高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【勤務変更でカラ勤務】住民訴訟を提起

高槻市バス「勤務変更でカラ勤務」訴訟

高槻市バスの労働組合の役員らへの新たな利益供与。労組の会議への出席という労組役員らの都合により、遅番から早番等への勤務変更を市バス当局が認めた際、上の図のように、勤務時間に差異が生じた場合、無駄な待機勤務を命じたり(その分も給与を支給)、必要のない時間外勤務手当をつけたりしている問題について、住民訴訟を提起しました(住民監査の結果はこちら)。

住民訴訟では、訴えの範囲を平成23年度のものだけにしました。本当はそれ以前のものも含めたかったのですが、資料が非常に多く、23年度分をエクセルで集計するだけでも丸3日かかり(裁判所からの指摘で修整したものを含めるともっと)、時間の都合から範囲を絞らせていただきました。

第1回口頭弁論は7月10日10時15分から、大阪地裁806号法廷と決まりました。是非傍聴にお越しください。

以下は訴状の一部です。

第2 不要な待機と時間外手当による「カラ勤務」と「ヤミ手当

1 本件労組の要請による勤務変更

 被告が運行する高槻市営バスの乗務員(運転手の職員)は、正規職員の場合、1年間計1860時間の変形労働による実労働時間制(拘束時間から休憩時間を除いたもの。)で勤務し、乗務員それぞれに、あらかじめ輪番表なるものが配られ、その輪番に沿って勤務が割り振られている。
 乗務員の仕業(勤務シフト)には、大まかに、A勤(早番。朝から昼くらいまでの勤務。)B勤(遅番。昼過ぎから夜までの勤務。)、C勤(朝夕の勤務。朝夕のラッシュアワー時に勤務し、便数の少ない昼間は中休みとなっている勤務。C仕業の前半は「C上仕業」、中休み後の後半は「C下仕業」と呼ばれている。)の3種類がある(その他、臨時や貸切、待機等の勤務形態がある)。
 本件労組の役員らは、15時30分から開催する本件労組の会議に出席できるよう仕業を変更することを要請する「仕業変更願」(甲1)を被告管理者(徳田忠昭)宛てに提出し、被告芝生営業所長(鋸谷邦宏)が専決権者としてこれを認める決裁をしていた(甲2)。これにより、本件労組役員らは、輪番から外れ、B勤(遅番)あるいはC勤(朝夕の勤務)から、A勤(早番)等に勤務変更がされた(以下「本件勤務変更」という。)。
 なお、高槻市交通部には、2つの労働組合があるが、このような労組要請による勤務変更が認められていたのは本件労組だけである。

2 本件勤務変更による待機と時間外勤務

 本件勤務変更により、変更前と変更後に勤務時間の差異が生じたとき、被告は、その時間が、変更前よりも短い場合は、不足分を待機勤務とし、長い場合は、超過分を時間外勤務としている(以下、勤務変更により生じた待機勤務の時間を「本件待機時間」、勤務変更により生じた時間外勤務の時間を「本件時間外勤務時間」という。)。本件待機時間については、給与の支給対象となっており、本件時間外勤務時間については、時間外勤務手当が支給されている。
 ただし、本件時間外勤務時間には、適法な時間外勤務ではない場合が含まれていることは、4項記載のとおりである。

3 不要な待機

 ところで、乗務員の待機の種類に関しては、平成21年の9月議会で、当時の管理者が下記のとおりの答弁をしている。



 待機の種類というご質問でございます。これにつきましては、我々といたしましては種類というふうには受けとめてないんですが、基本的には待機ということで考えておりますけれども、基本的な部分での先ほど申し上げました午前4人、午後6人については、それぞれ、いわゆる固定予備というふうな形で呼んでおりますけれども、これはこういった形で1人の職員に当てはめますと、大体4週間に1回ぐらいがこの予備勤務に当たるわけでございますけれども、そういった形の予備勤務、これは基本的には1日7時間、通常の一般の仕業の時間に該当するような時間帯になると思いますけれども、そういった待機者。 
 それから、先ほど申し上げておりますように、いわゆる超過勤務命令を出した中で、仕業表の中では休憩時間というふうに書いておる部分もありますけれども、その部分については、我々としては待機命令という形で時間外勤務命令を出しておりますので、そういったものの待機者。 
 それから、仕業表に基づきまして通常の時間の中で1時間ぐらい、最後の時間ですけれども、待機時間というふうな形で待機をさせている場合もございます。そういった意味からいたしますと、大きくは3つの待機者という形に我々としては考えております。 
 それから、いわゆる組合四役の、以前そういう形で固定でやっておった部分がありますけれども、この勤務につきましては、現在もそのまま適用いたしておりまして、これは全乗務員のローテーションによりまして適用をさせていただいております。 

 つまり待機命令には3つのパターンがあるとしているのである。すなわち、第1のパターンは固定予備と呼ばれるもので、4週間に1回ほど通常の仕業の時間帯に1日7時間待機するもの。第2の待機パターンは、一部の超過勤務の場合に仕業表上休憩時間とされている部分を待機とするもの。 第3のパターンは、かつての労組幹部優遇ダイヤの後半のヤミ専従時間であり、仕業表には何も書かれていないが、通常の仕業時間の最後に1時間前後、待機させていると称するものである。 
 このように、待機には3パターンしかなく、この中に本件のような勤務変更によるものはない。また、上記のとおり他に待機者がいるのに、勤務時間変更によって不定期かつ唐突に生じる中途半端な時間(数分から1時間程度)に待機させるのは、明らかに不必要というほかはなく、本件待機時間につき給与を支給するのは違法といわざるをえない。

4 違法な時間外勤務

 高槻市公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例(甲7)9条は「時間外勤務手当は、正規の勤務時間以外に勤務することを命ぜられた職員に対して、正規の勤務時間をこえて勤務した全時間について支給する。」としている。交通部職員の正規の勤務時間は、年1860時間であり、これを超えた場合に時間外勤務手当が支給されるところ、本件時間外勤務時間は、正規の勤務時間を超えたものかどうか、その時点では分からないにもかかわらず、被告は、無条件に、時間外勤務手当の支給対象として賃金を支出している。これは明らかに違法な支出であるといわざるをえない。

5 法の定めと違法性

 地方自治法2条14項並びに地方財政法4条1項及び8条では最小経費最大効果原則が定められ、地方公営企業法3条及び高槻市自動車運送事業の設置等に関する条例2条では、「常に企業の経済性を発揮」して運営することが定められている。また、前項のとおり、交通部においては実労働時間制が採られている。
 したがって、実際には労働がされていない時間を、合理的な理由もなく「勤務時間」扱いにして、これに対し賃金を支出することは、裁量範囲の逸脱濫用であり、違法である。また、実際には、時間外勤務ではないのに、時間外勤務として扱って、手当を支給することも違法である。これらのことは、「ノーワーク・ノーペイの原則」からしても、違法である。
 こうした違法な賃金の支給を、本件労組役員らに対して行うことは、労働組合法7条3号にも反する。

第3 管理者、所長及び本件労組役員らの責任等

1 所長の不法行為に基づく損害賠償義務

 本件労組の要請に基づき勤務変更を許可したのは所長である。
 本件勤務変更の許可自体は財務会計行為ではないが、この所長の決裁に基づき給与が支給されたのである。
 乗務員の勤務内容につき、ダイヤに基づいて1日の仕業内容を決定しているのは企画室であるが、本件待機時間に関する指示は企画室では行っておらず、所長がしているものと考えられるから、その責任は所長に帰すべきである。
 また、本件時間外勤務時間の指示についても、本件勤務変更の許可に基づきされていると考えられることから、この責任についても所長が負うべきである。
 賃金の支出は財務会計行為であるが、この原因先行行為たる本件勤務変更が違法であれば、後行行為たる賃金支出もその違法性を継承することは、判例上明らかである(例えば、最高裁昭和58年7月15日判決、最高裁昭和52年7月13日判決など)。
 したがって、本件勤務変更につき決裁を行った所長が、違法に支出された賃金相当額の損害を賠償する義務を有する。

2 管理者の損害賠償責任

 管理者には、所長の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務があったのに、これを阻止しなかった。したがって、管理者の指揮監督義務違反は不法行為に当たり、交通部に生じた損害たる上記違法に支出された賃金相当額につき賠償する責任がある。

3 本件労組役員ら不当利得返還義務

 本件労組役員ら各人が、本件待機時間及び本件時間外勤務時間につき支給された賃金については、不当利得にあたるから、各人は返還の義務を負う。

第4 交通部の損害及び各人に対する請求額

1 交通部の損害

 本件待機時間及び本件時間外勤務時間を対象として支出された賃金相当額が交通部の損害である。
 原告北岡は、平成24年1月6日付で、乗務員職員に係る勤務変更に関し、勤務時間に差異が生じた場合、待機なのか時間外勤務なのか、またそれが何時間何分なのかがわかる文書を開示せよ等と、情報公開請求したところ、仕業変更願及び時間外命令簿が公開された(甲10)。これを基に作成したのが別紙1の表である。
 しかし、被告の情報開示が不十分なため、本件時間外勤務時間のものしか分からず、本件待機時間については、まったく明らかになっていない。
 また、時間外勤務についても、実際にどれだけ各乗務員が時間外勤務をしたのか、各乗務員の時間給相当額等が不明であり、正確な時間外勤務手当の算定は不可能であった。
 そこで、やむなく、本件勤務変更1回につき100円の損害が出ているものとして推定した。それをまとめたのが、別紙請求額一覧表である。