高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【元SVへの不当労働行為】違法な「雇用契約」をした市教委の責任者を処分すべき

20170906_193713.jpg

 


今日から9月議会。昨年12月議会では、オーストラリア・トゥーンバ市から来た元英語指導助手(AET)への不当労働行為を大阪府労働委員会に認定され、誓約文の手交を命じられた高槻市が、その取り消しを求めて専決処分で提訴した議案が上程されましたが、今回は、元AETの指導役であったスーパーバイザー(SV)への不当労働行為も認定されたため、同様に、取消訴訟の提起を専決処分したということで、その議案の質疑・採決がありました。

以下は、今日の議会での私の質問と答弁の内容です。原稿とメモに基づいているので、不正確な部分もあることをお許しください。

■報告第10号 不当労働行為救済申立事件の大阪府労働委員会の命令に対する取消訴訟の提起の専決処分報告について

<1回目>

 大阪府労働委員会は、高槻市が、スーパーバイザー(SV)との契約を、平成27年度以降、更新しなかったことについて、SVが組合員であるが故の不利益取扱いであり、組合の弱体化を招くものとして組合に対する支配介入であって、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であると認定して、市に対して、組合へ、不当労働行為を繰り返さない旨の誓約文を手交するよう命じました。市は、この命令を不服として、取消訴訟を提起したということです。まず3点伺います。

1.訴訟を提起した市の訴状を見ると、高槻市教育委員会とSVとの契約は、業務委託契約であって、雇用契約ではないと主張しています。一方で、大阪府労働委員会は、「市と・・・SVとの雇用関係の存在をうかがわせる諸条項を記載した『雇用契約書』が存在することに加え、労基署、職安及び大阪労働局の対応を勘案すれば、市と・・・SVとの間には雇用関係が成立していると解するのが自然である。」と認定しています。
 市教委とSVとの間の契約は、英語で書かれているのですが、そのタイトルは「EMPLOYMENT AGREEMENT」となっています。「EMPLOYMENT」というのは、普通は「雇用」と訳されると思いますし、辞書を見ても、労働者の雇用とか、雇われて給料をもらって働く仕事などとされているのですが、この単語は「業務委託」というふうに解釈することも一般的なのでしょうか?この英単語の意味をお答えください。

⇒Employmentには、使用、雇用、仕事、職、業務などの意味がございます。

2.その「EMPLOYMENT AGREEMENT」には、SVは市教委の規則に従えとか、ワーキングデイズは月曜日から金曜日までで、勤務時間は午前9時から午後5時15分までとか、SVが他の職位に就こうとする場合には市教委の合意が必要だとか(つまり副業は原則禁止だということだと思いますが)、病気やけがで1週間以上欠勤する必要がある場合には医師の診断書を提出するとか、雇用契約書にはあっても、一般的な業務委託契約書にはないような条項がほとんどです。なぜこのような条項を設けたのでしょうか?お答えください。

⇒業務内容について丁寧に伝えようとしたものです。

3.大阪府労働委員会は、SVと契約しなかった理由には合理性が認められないし、手続き面でも市は説明を尽くしておらず市の対応が適切なものといえないとしています。合理性については、トゥーンバ市から派遣されたAETに対する研修や指導以外の業務を相当程度行っていたから、SVの業務の大半がなくなるとはいえないということですが、仮に、市の職員の場合、その業務の大半がなくなって、人員の整理が必要となったときには、どのようにするのでしょうか?他の部署へ異動させるのでしょうか?それとも免職や雇止めがされるのでしょうか?また、その手続きは具体的にどのようなものなのでしょうか?常勤職員、常勤的非常勤職員、その他の非常勤職員のそれぞれについて、具体的にお答えください。職員団体労働組合に所属する職員に対しては、対応・手続きが異なる場合には、その理由もお答えください。

⇒市職員の場合についてですが、担当の業務がなくなった理由などを個別に、総合的に判断されるべきものであり、仮定の質問にお答えすることはできません。

<2回目>

1.Employmentには、使用、雇用、仕事、職、業務などの意味があるということです。どうやら「業務委託」という意味はないようです。「業務委託契約」を英訳すると、Outsourcing contract とか、operating agreement とか、business trust agreement などというのが一般的なようです。これは議員インターンで来てくれている大学生達が調べてくれた結果ですけれども。何故、本件のSVとの契約は、「EMPLOYMENT AGREEMENT」としたのでしょうか?何か意味があるのでしょうか?お答えください。

⇒EMPLOYMENT AGREEMENTとしたことに他意はございません。

2.市側の主張によると、SVとの業務委託契約は、平成27年3月31日に契約期間満了をもって、契約終了したとのことです。平成26年度までの3年度間においては、1年度につき、何円の支払いがされたのでしょうか?お答えください。
 また、その支払いは、どの法律の、あるいは、どの条例の、第何条に基づいてされたのでしょうか?お答えください。

平成24年度は、5,132,160円、平成25年度は、4,943,160円、平成25年度は、4,992,000円を支払っています。
これらの金額は、SVとの契約に基づき支払われています。

3.市教委がSVに委託した業務にかかった経費は、市が負担したのでしょうか?それともSVが負担したのでしょうか?お答えください。

⇒市がSVに支払っているのは、2問目の金額のみでありまして、SVが業務の遂行のために、どのような経費を負担しているかは把握していませんが、市が経費を負担していることはありません。

4.今回は専決処分で提訴したわけですが、大阪府労働委員会の命令を受け入れて、早期に収束を図るという選択もできたはずです。なぜそうしなかったのでしょうか?お答えください。

⇒本件府労委の命令については、結論及び理由のいずれにも不服があるため、命令の一部取消を求めて、訴えを提起することとしたものです。

<3回目>

 EMPLOYMENT AGREEMENTとしたことに他意はないというご答弁でしたが、このEMPLOYMENT AGREEMENTは、やはりそこに書かれている内容からすれば、業務委託契約書ではなくて、大阪府労働委員会が認定したように、雇用契約書だと捉えるのが自然だと思います。
 先ほど、高木議員が指摘されていましたが、市がSVの社会保険料を支払った経緯などは、市がSVとの雇用関係を自ら認めている証拠になると思います。
 雇用契約が締結されていたとすると、SVは労働者=市教委の従業員=市教委の職員ということになります。
 市教委の職員ということは、「地方公務員」ですよね。
 地方公務員ということになれば、地方公務員法に基づいて任用しなければならないし、給与・報酬については、給与条例主義ですから、条例に基づいて支払わなければなりません。ところがSVについては、地方公務員法に基づいて採用されたわけでもなければ、条例に基づいて報酬が払われたわけでもない。つまり違法に雇用契約が結ばれて、違法に報酬が払われてきたわけです。だからこそ、業務委託契約だと、市は未だに言い張っているのだと思いますが、脱法的なやり方で、法律上は認められないと思います。
 今回の提訴は、不当労働行為を認定した大阪府労働委員会の命令を取り消すためのものですが、判例を調べると、似たような事例がありました。最高裁の平成元年12月11日の判決です。これは、本件と同じように「業務委託契約」という形ではあるけれども、歴史民俗資料館の専門員として働いていた原告が、契約を更新してもらえなかったので、雇用契約関係の存在の確認と、未払賃金等の支払いを求めて提訴したものです。
 裁判所は、勤務実態などからすれば、原告は雇用されていたといえるけれども、地方公務員法は、私法上の雇用契約の締結を禁止しているから、原告は地方公務員法3条3項3号の特別職たる「臨時嘱託員」として、資料館の事務に従事していたものと認めるのが相当だと判断しました。けれども、期限付で臨時嘱託員として採用された公務員は、引き続き、あらたな任用がなされない限り、任用期間の満了により当然にその地位を失うと解されるから、一般私法上の労働契約と同じように、更新されることを前提とするのは間違っていると、原告を敗訴させました。
 この判例からすると、本件の裁判でも、むしろ、業務委託契約という主張を第1回口頭弁論でも主張されているということですけれども、そういう主張は諦めて、SVは地方公務員の非常勤職員か臨時嘱託員で、今回の件はいわゆる雇止めなんだと、市が、裁判に勝つために、なりふり構わずに、そういう主張すれば、勝訴する可能性は割とあると思います。
 一方で、この判決が出てから、30年くらい経っていますので、裁判所の判断も変わるかもしれませんし、何といっても、大阪府労働委員会が不当労働行為だと認定したわけですから、組合側・SV側が勝つ可能性も高いと思われます。
 そういうふうに、市が勝訴する可能性も、それなりにあると、私は考えますので、提訴については、反対はしません。この議案には賛成します。
 しかし、先ほど述べたとおり、市教委が、SVと違法な契約をして、条例ではなくて、その違法な契約に基づいて報酬を支給してきたことは明らかですので、その責任は問われるべきです。
 SVが実質的には市の非常勤職員だったとすると、高槻市の場合、条例上、報酬が月額で支給される非常勤職員の報酬の最高額、つまり限度額は、保健センター管理医の月額32万4千円で、これを年額にすると、掛ける12で、388万8千円になりますので、これとSVへの年約500万円の報酬との差額の、年約100万円が、少なくとも市の損害といえるかもしれません。日額の非常勤で計算するのが妥当なのかもしれませんが、教育委員会は違法な契約に関与した職員を処分すべきですし、市長は、市に損害があるのであれば、責任者に対して賠償請求すべきであると指摘して、質問を終わります。