高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【違法ブロック塀を手抜き点検】いつもどおり住民監査請求の監査結果は却下・棄却

に報道していただいたとおり、高槻市内の小中学校の違法なブロックと手抜き点検に関する住民監査請求の監査結果が、高槻市監査委員から示されました。請求は認められませんでしたが、これはいつもどおりのこと。私はこれまで多くの住民監査請求をしてきましたが、監査委員が請求を認めたことはありません。それは高槻市における監査委員の選び方に問題があると私は考えています。

監査結果が却下・棄却であっても、住民訴訟では違法性等が認定されることも、これまで度々経験してきました。本件についても住民訴訟をすべきか、弁護士さん達と検討したいと思います。

監査委員らは、監査結果で、ブロック塀の中には建築時から建築基準法に規定の高さ等の要件を満たしていないものがあり、22年度と25年度については塀の点検がされていなかったと認定しました。しかし、構造計算の書類が廃棄されて存在しないから構造耐力上安全ではなかったとはいえないとか、点検については1年以上前だとかといって、請求を棄却・却下しました。。

構造計算の書類がないから安全ではないとはいえないというのですが、それを児童・生徒の保護者が聞いたらどう思うでしょうか?構造に関する書類がなく、おまけに建築基準法の定めた高さ等をオーバーしているのだから、逆に、安全とはいえないと判断するのが普通です。

住民監査請求では、1年以上前のことでも、住民が相当の注意力を払っても知ることができなかった場合には、請求が認められます。もし今回の点検の手抜きが簡単に分かることなら、何故プロである市職員は気付くことができなかったのでしょうか?わざと見逃していたということなのでしょうか?仮に1年間の制限にかかるとしても、手抜き点検をした業者や担当職員に対する請求権は存在するはずで、その行使を怠っているといわざるをえません。

私は不当な監査結果であると考えています。

以下は監査結果の「判断」や「意見」等からの抜粋です。

(2)判断

 請求の要旨及び理由、請求人から提出された証拠書類、請求人の陳述、関係職員の陳述及び事情聴取並びに関係書類から判断した結果は、次のとおりである。

ア 寿栄小の外21校で、違法又は不当な塀の建設に係る契約及び工事がされたのか否か、また、これらを建設した事業者並びに当時の市長、市教育長及び職員等に対し、損害賠償請求又は不当利得返還請求することを怠っているかどうか

 …これらの塀については、建築時における建築基準法施行令第62条の8各号に規定する要件を満たしていないものがあったことが認められる。しかしながら、同条ただし書において、構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない、とされているが、構造計算がされているかは、書類がなく確認できなかった。
 以上から、違法又は不当な塀の建設に係る契約及び工事がされたかについては断定できない。違法又は不当な塀の建設がされたか否かが断定できないのであるから、事業者並びに当時の市長、市教育長及び職員等に対し、明確な根拠なしに損害賠償請求又は不当利得返還請求することはできず、当該請求を怠っているとはいえないものと判断する。

イ 本件ブロック塀の外、21校で撤去や安全対策等の措置並びに地震後の点検及び調査等に要した費用が違法又は不当な公金の支出に当たるか否か

 寿栄小を除く21校については、ブロック塀解体工事契約が締結されている。これらの塀は…違法又は不当な塀であったとは断定できず、本件ブロック塀の倒壊を受け、余震が発生する中、地震の影響によるブロック塀の損傷等により倒壊の危険性が増している可能性を考慮し、安全確保の必要から、自治法施行令第167条の2第1項第5号による随意契約を行って撤去したことに、何ら違法又は不当な点は見受けられない。
 寿栄小については、本件ブロック塀の倒壊を受け、現場管理、調査、改修といった作業を速やかに対応できる業者と契約を行ったものである。寿栄小についても、違法又は不当な塀であったたとは断定できず、上記と同様、安全確保の必要から、自治法施行令第167条の2第1項第5号による随意契約を締結したことに、何ら違法又は不当な点は見受けられない。

ウ 平成22年度、25年度及び28年度の寿栄小を含む22校の塀の定期点検について、契約を履行せずに公金を支出したのか否か

(ア)定期点検結果報告書の様式について
 平成22年度、25年度及び28年度の定期点検について、22年度は確認できなかったが、25年度及び28年度の業務委託契約に係る仕様書では、点検結果の報告については「業務基準」の図書によることとされているものの、上記3年度すべての定期点検結果報告書は「検査者必携」の図書に基づき一般財団法人大阪建築防災センターの報告様式により提出されていた。このことについては…「検査者必携」の図書を参照することとされ、当該図書に記載の様式で報告書が提出されていたことからすると、仕様書どおりではないものの、市の意向に沿った報告書となっているものと判断できる。以上から、定期点検結果報告書の様式が業務委託契約書の仕様書と異なっているものの、市教委の求める点検報告の内容が含まれていることから、これをもって直ちに契約を履行していなかったとまではいえない。

(イ)定期点検結果報告の塀の項目が「-」であったことについて、点検業者は市教委との契約を履行したのか否か。
 定期点検結果報告の塀の項目については、平成22年度及び25年度については、本件監査請求の対象となる、寿栄小を含む22校すべての学校で「-」と記載されていた。その経緯の報告では…どちらも塀については点検を実施していなかったものと認められる。
 平成22年度点検業者が塀の点検を実施しなかった理由について、前回(平成19年度)の点検結果図に塀の記載がなく、点検対象物でないとしている。しかしながら、点検結果図は、点検の結果補修等が必要な箇所を記載するものであり、点検対象物を記載するものではないことからすると、当該理由を採用することはできない。よって、平成22年度点検業者について、塀の点検は業務委託契約書に記載の点検がされなかったものと判断する。
 平成25年度点検業者が塀の点検を実施しなかった理由について、前回の点検・検査記録を検査対象と判断したとされる。よって、平成25年度点検業者についても、塀の点検は業務委託契約書に記載の点検がされなかったものと判断する。
 平成28年度点検業者は、定期点検結果報告書を見ると、塀の劣化及び損傷の状況について、「要是正」に「○」と記載されていた学校には、関係写真及び特記事項が記載された報告書が提出されていることから、塀の耐震対策の状況については点検をしていなかったものの、塀の損傷、腐食その他の劣化の状況については点検をしていたものと認められる。
 塀の耐震対策の状況については、仕様書の「7 点検方法及び点検結果の報告」では点検することとなっている。しかし、仕様書の「5 業務内容」では、建築基準法第12条第2項に基づく点検を実施することとなっており、耐震対策の状況を点検する必要はないこととなっている。この点について、市教委では「7 点検方法及び点検結果の報告」により、塀の耐震対策の状況についても点検すべきと主張しているものの、業務委託契約書では、どちらに基づき点検すべきか明確にされていないことからすると、平成28年度点検業者が仕様書の「5 業務内容」に従い、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検のみを実施したことに対し、定期点検の塀の項目について、点検業務を履行していなかったとまではいえないものと判断する。

(ウ)定期点検の塀の項目について、市教委との契約を履行せずに公金を支出したことに対し、損害賠償請求又は不当利得返還請求すべきか否か
 本件監査請求は…直近の点検である平成28年度定期点検に係る支出日から1年以上経過して提出されている。住民監査請求は、自治法第242条第2項において「当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」としており、正当な理由がない限りは1年の請求期限がある。このことについて、請求人は、定期点検が手抜きされていたことは、一般の住民が相当の注意力を払っても知ることができなかったのであるから、正当な理由があるとしている。
 ところで、正当な理由における「相当の注意力」については、「『通常の注意力』ではなく『相当の注意力』による調査を必要とする趣旨にかんがみれば、マスコミ報道や広報誌等によって受動的に知った情報等だけに注意を払っていれば足りるものではなく、住民なら誰でもいつでも閲覧等できる情報等については、それが閲覧等できる状態に置かれれば、そのころには住民が相当の注意力を持って調査すれば知ることができるものということができよう」(判例タイムズNo.1107 187頁)とされている。
 そこで、定期点検の一部が点検されていなかったことについて、一般の住民が相当の注意力を払っても知ることができなかったのか否かについて検討すると、定期点検結果報告書などの本件に係る情報は、現在のところ調査委員会で調査中のため非公開となっているものの、本来、保存年限が経過するまで、情報公開請求すれば公開される情報である。
 このことから、本件について、一般の住民が相当の注意力を払っても知ることができないものとはいえず、正当な理由はないものと判断し、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過しているため、監査請求の対象とはならないものと判断する。

(3)結論
 以上のことから、請求人の主張に理由はない、又は監査請求期間を経過していることから、請求人が求める措置の必要は認められない。

(4)意見
 監査結果は以上のとおりであるが、監査する過程で以下のことが判明した。これらについて、適切に対応されたい。
 撤去した塀については、関係書類の保存年限が経過していることから構造計算等確認できないものがあった。構造計算等が確認できない場合、塀を取り壊しで調査しなければ構造耐力上安全かどうか判断できない。塀をはじめとする構造物についても、構造耐力上安全かどうかは重要な課題であるため、このことが常に確認できるよう、関係書類等の保存年限を見直すようにされたい。
 定期点検については、その委託内容を示した仕様書において、点検内容や点検結果報告書の様式で一部暖昧な点が見受けられた。点検業者に委託する際には、業務内容に棚鋸のないよう、適切な仕様となるようにされたい。
 定期点検結果報告については、平成22年度及び25年度の塀の項目の点検を実施しなかったことが認められた。本監査結果においては、住民監査請求することができる期間を経過しているため、請求人が求める措置の必要はないとしたが、点検業者が塀の点検を実施せず、職員が塀の点検を実施していない点検結果報告書を受け取り、履行確認し、公金を支出したことが認められる。公共施設に対して定期点検を求める建築基準法の趣旨を十分に理解し、今後、定期点検結果報告について、契約した内容が確実に履行されたか否かの確認を徹底されたい。
 学校は、児童生徒が安全に学校生活を送ることができ、また、災害時の避難所になるなど、その安全性についてはより高度なものでなければならない。現在、調査委員会で事故原因及び再発防止策について調査及び審議されているところであるが、近日中に出されるであろう同委員会の答申を含め、今回の地震で判明した様々な問題点について真筆に受け止め、安全確保や再発防止のための対策を確実に実施されたい。