高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【特別休暇訴訟】次回第2回口頭弁論は10月31日

本日午前10時より、大阪地方裁判所にて、高槻市の特別休暇や病気休暇に関する住民訴訟の第1回口頭弁論がありました。次回第2回口頭弁論は10月31日午前10時から。大阪地裁806号法廷です。

訴えの内容は、以前ブログに書きましたが、祭祀休暇等の特別休暇や病気休暇については、高槻市の条例に給与支給の根拠がなく、仮に条例上の根拠があったとしても、明らかに不正取得されていると考えられるので、その休暇分の給与の返還・賠償を求めるものです。

以下は訴状です(一部省略しています)。

訴状

平成25年6月11日
大阪地方裁判所 御中

損害賠償等請求事件

請求の趣旨

(主位的請求)
1 被告市長は,別紙「請求額一覧表」記載の番号1,2,7及び8に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額」欄記載の各金額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
2 被告市長は,別紙「請求額一覧表」記載の番号3乃至6,9乃至14に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額」欄記載の各金額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。
3 被告市長は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇を取得した氏名不詳の市長部局及び教育委員会の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額の金員の支払を請求せよ。
4 被告水道事業管理者は,別紙「請求額一覧表」記載の番号15乃至18に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額」欄記載の各金額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
5 被告水道事業管理者は,別紙「請求額一覧表」記載の番号19乃至23に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額」欄記載の各金額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。
6 被告水道事業管理者は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇を取得した氏名不詳の水道事業の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額の金員の支払を請求せよ。
7 被告自動車運送事業管理者は,別紙「請求額一覧表」記載の番号24乃至27に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額」欄記載の各金額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
8 被告自動車運送事業管理者は,別紙「請求額一覧表」記載の番号28乃至33に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額」欄記載の各金額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。
9 被告自動車運送事業管理者は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇を取得した氏名不詳の自動車運送事業の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額の金員の支払を請求せよ。
10 「高槻市職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例」,「高槻市水道事業就業規則」及び「高槻市自動車運送事業職員就業規則」に規定されている特別休暇及び病気休暇の期間に係る給与の支出を差止める。
11 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

(予備的請求)
1 被告市長は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇の取得要件を満たさないのに,同休暇の取得を承認した氏名不詳の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
2 被告市長は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇の取得要件を満たさないのに,同休暇を取得した氏名不詳の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
3 被告水道事業管理者は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇の取得要件を満たさないのに,同休暇の取得を承認した氏名不詳の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
4 被告水道事業管理者は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇の取得要件を満たさないのに,同休暇を取得した氏名不詳の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
5 被告自動車運送事業管理者は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇の取得要件を満たさないのに,同休暇の取得を承認した氏名不詳の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
6 被告自動車運送事業管理者は,平成15年4月1日から平成25年3月19日までに,特別休暇あるいは病気休暇の取得要件を満たさないのに,同休暇を取得した氏名不詳の職員らに対し,同休暇取得により支給された給与相当額及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
7 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

請求の原因

第1 事案の概要 

 本件は,主意的請求として,高槻市の職員らが,特別休暇又は病気休暇(総称して以下「本件休暇」という。)の取得に当たり,当該休暇取得期間に対応する給与支給を受けたことについて,当該取得に関しては条例上有給とする根拠がないので,当該支給は給与条例主義に反し違法であり,高槻市の執行機関である被告らに対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長,教育長,水道事業管理者及び自動車運送事業管理者を相手方として,不法行為による損害賠償債務として支給した給与等相当額及び遅延損害金の請求をすることを,同じく人事課長又は総務課長の地位にあって専決により給与支給を行った各職員を相手方として,同額の賠償命令をすることを,給与支給を受けた各職員を相手方として,不当利得返還義務として給与等相当額の支払請求をすることを,並びに特別休暇及び病気休暇に係る給与支給の差止めを,それぞれ求めるものである。
  また,予備的請求として,仮に,本件休暇の取得につき,条例上有給とする根拠がある場合であっても,不正取得されたものについては違法であり,高槻市の執行機関である被告らに対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該不正取得を承認した職員を相手方として,不法行為による損害賠償債務として支給した給与等相当額及び遅延損害金の請求をすることを,当該不正取得により給与支給を受けた各職員を相手方として,損害賠償債務及び不当利得返還義務として給与等相当額及びこれに対する利息の支払請求をすることを,それぞれ求めるものである。

第2 関係法令の定め

1 教育委員会,水道部及び交通部の設置

 高槻市は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律2条に基づき,教育委員会を設置している。
 高槻市は,地方公営企業法2条1項1号に定める地方公営企業として,高槻市水道事業及び高槻市自動車運送事業を設置し,同法14条の規定に基づき,同事業の管理者らの権限に属する事務を処理させるため,水道事業は水道部を,自動車運送事業は交通部を,それぞれ置いている。

2 給与条例主義

 地方自治法は203条4項及び204条3項において,報酬,給料,手当の額並びにその支給方法は条例で定めなければならない旨定めるとともに,204条の2において,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには職員に支給してはならないと定めている。
 また,地方公務員法24条6項は,職員の給与,勤務時間その他勤務条件は条例で定めることとし,同25条1項は,これに基づかずにはいかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならないと定めている。

3 特別休暇及び病気休暇

(1)法律の定め
 特別休暇及び病気休暇については,法律上の定めはない。
 民間事業者におけるこれらの休暇についての定めは当該事業者の任意である。すなわち,「特別休暇」や「病気休暇」と一般に呼ばれているものは,法的には有給とする義務のない休暇であり,有給にするか無給にするかといった給与支給の扱いや,休暇を認める理由,その名称についてすらも,各事業者が任意に定めているだけのものなのである。もちろん,ノーワーク・ノーペイの原則により無給としても差し支えがない。また,事業者が,こうした休暇を有給にするか無給にするかについては,労働基準法89条1号により,就業規則に絶対的に記載しなければならないとされている(甲13)。
 厚生労働省労働基準局監督課が作成したモデル就業規則には下記の記載がある(甲17の58頁)。
               記
 産前産後の休業期間,育児時間,生理休暇,母性健康管理のための休暇,育児・介護休業法に基づく育児休業期間,介護休業期間及び子の看護休暇期間,裁判員等のための休暇の期間,慶弔休暇,病気休暇,休職の期間を無給とするか有給とするかについては,各事業場において決め,就業規則に定めてください。
また,有給とする場合は,例えば「通常の賃金を支払う」,「基本給の○○%を支払う」とするなど,できるだけ具体的に定めてください。

(2)高槻市における定め
 高槻市の市長部局及び教育委員会の職員については,高槻市職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例(平成2年高槻市条例第28号。以下「勤務時間条例」という。甲4。)5条の4で,職員の休暇は,年次有給休暇,病気休暇,特別休暇及び介護休暇とすると規定し,同5条の6で,病気休暇を,職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり,その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合における休暇とし,5条の7第1項で,特別休暇を,選挙権の行使,結婚,出産,交通機関の事故その他の特別の事由により職員が勤務しないことが相当である場合として規則で定める場合における休暇としている。
 また,高槻市職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例施行規則(平成2年規則第31号。以下「勤務時間規則」という。甲5。)では,特別休暇を19種類とし,それぞれの期間につき,ドナー休暇は必要と定める期間,ボランティア休暇は1年度につき5日の範囲内の期間などと定めている。
 水道事業の職員については,高槻市水道事業就業規則(昭和59高水管理規程第10号。以下「水道事業就業規則」という。甲6)21,23及び24条に,自動車運送事業の職員については,高槻市自動車運送事業職員就業規則(平成2年高交管理規程第10号。以下「自動車運送事業就業規則」という。甲7)20,22条及び23条に,それぞれ,上記と同様の定めがある。

(3)本件休暇は無給とすべきこと
 高槻市の条例及び規則,並びに水道事業及び自動車運送事業の就業規則には,本件休暇の期間について,これらを有給として扱うとか,あるいは当該休暇期間につき給与から減額しないとかの定めは,どこにもない。したがって,給与条例主義及び労働基準法に照らせば,本件休暇については,無給として扱い,給与から減額しなければならない。
 (1)記載のとおり,民間事業者ですら,就業規則で定めなければならないとされているのであるから,高槻市の条例等に有給とする定めがない以上,本件休暇の期間については,無給としなければならないことは明らかである。

4 市長部局及び教育委員会の一般職の職員の給与に関する定め

(1)給料及び手当
 高槻市の市長部局及び教育委員会の職員に対する給与に係る事項については,一般職の職員の給与に関する条例(昭和32年高槻市条例第357号。以下「給与条例」という。甲1。)及び一般職の職員の給与に関する条例施行規則(昭和33年高槻市規則第142号。以下「給与規則」という。甲2。)に規定されている。
 給与条例2条は,月例給与につき,正規の勤務時間による勤務に対する報酬たる給料及び手当で構成することを定め,給与条例10条は,給料の算定期間を月の1日から末日までとし,毎月1回その月の15日に,その月の月額の全額を支給する旨定めている。
 また,給与条例23条1項は,勤勉手当につき,毎年6月1日及び12月1日(基準日)にそれぞれ在職する職員に対し,基準日以前6か月以内の期間におけるその者の勤務成績に応じて,それぞれ基準日の属する月の市長が定める日に支給する旨定めている。勤勉手当の支給額は,給与条例23条2項の勤勉手当基礎額に,一般職の職員に支給する期末手当及び勤勉手当に関する規則(昭和60年高槻市規則第4号。以下「期末手当等規則」という。甲3。)11条の期間率と同規則14条の成績率を乗じて得た額とされている(給与条例23条2項,期末手当等規則10条)。

(2)給与の減額
 給与条例15条は,職員が勤務しないときは,その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合を除くほか,その勤務しない1時間につき,勤務1時間当たりの給与額を減額して給与を支給する旨を定めており,給与規則25条は,上記規定による給与の減額は,当該減額すべき給与額を次の給与期間以降の給料及び地域手当から差し引く方法による旨を定めている。また,勤勉手当についても,給与の額を減額された期間に応じて減額されるものとされている(給与条例23条1項,2項,期末手当等規則10条,11条,12条2項4号)。

5 水道事業及び自動車運送事業の企業職員の給与に関する定め

(1)給料及び手当
高槻市水道事業の職員に対する給与については,高槻市公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例(昭和41年高槻市条例第689号。以下「公営企業職員給与条例」という。甲8。)及び高槻市水道事業職員給与支給規程(昭和42年高水管理規程第1号。以下「水道事業給与支給規程」という。甲9。)に規定されているほか,給与条例又は技能職員の給与の種類及び基準を定める条例(平成14年高槻市条例第3号。以下「技能職員給与条例」という。甲10。)によることとされている(水道事業給与支給規程15条)。
 高槻市自動車運送事業の職員に対する給与については,公営企業職員給与条例及び高槻市自動車運送事業職員給与支給規程(昭和33年高自管理規程第8号。以下「自動車運送事業給与支給規程」という。甲11。)に規定されているほか,給与条例又は技能職員給与条例によることとされている(自動車運送事業給与支給規程12条)。
 公営企業職員給与条例2条は,月例給与につき,正規の勤務時間による勤務に対する報酬たる給料及び各種の手当(地域手当を含む。)で構成することを定め,給与条例10条は,給料の算定期間を月の1日から末日までとし,毎月1回その月の15日に,その月の月額の全額の給料を支給する旨定めている。
 また,公営企業職員給与条例14条及び給与条例23条1項は,勤勉手当につき,毎年6月1日及び12月1日(基準日)にそれぞれ在職する職員に対し,基準日以前6か月以内の期間におけるその者の勤務成績に応じて,それぞれ基準日の属する月の市長が定める日に支給する旨定めている。勤勉手当の支給額は,給与条例23条2項の勤勉手当基礎額に,期末手当等規則11条の期間率と同規則14条の成績率を乗じて得た額とされている(給与条例23条2項,期末手当等規則10条)。

(2)給与の減額
 公営企業職員給与条例16条1項は,職員が正規の勤務日又は勤務時間中に勤務しないときは,その勤務しないことにつき管理者の承認があった場合を除くほか,その勤務しない1時間につき,勤務1時間当たりの給与額をその者に支給すべき給与の額から減額する旨を定めており,給与支給規程4条の3は,上記規定による給与の減額は,当該減額すべき給与額を次の給与期間以降の給料及び地域手当から差し引く方法による旨を定めている。また,勤勉手当についても,給与の額を減額された期間に応じて減額するものとされている(給与条例23条1項,2項,期末手当等規則10条,11条,12条2項4号)。

6 本件休暇の承認

 本件休暇の取得についての任命権者の承認は,専決事項として,市長部局においては,副市長,部長,部長代理,課長,所長,チームリーダーに専決権が与えられており,市長部局以外の部局においても,市長部局に準じて任命権者の承認がされている(甲16の6頁12乃至16行目)。直属の上司が,部下の本件休暇取得の承認を行っているのである。
当該承認の専決の根拠規定は,それぞれ,市長部局が,高槻市事務決裁規程(甲18)別表第1の(第6条,第7条関係)共通専決事項の「2 人事に関する事項」(3),消防本部が,高槻市消防事務決裁規程(甲19)別表第1(第6条,第7条関係)共通専決事項(20),教育委員会が,高槻市教育委員会事務決裁規則(甲20)別表第1(第6条,第7条関係)共通専決事項の「2 人事に関する事項」(3),水道事業が,高槻市水道事業事務決裁規程(甲21)別表第1の「2 人事に関すること。」(3),自動車運送事業が,高槻市自動車運送事業事務決裁規程(甲22)別表第1(第6条関係)共通専決事項表「2 人事に関する事項」(3)である。
なお,この承認は,本件休暇の取得だけについての承認であって,これを有給とする承認は含まれていない。

7 給与支給の承認

給与支給については,第3の3項(2),4項(2),5項(2)及び6項(2)記載の課長らが,専決権者として専決していた。
具体的には,市長部局及び消防本部については総務部人事課で,教育委員会については教育管理部総務課で,水道事業については水道部総務企画課で,自動車運送事業については交通部総務課で,それぞれ,担当職員が,本件休暇取得の承認を直属の上司から得た職員らの出退勤や休暇等の勤務状況を確定させて給与計算を行い,専決権者として同課の課長がこれを決裁することにより,当該職員が本件休暇の承認を受けた期間については給与を減額しなければならなかったのに,給与を減額することなく,給与等の支給が行われていた(本件休暇の取得がされた翌月以降においても,本件休暇の期間に係る給与の減額が行われることはなく,勤勉手当の額についても給与の減額が行われていないことを前提として計算されていた。)(甲23乃至25の住民訴訟の判決で以上と同様の給与計算・決裁の手続き及び給与支給の専決権者が認定されている。)。
当該給与支給の専決の根拠規定は,それぞれ,市長部局及び消防本部が,高槻市事務決裁規程(甲18)別表第1の(第6条,第7条関係)共通専決事項の「3 財務に関する事項」の「(38) 軽易,定例又は既定標準による公課,納金,繰替金,補給金,負担金,保険料その他これに準ずるものの支出を行うこと。」(甲24の5頁14行目乃至6頁5行目で認定されている。),教育委員会が,高槻市教育委員会事務決裁規則(甲20)別表第1(第6条,第7条関係)共通専決事項の「3 財務に関する事項」の「(24) 軽易,定例又は既定標準による公課,納金,繰替金,補給金,負担金,保険料その他これに準ずるものの支出を行うこと。」(甲25の5頁13行目乃至6頁5行目で認定されている。),水道事業が,高槻市水道事業事務決裁規程(甲21)別表第2「2 総務企画課に関する事項」(16),自動車運送事業が,高槻市自動車運送事業事務決裁規程(甲22)別表第2(第6条関係)「1 総務企画課に関する事項」(17)である。
同課長らは,2乃至5項の定めに基づき,本件休暇の期間については,給与から減額しなければならなかったところ,これをせず,本件休暇を有給扱いとしてきたのである。

8 本件休暇の承認と給与支給の承認は別のものであること

 高槻市監査委員は,本件訴訟に前置した住民監査請求の監査結果において,甲23の住民訴訟の判決の一部を強引に引用し,本件休暇と給与支給の承認は表裏一体の関係であって,本件休暇の承認が給与を減額しない承認でもあるとの独自の判断を下している。
 しかし,前々項及び前項のとおり,本件休暇の承認は各部署において直属の上司が決裁する人事に関する承認であり,給与支給の承認は人事課や総務課などの給与担当課における財務に関する承認であって,決裁を行った専決権者も違っており(上記住民訴訟の事件では専決権者は同じであった。),両承認はまったく別のものであることは明らかであるから,同監査委員の判断は誤っているものといわざるをえない。

第3 当事者など

1 原告らは,高槻市の住民である。

2 被告は,高槻市長,高槻市水道事業管理者及び高槻市自動車運送事業管 理者である。同市長は市の執行機関であり,同管理者らは当該業務の執行に関して高槻市を代表する権限を有する執行機関である(地方公営企業法8条1項本文)。

3 市長部局

(1)市長
 下記の者は,下記の期間,高槻市長の職にあった。


(2)人事課長
 下記の者は,下記の期間,高槻市総務部人事課の課長であり,専決権者として,市長部局の職員への給与支給の決裁を行った。


4 教育委員会

(1)教育長
 教育長は,地方公務員法6条1項に定める高槻市教育委員会の職員の任命権者であり,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどり,教育委員会の事務局について事務局の事務を統括し,所属の職員を指揮監督する(地方教育行政組織運営法17条及び20条)。下記の者は,下記の期間,高槻市教育委員会教育長の職にあった。


(2)総務課長
 下記の者は,下記の期間,高槻市教育委員会教育管理部(平成19年3月31日までは管理部)総務課の課長であり,専決権者として,教育委員会の職員への給与支給の決裁を行った。


5 水道事業

(1)管理者
 下記の者は,下記の期間,高槻市水道事業管理者の職にあった。


(2)総務企画課長
 下記の者は,下記の期間,高槻市水道部総務企画課(平成24年3月31日までは総務課)の課長であり,専決権者として,水道事業の職員への給与支給の決裁を行った。


6 自動車運送事業

(1)管理者
 下記の者は,下記の期間,高槻市自動車運送事業管理者の職にあった。


(2)総務課長
 下記の者は,下記の期間,高槻市交通部総務課(平成24年4月1日から平成25年3月31日までは総務企画課)の課長であり,専決権者として,自動車運送事業の職員の給与支給の決裁を行った。


第4 違法行為

1 本件休暇の場合は給与を減額しなければならないこと

 高槻市の条例,規則及び就業規則には,本件休暇につき,有給とする定めはない。また,下記のとおり,給与条例等において,職員が勤務しないときは1時間単位で給与を減額する定めがあるが,本件休暇の場合は減額する場合から除くなどといった例外規定もない。したがって,本件休暇の場合は,給与を減額しなければならない。

○一般職の職員の給与に関する条例(甲1)
(給与の減額)
第15条 職員が勤務しないときは,その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合を除く外,その勤務しない1時間につき,第19条に規定する勤務1時間当たりの給与額を減額して給与を支給する。
高槻市水道事業職員給与支給規程(甲9)
(規定の準用)
第15条 この規程に定めるもののほか,職員の給与の額及び支給方法等については,給与条例又は技能職員の給与の種類及び基準を定める条例(平成14年高槻市条例第3号)の適用を受ける職員の例による。
高槻市自動車運送事業職員給与支給規程(甲11)
(規定の準用)
第12条 この規程に定めるもののほか,給与の額及び支給方法等については,給与条例又は技能職員の給与の種類及び基準を定める条例(平成14年高槻市条例第3号)の適用を受ける職員の例による。
○技能職員の給与に関する規則(甲12)
(給与の減額)
第11条 技能職員が勤務しないときは,その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合を除き,その勤務しない1時間につき,勤務1時間当たりの給与額(給与条例第19条の規定に準じて算定した額をいう。)を減額して給与を支給する。

2 違法性

 第2及び前項のとおり,職員が本件休暇を取得した場合,その期間に係る給料及び手当を支給してはならない。しかし,平成25年3月18日の高槻市議会総務消防委員会において,高槻市が,これらについて有給として扱い,給与を減額することなく,職員に給与を支給していたことが明らかとなった。
 この給与支給は,給与条例主義に反し違法であることは明白である。

3 他の自治体は休暇を減額しない規定を設けていること

 甲26及び27のとおり,大阪府茨木市吹田市摂津市豊中市枚方市寝屋川市東大阪市など,高槻市の近隣の自治体では,休暇については,給与を減額する場合から除く旨の規定が条例に明記されている。
 近隣各自治体がこうした規定を条例に設けているにもかかわらず,高槻市は設けていないのである。高槻市が,本件休暇を有給としたかったのであれば,近隣各自治体と同様の規定を,条例や就業規則に設けていたはずである。条例等に設けていない以上,やはり,高槻市においては,給与条例主義等に基づき,本件休暇の期間を無給としなければならない。

4 不正取得

 仮に,本件休暇の取得につき,条例上有給とする根拠がある場合であっても,不正取得がされたものについては違法である。
 人事課が作成した「平成23年度 休暇等部局別平均取得日数」(甲14)によると,一部局における1年間内の祭祀休暇の取得率が,市長部局では約33.3%,教育委員会で19.7%であるのに対して,水道部は約56.6%,交通部は約88.6%,消防本部も約80.2%と,数倍もの異常に高い取得率となっている。そもそも、上記のとおり、祭祀休暇は、身内の祭祀といった特別な場合にのみ認められる休暇を指すものであり、一年間でもそれほど出くわすこともない事由が生じた時の休暇である。にもかかわらず、水道部では半数以上の者が、交通部や消防本部に至っては8割の者が所得しており、極めて異常な取得率である。
 また,病気休暇については,その平均取得日数が,交通部で18.5日,消防本部で15.4日であるのに対して,水道部で39.6日,教育委員会で38.1日,市長部局で30.9日と異常に長くなっている。通常病気といっても、例えば風邪やインフルエンザ等の一時的な病気で休暇することになっても、一週間程度で回復することが多く、また長期間治療が必要な者がいたとしても、年間に大多数の者が長期間治療が必要な状態になることは考えにくい。
 こうした差異は,統計上明らかに異常であるから,不正取得がされていることは明白である。

第5 損害と正当な理由

1 市の損害

(1)職員1人あたりの日当相当額
高槻市の給与・定員管理等について(平成25年4月公表分)(甲15)によれば,職員の初任給のうち,一番低いものは,平成24年4月1日現在で,「技能労務職」の「中学卒」で13万7200円である。また,期末手当は2.60月分,勤勉手当は1.35月分である。したがって,職員の最低年収は13万7200円×(12月分+2.60月分+1.35月分)=218万8340円であるから,日当相当額は,218万8340円÷365日=5995.5円≒6000円を下回らない。よって,以下,日当相当額を6000円として損害額を算定する。
(なお,職員1人当たりの給与費は618万9000円となっているから(甲15の1頁。これに基づき日当相当額を計算すると約1万7000円になる。),実際にはこの数字を平均年収として損害額を算定したほうが,実際の損害額により近い数字になると考えられる。)

(2)本件休暇を有給としたことによる年間損害額
 別紙1乃至5は,「平成23年度 休暇等部局別平均取得日数」(甲14)に記載された特別休暇及び病気休暇の取得日数を部署ごとにまとめたものである。これに日当相当額を乗ずると,下記のとおり,年間の損害額が算定できる。

市長部局 2万2662.4日×6000円/日
=1億3597万4400円
教育委員会 3984.1日×6000円/日
=2390万4600円
水道事業(水道部) 1215.7日×6000円/日
=729万4200円
自動車運送事業(交通部) 2317.6日×6000円/日
=1390万5600

(3)各人の損害賠償額
上記より各人への請求額を算定すると,別紙請求額一覧表記載のとおりとなる。

(4)不正取得による損害額
 第4の4項記載のとおり,特別休暇のうち,祭祀休暇の取得率が,市長部局では約33.3%,教育委員会で19.7%であるのに対して,水道部は約56.6%,交通部は約88.6%,消防本部も約80.2%である。
 市長部局の取得率が正常値とすれば,水道部は約56.6%-約33.3%=約23.3%,交通部は約88.6%-約33.3%=約55.3%,消防本部は約80.2%-約33.3%=約46.9%が,それぞれ,取得者のうち不正取得した職員の割合と考えられる。
 すると,1年間の損害額は,それぞれ,水道部で6000円/日×113人×23.3%=15万7974円,交通部で6000円/日×219人×55.3%=72万6642円,消防本部で6000円/日×324人×46.9%=91万1736円となる。
 また,病気休暇については,その平均取得日数が,交通部で18.5日,消防本部で15.4日であるのに対して,市長部局で30.9日,教育委員会で38.1日,水道部で39.6日である。正常値を交通部の18.5日とすれば,不正取得された日数の平均は,それぞれ,市長部局で30.9日-18.5日=12.4日,教育委員会で38.1日-18.5日=19.6日,水道部で39.6日-18.5日=21.1日である。
 すると,1年間の損害額は,それぞれ,市長部局で6000円/日×118人×12.4日=877万9200円,教育委員会で6000円/日×15人×19.6日=176万4000円,水道部で6000円/日×8人×21.1日=101万2800円となる。
(5)求釈明
 被告は,平成15年4月1日から平成25年3月31日において,特別休暇及び病気休暇につき,いつ,誰に,何円支払ったのか明らかにされたい。また,祭祀休暇及び病気休暇の取得者・取得日・取得理由・診断書・決裁権者も明らかにされたい。

2 正当な理由
 本件休暇が有給扱いされていたことについては,条例等からはまったく分からないし,住民が,職員の給与明細や市役所の給与システムを見たりすることはできないのであるから,平成25年3月18日の高槻市議会総務消防委員会で明らかになるまで,第4記載の違法行為がされていたことを知ることはできなかった。
 したがって,地方自治法242条2項ただし書きの「正当な理由」がある。

第6 任命権者,専決権者及び給与受給者の責任

1 給与支給の専決権者の責任
 第3の3項(2),4項(2),5項(2)及び6項(2)記載の者らは,違法に第4記載の給与支給を専決し,第5記載の損害を市,水道部又は交通部に与えた。
 したがって,同人らは,故意又は重過失により違法な財務会計行為をしたというべきであるから,高槻市等に生じた第2の4記載の損害につき,地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負う。

2 任命権者の責任
 第3の3項(1),4項(1),5項(1)及び6項(1)記載の者らは,任命権者として,1項記載の給与支給の専決権者らの違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務があったにものに,これを阻止しなかった。同給与支給は,条例上の根拠を欠き,給与条例主義に反することは明らかであるから,同人らの指揮監督義務違反は故意又は過失によるものといえる。
 したがって,同人らの指揮監督上の義務違反は不法行為に当たり,同人らの監督する部署において生じた上記損害につき賠償する責任がある。

3 給与受給者の不当利得返還義務
 第4記載の違法行為により賃金を支給された者らについては,氏名が不詳であるが,違法な給与支給を受けたのであるから,不当利得が存在することは明らかであり,同人らにはこれを返還する義務がある。

第7 住民監査請求
 原告らは,平成25年3月19日に,本件に関し,高槻市監査委員に対して,地方自治法第242条第1項に基づく住民監査請求を行ったところ,高槻市監査委員は,原告らに対し,不当にも請求を棄却する旨の通知(甲16)を行い,これを,原告らは平成25年5月15日以降に受け取った。