の冬に、市民の方は市に相談をしていたのです。

ところが、市の職員は、当初、「これは大阪府の管轄だから府に相談しなさい」と間違ったことを言ったそうです。市民の方がせっかく不正請求について教えてくれたのに、高槻市役所は嘘を教えて、その方を振り回してしまったわけです。

その後も、担当課でありながら、専門的な知識が欠如していたために、その市民の方にご迷惑をおかけしたということがありました。私はそういった市職員の姿を目の当たりにしたのですが、高槻市の議員として、大変情けない気持ちになりました。

私はこの件を7月15日の議会の一般質問で取り上げました。

<質問1>

(1)市は、国民健康保険課の職員の不手際については反省しているのでしょうか?市民の方にお詫びをする考えはないのでしょうか? 

(2)大阪府後期高齢者医療広域連合と高槻市国民健康保険課の職員の方が、先日、患者さんのお宅を訪問して、被害状況の確認と、療養費の請求を撤回してもらうということをしていましたが、被害全体については把握できたのでしょうか?被害額はどれだけなのでしょうか? 

(3)その事業者は、治療の記録で、レセプト・保険請求の根拠である「施術録」を、事務所の引っ越しの際に廃棄したと言っているそうですが、そういうことは許されるのでしょうか?違法ではないのでしょうか?法令上、罰則はないのでしょうか? 

(4)この事件は、明らかに詐欺だと思うのですが、市は告訴しないのでしょうか? 

(5)私は、担当課の職員の方に、濱田市長は元検察官だから、こういうことには一番詳しいはずだし、訊いてみてはどうか?と言いましたし、市民の方も、秘書課に、濱田市長に伝えてほしいと、この事件について訴えられたそうですが、濱田市長はこの事件についてお聞きになられたでしょうか?また、この事件について、どうお考えでしょうか? 

それぞれお答えください。



<答弁1>

 市民の方に対する説明での不十分な点については、お詫びし適切な対応に努めているところでございます。 

 状況の把握等についてですが、療養費の請求において不適切な処理の疑いがある事案として、事実確認に向けた調査を行っているものでございます。調査の結果、関係機関等と連携のうえ、適切に対応してまいります。報告につきましては、必要な取り組みの中で対応してまいります。 

 施術録の保管についてですが、施術録につきましては、厚生労働省の通知にもとづき、5年保管することとされており、罰則については、同通知には記載はございません。



このとおりの、まさにお役所答弁。具体的なものは何もありません。

2回目の質問では、以下のとおり、私は具体的な対策を提言したのですが・・・

<質問2>

(1)最近、和歌山県でも、鍼灸師による同じような不正請求の事件があり、和歌山県後期高齢者医療広域連合は、その鍼灸師に対して、保険適用を認めない、代理受領による委任払いの取り扱いを中止する、としました。高槻市もこれと同じ処分を、問題を起こした事業者に下すことはできないのでしょうか? 

(2)高槻市では、事業者に対して、どのような監査を行ってきたのでしょうか?定期監査や抜き打ち監査はしてきたのでしょうか?今後はどのように監査を行う方針なのでしょうか? 

(3)今後、こうしたことが起きないよう、再発防止策を講じる必要があります。今回分かった問題点を私なりに整理してみますと・・・ 

・まず、療養費が「医療費のお知らせ」には記載されていないので、患者さん自身がチェックできなかった。
・また、マッサージ師さんは視覚障害者の方が多いので、マッサージ師さんも不正に気付きにくかった。
・そして、高槻市役所の担当課の職員の能力や意識が低くて、不正請求を見抜けなかった、見抜こうとしなかったのかもしれません。

大まかに言うと、この3点ではないかと思います。 

特に、高槻市役所の対応にはかなり不備がありました。担当課の職員に、高槻市が保険者として、住民の皆さんに納めていただい保険料から療養費を払っているという意識があれば、大阪府の所管だとか、そんな間違いはしなかったはずです。あまりにも責任感が欠如していたといわざるをえません。 

さて、再発防止策についてです。いろいろ考えられると思いますが・・・

・まず、「医療費のお知らせ」には、療養費についても記載する。
・療養費支給申請書に不審点がないか、今回の事件で学んだことを活かし、チェックをしっかりと行う。
・療養費支給申請書に医師の再同意があるとされている場合には、医師に確認をする。
・事業者に対して抜き打ち監査を実施し、施術録や日報と申請書の内容を照合する。
・そして、施術録に不備があれば、患者さんにわざわざ取下書を書いていただくまでもなく、直ちに市が独自に療養費の返還請求をする。

そういったことを今後やるべきだと私は考えますが、市の見解をお聞かせ下さい。



<答弁2>

 本市の対応についてですが、現時点では、事実確認のための調査中であり、調査の結果、療養費の請求が適切であるかどうか確認したうえで、まずは過誤請求にもとづく返還を求め、その請求が明らかに違法かつ不当なものである場合には、しかるべき適切な対応をしてまいります。 

 監査につきましては、法的に権限が付与されておりませんので、よろしくお願いします。 

 再発防止についてですが、国民健康保険制度が複雑化している中にあって、保険者としてどのようなことができるか、他の保険者の手法を参考にしながら、今後はより慎重を期した対応をしてまいります。 



高槻市役所の担当職員は、自分たちの所管なのに府の所管と間違えたり、療養費支給申請書がどこにあるかも知らなかったり、毎日のようにマッサージがされているという記録を不審に思わなかったり、医師の同意の日付が1月1日でも不審に思わなかったりと、かなりお粗末な対応をしました。高槻市の対応を見ていると、不正請求を想定していなかったのではないかとも思えました。

終わったことは仕方がないので、今後はこの事件を教訓に、研修等を実施して、職員の資質を向上させてほしいと思います。そして、不正請求を見抜き、それに対処するためのマニュアルを作成してほしいですね。担当課の職員の皆さんの奮起に期待するばかりです。 

一方、大阪府後期高齢者医療広域連合の職員の方は、高槻市の職員と比べると、その対応や能力・知識は、大変優秀でした。産経新聞の記事にも書かれているとおり、広域連合は、すでに約1700万円という額を確定し、返還請求する段取りを進めています。

高槻市のほうは、広域連合の後塵を拝しているような形です。ぜひ、事実確認・返還請求を早急にしてほしいものです。でなければ、債権を回収できなくなる可能性も考えられます。

不正請求分を回収し、再発防止策をしっかりと講じれば、高槻市民の皆さんが納める保険料も、少しは安くなるかもしれません。

この事件は今後どうなるのか?高槻市はどう対処するのか?市民の皆さんには是非ご注目いただきたいと思います。