高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

生活保護費の予算を増額し過ぎでは?

昨年12月議会で補正予算が賛成多数で可決されてしまいましたが、その中で、一番増額の幅が大きかったのが、生活保護費でした。

1 生活保護事業
  生活保護扶助費の決算見込による
  補正額 16億1415万7千円

【補正理由】
 平成22年度当初予算で、保護率12.92パーミル、被保護世帯3169世帯、被保護人員4639人を見込み、扶助費は74億9018万7千円となっていましたが、雇用経済情勢は厳しい状況が続いており、生活困窮者の相談が急増していることや、高齢化の進展等により被保護世帯の増加傾向が続いていることから、決算見込みでは保護率14.60パーミル、被保護世帯3507世帯(当初比338世帯増)、被保護人員5246人(当初比607人増)、扶助費は91億0434万4千円となる見込みのため。



予算、被保護世帯、被保護人員の増加率をそれぞれ算出してみると・・・

  当初 決算見込 増加率
予算 ¥7,490,187,000 ¥9,104,344,000 121.55%
被保護世帯 3169 3507 110.67%
被保護人員 4639 5246 113.08%



被保護世帯が10.7%、被保護人員が13.1%の増に対して、予算は21.6%の増となっています。これでは予算を増やし過ぎではないのかと考えられます。

また、当初と比べ、決算見込みで被保護人員が13.1%増加するというのは、担当職員によると、毎月徐々に増加して、平成22年度末(平成23年3月末)に13.1%増となるとのことであり、そうすると、予算の増額は、それ以下で済むはずです。

例えば、毎月1%ずつ増加し、年度末に12%増加すると仮定すると・・・

高槻市生活保護費予算増額はおかしい

図のとおり、(1%+2%+3%+・・・+11%+12%)÷12ヶ月=6.5%/月。つまり、平均すれば6.5%の増となるわけですから、年間の予算の増額も、各月の増加のしかたによりますが、普通に考えれば、6.5%前後でよいはずです。

それが、21.6%も予算を増やさなければならないとすれば、1世帯・1人員あたりの生活保護費が大幅に増えるということです。1人員あたりで考えても、少なくとも10%以上は増えるはずです。

そこで、議会で質問をしたのですが、明確な数字に基づく根拠は示されませんでした。

あらためて担当職員にどのように当初予算を算出したのかと尋ねると、生活扶助、住宅扶助、教育扶助等の各扶助費のモデル額に予測される被保護人員をかけて計算したとのこと。以下の図のとおりです。

高槻市生活保護費予算増額

今年度の増額分については、9月までの実績値を根拠に、10月以降の見込み値を予測したというのですが・・・下の図のとおり、例えば、生活扶助はほぼ毎月2億7千万円、住宅扶助は毎月1億1200万円、医療扶助はほぼ毎月3億5千万円と、ほとんど一定額となっていました。毎月増加するという形で予測するのが合理的かと思うのですが、そうなっていないことに違和感を覚えます。

高槻市生活保護費予算増額

では、被保護人員1人当たりの生活保護費は最近増加傾向にあるのか。最近の数字をもってきてもらうと・・・

高槻市生活保護費予算増額

上の図は文字が小さくてすみません。拡大したものが以下の図ですが、平成19年度から21年度の決算ベースで比較すると、被保護人員1人あたりの扶助費には顕著な違いは見られませんでした。

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

高槻市生活保護費予算増額

そこで、12月16日の議会の一般質問で、あらためて質問をしました。その時のやりとりは以下のとおりです。

<質問・1回目>

今月2日の補正予算の質疑で疑問を述べさせていただき、委員会での議論を期待していたのですが、委員会ではこの点に触れられることもなく、補正予算も可決してしまいました。しかし、この増額について、担当職員の方に、さらに資料提供と説明をいただいたのですが、やはり不自然としかいいようがありませんので、あらためて質問させていただきます。 

(1)今月2日の議会答弁では、増加要因は、医療扶助の過年度請求や母子世帯の増などであるとされましたが、いただいた資料によると、平成19年度からの決算ベースで比較すると、被保護人員1人あたりの扶助費には顕著な違いは見られませんでした。また、医療扶助の過年度請求も毎年あるとのことでした。 
 つまり、1人あたりの扶助費はほとんど変わらないと言えるわけです。そうすると、保護費増額の要因としては、被保護人員数の増にしか求めることはできません。そう考えてよいのでしょうか。1人あたりの扶助費はほとんど変わらないという理解でよいのか、そうでないのか、1人あたりの扶助費が増えるとするならばどれだけ増えるのか、お答えください。 

(2)補正予算の算定根拠の資料を拝見したのですが、今年10月以降の保護費の見込み額については、例えば、生活扶助はほぼ毎月2億7千万円、住宅扶助は毎月1億1200万円、医療扶助はほぼ毎月3億5千万円と、ほとんど一定額となっていました。毎月増加するという形で予測するのが合理的かと思うのですが、そうなっていないことに違和感を覚えました。 
 この数字の根拠は何なのでしょうか?お答えください。 


<答弁> 

 北岡議員の1問目、生活保護扶助費の増加要因に関するご質問にお答えいたします。 
 今般、算定いたしました決算見込み額は、91億434万4千円で、主だった扶助費を被保護人員1人当たりの月額単価に換算しますと、生活扶助は約56,400円、医療扶助では約81,800円となり、それぞれの当初予算に対する単価増とその伸び率は、生活扶助で約4,100円、約7.8%、医療扶助では約12,920円、約18.8%でございます。 

 続きまして、補正予算の算定根拠についてのご質問でございます。 
 今回、算定させていただきました決算見込み額は、各扶助についての9月までの実績値に、10月から来年3月までの見込値を積み上げて算出したものでございます。 
 先の本会議でもご答弁させていただきましたとおり、保護率の変動と扶助費との関係は一定比例するものでございますが、生活保護業務において、月々の生活扶助、住宅扶助等は冬季加算や期末一時扶助、勤労収入のある方に適用される特別控除等の事務的要因の影響を受けております。 
 また、医療扶助や出産扶助、生業扶助、葬祭扶助などは発生主義であり、月ごとの算定に適さないことから、決算見込額の算定にあたっては、保護の動向や、経年比較等を行ったうえで、所要見込額として算定しているところでございます。 
 なお、10月から3月までの所要見込額につきましては、基本的に各月の平均額として割り振ったものでございます。 
 以上でございます。 


<質問・2回目> 

 生活保護費の予算の増額についてです。 
 決算見込み額から被保護人員1人当たりの月額単価を換算したとのご答弁ですが、これは逆のはずで、何らかの算定根拠があるならば、そこから計算して決算見込み額を出さなければならないはずです。また、毎月増えていくと想定される各扶助費を、各月に平均額で割り振るというのも、おかしいですよね。 
 こういうわけの分からない算定に拠って、16億円もの増額を認めるということは、あってはならなかったと考えます。この件についてこれ以上のご答弁は結構です。



ということで、結論としては、この生活保護費の約16億円の増額については、算定根拠がないとしかいいようがありません。

生活保護世帯・生活保護受給者は、確かに全国的に増えており、高槻市だけでなく、下の図のとおり、近隣市でも増加していますが、

近隣市でも生活保護が増加

説明もできないような形で、予算を増やしてよいはずはありません。

高槻市では、市職員による生活保護費の詐取事件があったばかりですし、受け取る側についても、生活保護者に不要な手術をして診療報酬をだまし取った事件がありました。

高槻市では、ケースワーカーに欠員が生じており(厚生労働省の基準では、ケースワーカー1人につき80世帯の生活保護受給者を担当することになっているが、高槻市ではケースワーカー1人当たりの生活保護世帯数は約112世帯。ケースワーカーの人件費は、地方交付税交付金の算定基礎となっており、国からは36人分が支払われており、高槻市は取り過ぎている状態。)、ちゃんと生活保護世帯の実態調査などができているのか、心配です。

また、昨年10月1日付けで「高槻市事務決裁規程」の一部が改正され、これまで福祉事務所長の専決事項であったものが、一部、生活福祉課長の専決事項となっていました。重要なものを福祉事務所長が、軽易なものを生活福祉課長が、それぞれ決裁するという役割分担の整理がなされたことがうかがえます。

決裁権者の変更

生活保護法第25条第2項というのは、

生活保護法 第二十五条(職権による保護の開始及び変更)
2 保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、すみやかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。前条第二項の規定は、この場合に準用する。



何が重要で、何が軽易か、その基準はこの規程にはまったく示されていないのですが、恣意的な運用がされて、安易に「保護の変更」がされ、生活保護費がばらまかれるような事態にならないことを祈るばかりです。議員であっても、個々の生活保護のケースまでは、調査することができませんので・・・