高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【勤務変更訴訟】大阪地裁で敗訴

本日13時10分から大阪地方裁判所勤務変更訴訟の判決言渡しがありました。残念ながら敗訴でした。

労働組合の役員が組合の用務で勤務変更し、その変更前後の勤務時間に差異がある場合、差異の時間分「待機」等が命じられるのですが、他に常時1日あたり10名の待機者がいるので、無駄な待機としかいいようがありません。しかし、大阪地裁は、勤務時間中にそういった無駄な「待機」の時間があっても、年1860時間と定められた労働時間の確保のための調整にそれが設けられたのなら、まあ大目に見ようという判断のようです。

過去の判決でも、労組幹部優遇ダイヤの後半の空き時間や、「透明バス」として指摘した無駄に設けられた運行や回送の時間等(実際には休憩時間となっていた)については、違法とされませんでした。勤務時間の中身については、常識的に考えて明らかに無駄なものがあっても、司法は断罪しない領域だということなのでしょう。

こういうことが認められると、勤務時間の中に、いくらでも無駄・無意味な時間が設けられるということになります。それでいいのでしょうか?こういうことは本来、議会が止めさせなければならないはずなんですが・・・

判決中で・・・

・・・高槻市交通部は,本件監査結果において,本件取扱いを見直すよう指摘されたことから,平成24年5月30日以降,本件労組に対して本件取扱いを廃止することを含めた労働条件等の一部改訂についての協議を申し入れているが,本件労組との間で協議が整わず,現在まで本件取扱いは廃止されていない・・・



裁判所が違法としなかったからといって、おかしいものはおかしいのです。直ちに廃止すべきです。

以下は本日の判決のうち、裁判所の判断の部分です(一部省略等しています)。

第3 当裁判所の判断

1 認定事実
 前記前提事実及び各項掲記の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(1)労働時間の定め
 高槻市交通部の乗務員の労働時間については,本件期間中,年間の労働時間を1860時間とする1年単位の変形労働時間制(労働基準法32条の4)が採用されていた(甲9,乙1,5)。
 高槻市交通部では,上記の1年単位での労働時間を前提に,乗務員の1日の勤務内容(出退勤時間,業務内容)について定めた仕業を約200通り作成し,各乗務員に対する具体的な仕業の割当てについては,輪番表及び出退勤一覧表によって決定していた(乙1,5,証人A)。

(2)本件勤務変更命令について
ア 高槻市交通部においては,遅くとも昭和60年頃から,本件労組の組合員が組合活動に参加するために勤務変更を希望する場合には,本件労組の執行委員長が被告宛の勤務変更許可願(仕業変更並びに勤務免除願)を提出し,これを受けて営業所長が勤務変更命令を行うとの取扱い(以下「本件取扱い」という。)がされていた。本件取扱いは,本件労組の役員ではない一般の組合員が組合活動に参加する場合にも行われていた。(乙4,5,証人A)
イ 高槻市交通部は,本件監査結果において,本件取扱いを見直すよう指摘されたことから,平成24年5月30日以降,本件労組に対して本件取扱いを廃止することを含めた労働条件等の一部改訂についての協議を申し入れているが,本件労組との間で協議が整わず,現在まで本件取扱いは廃止されていない(乙5,6,証人A)。
ウ(略)

(3)待機勤務中の職務
ア 高槻市交通部においては,芝生営業所管内(弁天駐車場の休憩所を含む。)及び緑が丘営業所管内に,当初の仕業において待機勤務をすることとされている者を合計で午前4人,午後6人配置している(甲8)。
イ 待機勤務をする者は,待機勤務中に欠員が生じたり,事故や渋滞等の突発的な事態が生じたりした場合にはバスに乗務する必要があるほか,バスの車両の鍵の確認やバスの移動,排気ガス浄化装置作動後のエンジン停止等の作業を行うこともある。待機勤務中の者は営業所内で館内放送があれば速やかに対応できる状態で待機していなければならない(甲8,9,乙5,証人A)。
ウ 本件労組の組合活動を理由とする勤務変更命令に伴う待機勤務時間中に上記イのような交替乗務をした者はいない
(中略)

3 争点(2)(本件各命令の違法性)について
(1) 本件勤務変更命令について

ア 高槻市交通部において,乗務員の勤務時間は1年単位の変形労働時間制によって定められているところ(前記認定事実(1)),本件労組との協定においては,いったん定めた勤務時間を超えて勤務した場合には,時間外勤務手当を支給することとされている(乙1の1)。
 ところで,本来的権限者である被告ないし専決権者である営業所長は,必要性及び合理性が存する限度で乗務員に対する勤務変更を命じることができるものと解される(なお,運行管理規程22条は,「事故の発生その他緊急を要する場合」に,勤務変更を命じることができる旨規定するが(前記法令等の定め(5)),これは,上記のようなまさに緊急を要する場合に,乗務員に対して臨機に勤務の変更を命じることができる旨を定めたものであって,被告ないし営業所長が有する勤務変更権の行使を,上記のような緊急の場合に限定する趣旨に出たものと解することはできない。)。そこで,本件労組の組合員が組合活動に参加するために,本件労組の執行委員長から被告に対して勤務変更許可願(仕業変更並びに勤務免除願)が提出された場合に,専決権者である営業所長がこれに応じて勤務変更を命じること(本件取扱い)につき,必要性ないし合理性を欠くものとして,違法と評価されるかについてみるに,本件取扱いは遅くとも昭和60年頃から行われているものであり(前記認定事実(2)ア),その内容も,高槻市交通部の職員305人(常時使用する労働者の数であり,うち1年単位の変形労働時間に関する協定が適用される者(運転者)は254人である(平成23年3月31日付けの「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」による。)。) の約3分の2に当たる約200人が組合員として所属する本件労組(乙1の2,証人A)との間で行われてきたものである上,当該勤務変更の申出の理由も組合活動への参加であって,このように組合活動に一定の便宜を図ること自体は法の許容するところといえるし(労働組合法7条3号ただし書参照),高槻市交通部が行うバス事業の円滑な運営にも資するものといえることからすると,かかる本件取扱いに従って,本件組合の執行委員長からの要望に基づいて行われた本件勤務変更命令について,その必要性ないし合理性を欠くものとまで認めることはできない。
 そうすると,本件勤務変更命令が違法であるということはできない。

イ(ア)この点,原告らは,本件勤務変更命令がされるようになったのはここ数年のことであり,それ以前には組合役員には別の方法で組合活動の参加への便宜が図られていた旨主張し,高槻市交通部の乗務員であるBもこれに沿う供述をする(甲20,証人B)。しかしながら,Bは,芝生営業所のみに勤務し,労働時間の9割程度はバスに乗務しているという同人の経験の中で本件取扱いがされているのを見聞きすることはなかったというものであって,これのみをもって本件勤務変更命令がなかったことを裏付けるものとはいえず,上記認定事実(2)アの認定を左右するものではない。

(イ)原告らは,本件勤務変更命令は,本件労組の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えるものであり,労働組合法7条3号に違反する旨主張する。
 しかしながら,組合の活動のために勤務変更を認めることが経費の支払につき経理上の援助を与えるものとはいえないし,本件待機時間又は本件時間外時間に対して支払われる給与は本件待機勤務命令又は本件時間外勤務命令に基づいて支払われるものであることは後記(2),(3)のとおりであるから,原告らの主張には理由がない。
(ウ)(略)

(2)本件待機勤務命令について

ア 前記認定事実(1)のとおり,高槻市交通部の乗務員の労働時間については,本件期間中,年間の労働時間を1860時間とする1年単位の変形労働時間制が採用されていたものであり,高槻市交通部では,この1年単位での労働時間を前提に,乗務員の1日の勤務内容(出退勤時間,業務内容)について定めた仕業を作成し,各乗務員に対する具体的な仕業の割当てについては,輪番表及び出退勤一覧表によって決定していたものである。したがって,被告ないし営業所長は,上記のようにいったん定めた労働時間を自由に変更することはできないのであって,勤務変更命令によって労働時間を短縮し,それに伴って給与を減額することは許されないものといわなければならない。
 よって,本件勤務変更命令によって労働時間が短縮されることを避けるためにされた本件待機勤務命令が違法であるということはできない。

イ(ア)原告らは,本件待機勤務命令は,必要のない待機勤務を命じるものであって違法である旨主張する。確かに,本件待機勤務命令を受けた者が本件待機時間中に出動した実績はない(前記認定事実(3)ウ)ものの,待機勤務をするのに必要最小限の人数は機械的に定められるものではなく,待機勤務時間中に出動したことがないことをもって直ちに不必要であるとまではいえないし,高槻市交通部が公共交通機関の運行を行っていることからすると,不測の事態に対して備えるために,待機勤務をする人員は一定の余裕を持って配置する必要があるといえる。このことに,前記(1)アで説示した本件勤務変更命令の意義や,労働時間の短縮を避けるために必要があるという点もあわせ考慮すると,本件待機勤務命令が必要のない待機勤務を命じるもので違法であるとまでいうことはできない。

(イ)原告らは,本件待機勤務命令はノーワーク・ノーペイの原則に違反する旨主張する。
 しかしながら,待機勤務命令を受けた乗務員は,指示を受けた業務をし,いつでも業務することができるように態勢を整えていなければならず,待機勤務時間中は職場を離れてはならないとされているのであって(前記認定事実(3)イ),実際にも待機している乗務員が急遼乗務を行うこともあり得るのであるから(乙5,証人A),たとえ本件待機勤務命令を受けた者が具体的な乗務又は作業をしていない状態であったとしても,使用者の指揮命令下にある以上,労働時間に該当するといえる(なお,本件待機勤務命令を受けた者が本件待機時間中に出動した実績はないものの,当該従業員に待機が命じられており自由に過ごすことが認められていない以上は労働時間に該当するから,この点は上記認定を左右しない。)。
 そうすると,本件待機時間は労働時間に該当するのであるから,原告らの主張には理由がない。

(ウ)原告らは,私用による勤務変更の場合には当該変更の前後で労働時間に差が生じても待機勤務が命じられることはなかったことは,労働時間の調整の必要がないことを示すものである旨主張するが,1年単位の変形労働時間制に係る法令の規律からすると,当事者の同意があることを理由にいったん定めた勤務時間を変更し得るとする取扱いが妥当なものであるかについては疑義の存するところであり(現に,高槻市交通部においてもこの点の取扱いを改めることとしている(証人A)。),この点をもって本件待機勤務命令が違法であるということはできない。

(3)本件時間外勤務命令について

ア 前記(1)アのとおり,いったん定めた勤務時間を超えて勤務した場合には,時間外勤務手当を支給しなければならないから,本件時間外勤務命令が違法であるとは認められない。
 原告らは,勤務変更をした場合には勤務変更後の時間を超えて勤務した時間が労働時間となる旨主張するが,失当である。

イ 原告らは,本件時間外時間に対して賃金を支払うことがノーワーク・ノーペイの原則に違反する旨主張するが,本件時間外時間における勤務が時間外勤務に該当することは上記アのとおりであるし,本件時間外時間に乗務を行わず待機勤務をしている者がいたとしても,本件待機時間が労働時間に該当することは前記(2)イ(イ)で説示したとおりであるから(なお,本件時間外時間に行う勤務の内容は待機勤務に限られないのであるから,原告らの主張が本件時間外時間には待機勤務を命じられていることを前提とするものであれば,上記主張は前提を誤るものである。),原告らの主張は理由がない。

(4)したがって,本件各命令が違法であるとは認められない。

4 結論
 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第7民事部