高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【京大農場】国補助金の悪用はやめ、中枢機能の耐震化を!

高槻市が、京大農場を防災公園にしようとしているのは、単に、国からの補助金が目当てだということはこれまでも書いてきました

この補助金というのは、「防災公園街区整備事業」の適用を受ければ、国から費用の3分の1を賄ってもらえるというものなのですが(ただし、国土交通省の外郭団体のURに工事をさせるのが条件)、先日の総務消防委員会で、あらためて、「防災公園街区整備事業」の趣旨を尋ねました。すると、高槻市の答弁は・・・

 防災公園街区整備事業は、地方公共団体の要請に基づき、既成市街地の防災機能の強化を図ることを目的として、用地を取得するとともに、防災公園と周辺市街地の整備改善を一体的に実施する事業です。



というものでした。これを読むと、「地方公共団体の要請」ありきの補助金のように感じさせられます。

けれども、UR(都市再生機構)のサイトでは、次の説明がされています。

 災害に対し脆弱な構造となっている大都市地域等の既成市街地において、防災機能の強化を図ることを目的として、地方公共団体の要請に基づき、工場跡地等を機動的に取得するとともに、防災公園と周辺市街地の整備改善とを一体的に実施する事業です。



災害に対し脆弱な構造」の市街地の「防災機能の強化を図ることを目的」とすることが前提なのです。したがって、「地方公共団体の要請」というのは、その前提がなければ、却下されるべきものなのです。

両者の説明を見比べてみれば一目瞭然ですが、高槻市の答弁はごまかしであり、行政のテクニックなのかもしれませんが、不誠実なものといわざるをえません。

URのサイトには、

 [1]から[5]のいずれかの地域において、木造の建築物が密集しており、かつ十分な公共施設がないこと
 その他当該地域の土地利用の状況から防災機能が確保されていないと認められる市街地が存する地域・・・



とあり、ややこしい諸条件が挙げられていますが、そのイメージとしては、URのサイトにも以下の図が示されているとおり、

「防災公園街区整備事業」のイメージ

住宅密集地において、工場などが立ち退いた際に、それを幸いとして、工場跡地などを買い取って、防災公園にするというものです。

内閣府のサイトにも同じような事例が示されていますが、それが防災公園街区整備事業の趣旨に沿った、本来の姿なのでしょう。

では、京大農場周辺は、「災害に対し脆弱な構造」なのでしょうか。京大農場北隣の「安満遺跡グラウンド」は準広域避難地に指定されていますし、農場や果樹園といったオープンスペース(燃えるようなものがあまりないような空間)があって、むしろ、火災などには強いと考えられます。

農地は災害に弱いのか?市街化区域内の500平米以上の農地等で行政から指定を受けたものを「生産緑地」というのですが、「平成20年度第2回高槻市都市計画審議会」で高槻市は、

A委員: 案件には賛成ですが、生産緑地地区は毎年1haぐらい減っている。緑を守り温暖化を防止することや災害発生時の避難地確保等の観点から、追加指定を考えてほしい。
事務局: 生産緑地には、緑地・保水機能、防災機能等多面的な機能があることを理解しています。



と述べています。農地には防災機能があることを高槻市も認めているわけです。

総務消防委員会では、農場を防災街区整備事業として整備した例はあるのかとも訊いてみましたが、「URから事例はないと聞いております。」との答弁でした。

災害に強い京大農場に、「災害に対し脆弱な構造」の場所を対象とする「防災公園街区整備事業」を適用するのは、事業の趣旨にまったく反するのです。こういうことをするのは、国の補助金をだまし取る詐欺のような行為だと思います。

サッカースタジアムには防災機能をもたせるという話がありますが、もし3万人も観客がいる時に災害が起きたらどうなるのか?3万人が寝泊まりできるのか?・・・そのことを、ガンバ大阪の役員の方に尋ねたところ、「1000人分くらいは考えていますが・・・」と言葉を詰まらせました。そうした場合、周辺住民が避難してきても人が溢れることになりますから、むしろ逆に、防災上は危機が増すと考えられます。

8月5日の史跡整備等特別委員会では、東日本大震災が発生した際の東京ディズニーランドの例を挙げましたが、多くの来場者が見込まれる施設の場合は、ディズニーランドのように、備蓄と緊急時のマニュアル、スタッフの教育が必要です。防災施設も兼ねているという以上、そこまで想定し用意できないのであれば、スタジアムもその他の施設も、認めるわけにはいきません。

高槻市は、市の中心部に中枢機能があるから、京大農場を防災公園にするというような答弁を、9月9日の本会議でもしていたのですが、「中枢機能とは何を指しておられるのでしょうか?重要な順にお答えください。」と尋ねたところ、

本市の中心部には、市役所や消防署等の行政機能、交通の要衝である国道や鉄道、また、銀行や郵便局、飲食業等、市民生活に必要な主要機能が集積しているという意味で整理しております。



とのことでした。そこで、「現状においては、これらをどのように守り、あるいはバックアップする計画なのでしょうか?」と尋ねると、

 市役所庁舎については、地震時には総合センターが防災対策本部機能を担うこととしており、消防署所については、全て耐震化しております。



との答弁でした。行政の中枢機能といえば、どう考えても最重要なのが、市長や副市長のいる市役所本館なのです。それは耐震化されているのかと訊くと、「検討している」といった答え。この質問は、少々意地悪かなと思いましたが、濱田新市長に問題を認識してもらうためにあえてしました。

以前当ブログに書いたとおり、市役所本館、三島救命救急センター、高槻島本夜間休日応急診療所、市民会館といった市の重要施設については、耐震化の具体的な計画すらないのが現状なのです。

中枢機能の最たる市役所本館の耐震化もできていないのに、中枢機能があるという不明瞭な理由で、京大農場を防災公園にするというのは、とんだお笑い種です。

高槻市は、詐欺みたいな補助金の活用を画策するのはやめて、行政や医療の中枢機能の耐震化を早急かつ具体的に進めるべきです。防災を真剣に考えるなら。