高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【幽霊運転手事件控訴審】実質勝訴!しかし今回も高槻市側が「名ばかり勝訴」・・・

高槻市バス「幽霊運転手」事件控訴審判決

本日13時15分から、大阪高等裁判所で、高槻市バス「幽霊運転手」事件の控訴審の判決言渡しがありました。

阪高裁も、幽霊運転手行為(代走)と有給職免の違法性・市の損害を認めたので、実質的に私が勝訴しました。ただ、総務課長の責任は取り消され、時効消滅も一部認める形になっていますので、地裁判決と比較すると若干後退しています。

しかし、先日お伝えしたとおり、高槻市側が控訴後、大阪地裁で返還や賠償の責任を認定された市職員らが、地裁判決どおりの金額・計1448万1618円を、「自主返納」と称して、高槻市に納めたので、高裁では市の損害が補填されたと見做され、私が裁判に訴えても意味がない(「訴えの利益」がなくなった)と判断され、上の判決の主文の2のとおり、私(控訴審では被控訴人・一審では原告)の請求が棄却され、形式上は敗訴となりました。

けれども、市職員らの行為の違法性が認定されたので、主文の3のとおり、訴訟費用の3分の2は、高槻市や市職員の負担とされました。

予想どおり、高槻市側の「名ばかり勝訴」になってしまったことは、大変残念です。以前も私が原告の3件の住民訴訟で、高槻市側は「名ばかり勝訴」を奪い取りましたが、この「自主返納」を受領しながら控訴を維持するやり方は・・・
控訴審高槻市側が勝てばもちろん高槻市側の勝訴。
・負けても「自主返納により原告の訴えの利益がなくなった」としてやはり高槻市側が勝訴。
・・・つまり、どっちに転んでも高槻市側が勝訴するというセコイやり方です。

さらにヒドイことには、住民側が一部でも勝訴すれば、弁護士費用を市に請求できるのですが、形式上敗訴だと、たとえ実質勝訴でも、弁護士費用を請求できないのです。これでは住民の負担が大きくなり、弁護士さんのほうも代理人の引き受けを躊躇する可能性があります。

この裁判で約6年間代理人をしてくださった弁護士は、「高槻市役所は仕事をサボった職員には違法に給料を払うのに、一生懸命に仕事をして市民のためにお金を取り戻した弁護士には1円も払わないのか。虚しい・・・」と憤っていました。こんな世の中でいいのでしょうか?

もし、高槻市のようなセコイやり方を、他の自治体が真似したら、全国のオンブズマンにとって大きなダメージになります。裁判を弁護士さんに依頼せずに行うのは大変困難ですから、まさにオンブズマン潰し。濱田市長は弁護士ですが、高槻市のために弁護士さんが苦しんでいることを何とも思わないのでしょうか。

以下は今日の判決の大阪高裁の判断の部分です。時効消滅も一部認める形になっていますが、職員の方々は「自主返納」されたわけですから、よもや市に対して「お金を返せ」とは、言わないでしょうね。「自主返納」とはいっても、労働組合の「犠牲者救援金」で賄われ、自分達の腹は痛まなかったのだし。

第4 当裁判所の判断

1 当裁判所は,被控訴人の本件請求は,結局,本件返納によって理由がなくなったものと判断する。
 その理由は,次のとおり補正し,後記2に当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第5のlないし6(原判決35頁15行目から49頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1) 原判決41頁14行目の「本件総務課長」から16行目末尾まで並びに42頁16行目の「及び本件総務課長」をそれぞれ削除し,18行目の「不法行為が成立する。」を「不法行為が成立する(最高裁昭和61年2月27日第一小法廷判決・民集40巻1号88頁,最高裁平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁)。しかしながら,本件職務免除を行い,それに係る支出命令をしたことについて,本件総務課長に賠償責任を認めるためには,故意又は重過失があることを要するところ(地方自治法243条の2第1項),本件総務課長が,職務免除に関する専決権者であり,本件職務免除が違法であることを認識し得たものと認められるとしても,本件総務課長に故意又は重過失があることを認めるに足りる証拠はなく,本件有給職免関係管理者が本件総務課長を指揮し,職務免除の承認について専決させていたことに照らすと,故意又は重過失があったとまではいうことができないから,本件総務課長に賠償責任を認めることはできない。」を付加し,47頁8行目,48頁9行目及び24行目の各「及び本件総務課長」をいずれも削除する。

(2) 同48頁14行目の「被告らにおいて」から19行目末尾までを「控訴人らにおいて,平成17年度分以外の年度については年度ごとの給与等の支給額を主張するのみであるが,平成17年度分の給与等の支給額については,別紙平成17年度における有給職免職員に対する給与支給日及び支給額明細表の〔1〕のとおりである旨主張し,被控訴人はこれを争わないところ,弁論の全趣旨によれば,本件有給職免関係職員に対する平成17年度分の給与等の支給日及び支給額は,同別紙の〔1〕のとおりであると認められる。そうすると,本件有給職免関係職員について,平成16年度以前に支払われた部分及び平成17年度の同別紙の〔1〕の1ないし9の給与等の支給額については時効の完成を認めることができるが,それ以後に支払われた部分については,時効の完成を認めることはできない。」と訂正する。

(3) 同48頁21行目の「別表1」を「本判決別表請求額等一覧表」と訂正し,25行目の「別表2」の次に「(ただし,総務課長損害賠償額の欄を削除したもの)」を付加する。

2 当審における当事者の主張に対する判断

(1)当審における控訴人及び控訴人補助参加人ら(以下「控訴人ら」という。)の主張に対する判断

ア 監査請求期間徒過に正当な理由がないことについて

 控訴人らは,平成17年7月に大阪市ヤミ専従問題が大きく報道され,有給での組合活動が問題視されていたこと,住民がいつでも閲覧等できる情報等については,それが閲覧等できる状態に置かれれば,その頃には住民が相当の注意力をもって調査すれば知ることができることに照らすと,本件においては,監査請求期間徒過に正当な理由は認められない旨主張するが,上記報道は控訴人とは全く別の他の地方公共団体の問題であること,原判決を引用して説示したとおり,住民が特段の事情もないのに情報公開請求をしなければならないと解するのは相当ではないことに照らすと,上記主張は理由がない。

イ 本件代走関係職員に責任等がないことについて

 控訴人らは,高槻市においては,代走関係職員に対し給与を支給し,これに代わって勤務する職員と当該勤務に係る給与等相当額の支給は補助参加入組合が手当する取り決めがあったのであるから,本件代走関係職員は,高槻市に経済的な損害を与えないとの認識に基づいて給与等の支給を受けていたものであり,違法性の認識はなく,また,そのように認識していたことに過失があったとまではいうことはできない旨主張するが,上記のような取り決めがあったとしても,勤務をすることなく給与の支給を受けることが違法であることに変わりはなく,これが適法と認識することについて合理的な理由はないから,上記主張も理由がない。
 また,控訴人らは,本件代走関係職員に代わり実際に乗務した者に対して給与等を支払わなかったのであるから,高槻市は本件代走関係職員に対する給与等の支払により損害も損失も被っていない旨主張するが,本件代走関係職員に対する給与等の支払自体が違法であり,この支払により高槻市に損害が生じ,本件代走関係職員に法律上の原因なく利得が生じている一方,本件代走関係職員に代わり実際に乗務した者に対して給与等を支払わなかったことは事実上のものにすぎず,法的な根拠のあるものではないから,上記主張は採用できない。

ウ 本件有給職免関係管理者及び本件総務課長に過失がないことについて

 控訴人らは,平成18年度の時点で,104もの普通地方公共団体において有給職免による組合活動の違法性がそれほど問題視されることなく行われていたこと(乙37ないし40),控訴人において有給職免が行われていた当時,有給職免の適否について確立した最高裁判例は存在しなかったこと,本件有給職免関係管理者は,個々の職免行為の存在と内容を知り得なかったことを考慮すると,原判決が,本件有給職免関係管理者は,違法な職務免除がされていることを認識し得たものと説示したのは誤りである旨主張する。
 しかし,前記法令等の定めのとおり,労働組合法7条3号ただし書に規定する協議又は交渉を除いた勤務時間中の組合活動については無給とすべきものであることが,昭和43年10月15日付けの通知(自治公一第35号行政局長通知)において示されていること,乙第37号証によれば,平成18年度の時点で,企業職員について労働組合がある地方公共団体404のうち,有給職免を認めている公共団体は104しかないことが認められ,これらに照らせば,有給職免による組合活動の違法性は,昭和43年から問題視されていたというべきであり,有給職免の適否について確立した最高裁判例は存在せず,本件有給職免関係管理者が,個々の職免行為の存在と内容を知り得なかったことを考慮しても,本件有給職免関係管理者は,違法な職務免除がされていることを認識し得たものといわなければならないから,上記主張も採用できない。

エ 消滅時効の成立について

 控訴人らは,原判決が,本件有給職免関係管理者に対する請求については,債権発生時において,当該管理者自身が,債権者の代表者であり,かつ債務者であったことになり,自分自身に請求することは利益相反行為に当たり,権利を行使することができるとはいえないから,債務者が債権者の代表者であった間は時効期間が進行せず,代表者が交代した時点から進行する旨説示したことに対し,消滅時効は権利を行使できる時から進行し,時効の進行が停止する場合は,権利を行使する上で法律上の障害が存するとき等に限られるところ,管理者自身が債務者であるということは,法律上の障害ではなく,管理者が自分自身に対する権利を行使しなければ,管理者個人に対する権利を行使するよう求める住民訴訟の提起が可能であることからすれば,上記説示は誤りである旨主張する。
 しかし,消滅時効は権利を行使できる時から進行するが,本件有給職免関係管理者が自分自身に対して有する権利を行使することは極めて困難であるから,本件有給職免関係管理者が管理者の地位にある限り,上記権利を行使することができるとはいえない。また,本件訴訟の経緯に鑑みると,控訴人補助参加人中寺義弘に対する権利を行使するよう求める住民訴訟の提起が可能であったとも認められない。したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。

オ 平成17年度の給与等支給日及び支給額について

 控訴人らは,平成17年度に支払われた本件有給職免関係職員の給与等の額及び支給日は,別紙平成17年度における有給職免職員に対する給与支給日及び支給額明細表の〔1〕のとおりであるから,同表記載の控訴人補助参加人らについては,同表〔2〕のとおり,不法行為に基づく損害賠償債権はいずれも時効により消滅している旨主張するところ,前記のとおり,原判決を補正した。

力 本件総務課長の賠償責任について

 控訴人らは,本件総務課長は職務免除承認及びそれに係る支出命令をしたことについて重過失があったとまではいえないから,本件総務課長に対する賠償責任は認められない旨主張するところ,前記のとおり,原判決を補正した。

キ 自主返納について

 別表1の番号1ないし27の控訴人補助参加人らは,平成25年7月18日,控訴人に対し,原判決で控訴人が同控訴人補助参加人らに請求するよう命じられた各金員の元本及びこれらに対する同日までの遅延損害金を支払い(18日返納部分),別表1の番号29の控訴人補助参加人は,同月31日,控訴人に対し,原判決で控訴人が同控訴人補助参加人らに請求するよう命じられた金員から18日返納部分を控除した金額を支払った旨主張するところ,丙第13号証の1ないし丙第39号証の2及び乙第41号証並びに弁論の全趣旨によれば,別表1の番号1ないし27及び29の控訴人補助参加人らが,控訴人に対し,原判決で控訴人が同控訴人補助参加人等に請求するよう命じた各金員の元本及びこれらに対する同月18日までの遅延損害金を支払ったこと(本件返納)が認められる。

(2) 当審における被控訴人の主張に対する判断

ア 被控訴人は,本件返納がされたとしても,控訴人らは,原判決の認めた支払義務の存在を争っているから,本件返納は債務の弁済ではなく,寄附に当たる旨主張する。
 しかし,弁論の全趣旨によれば,控訴人らは,原判決の認めた支払義務の存在を争うが,仮定的に,それらが違法とされて控訴人にそれらによる損害が発生したとの判断がされる場合にはその損害を填補する趣旨,すなわち,債務弁済の効力を生じさせる目的をもって,本件返納を行ったものであることが認められるから,被控訴人の上記主張は採用できない。

イ 被控訴人は,本件返納により,各支払義務者が支払義務を履行したというのであれば,控訴人は,本件控訴を取り下げるべきである旨主張するが,控訴を取り下げるか否かは,訴訟当事者の自由であるから,上記主張も採用できない。

ウ 被控訴人は,本件返納により,被控訴人の本件請求を棄却する判決を行わざるを得ないとしても,訴訟費用については,1審・2審を通じて,控訴人の負担とすべきである旨主張するところ,前記のとおり,本件返納は,原判決言渡後の平成25年7月18日及び同月31日に,原判決で控訴人が同控訴人補助参加人らに請求するよう命じられた元本部分及びこれに対する遅延損害金の額について支払われたものであること,本件総務課長に賠償命令をすることを求める部分は,当初から理由がないものであったこと,その他本件訴訟の経緯に照らすと,主文のとおりとするのが相当である。

3 以上によると,控訴人に発生した損害・損失は本件返納によって填補されたとが明らかであり,被控訴人の本件請求は全て理由がないからこれを棄却すべきところ,これと異なる原判決の控訴人敗訴部分を取り消し,同取消し部分に係る被控訴人の請求を棄却すべきである。
 よって,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第12民事部