高槻ご意見番

「高槻ご意見番」の代表で、高槻市議会議員の北岡たかひろのブログです。

【分室訴訟控訴審】次回は3月11日

本日11時10分より、大阪高等裁判所で、厚生会館「分室」訴訟・控訴審の第1回口頭弁論がありました。即日結審にはならずホッとしました。

次回は3月11日11時から、大阪高裁83号法廷です。

以下は、私が提出した控訴理由書です。

平成22年(行コ)第145号 損害賠償請求控訴事件
(原審事件番号:大阪地方裁判所平成21年(行ウ)第89号)
控 訴 人(原告)  北岡隆浩
控訴人(被告)  高槻市


控訴理由書

平成22年11月14日
大阪高等裁判所第7民事部1係 御中
控訴人  北岡隆浩

第1 原判決の誤り

 原判決には以下のとおり事実誤認の違法があり取消しを免れない。

1 事案の概要

 本件は、「労働センター」と「労働福祉課『分室』」という2つのほぼ目的を同じくする施設につき、前者を条例で設置する一方、後者を単に要綱で規定するのみであり、前者を有料で市内の一般の労働団体に、後者を無料で実質的に特定の労働団体に、それぞれ被控訴人が利用・使用させているのであるが、後者の要綱による設置については違法性があり、市に使用料相当額の損害を与えているというものである。
 次項のとおり、労働福祉課の「分室」は、その使用実態からすれば、明らかに「公の施設」(地方自治法244条1項)に該当するのであり、条例で設置しなければならないのであるが、上記のとおり、被控訴人は、単に要綱で規定するのみである。
 上記2施設の違いについては以下の表のとおりである。

名称 労働センター 労働福祉課「分室」
場所 高槻市市民会館の集会室401,402および403号室の計3室 高槻市職員厚生会館の1階事務室、会議室、資料室および3階集会室の計4室
根拠条例 ・平成4年4月1日~現在
高槻市文化会館条例(甲3)
なし(甲2の分室使用要綱のみ)
目的 「民主的な労使関係の確立と労働者の生産意慾の向上を図り、労働文化の発展に資するためのもの」(甲12の高槻市市民会館条例第25条。) 「広く労働者全体の福利施設としての機能が果たされるよう配慮いたしまして建設されたもの」(甲10の平成19年12月19日議会答弁)
「市民の文化活動の場を提供し、広く文化を普及させるとともに、文化の発展及び振興を図り、もって市民の福祉の増進に寄与するため」(甲3の高槻市文化会館条例第1条、第8条別表) 労働者及び労働団体の、文化教養の向上のための学習活動及び文化活動、労働者等の福利厚生活動、並びに労働者の権利義務意識向上のための活動。その他市長が適当と認めるもの。(甲2の分室使用要綱第3条第2項)
「市内の労働団体が、労働団体の健全な発展、労働者の教養の向上等のための活動」(甲4の高槻市文化会館条例施行規則第6条) 「広く市内の労働者及び労働団体に対して使用を認めている」(平成21年3月27日議会答弁)
料金 1時間あたり470~2800円。市内の労働団体が、労働団体の健全な発展、労働者の教養の向上等のための活動を目的として使用する場合、40%が減額される。 無料
平成20年度の使用状況 ・高槻建設ユニオン:9件
(※「ユニオン」とは未組織労働者の労働組合である)
1階の事務室が「連合高槻事務局」の事務所として、1階の資料室が連合高槻の倉庫として使用されていたほか(5月20日まで)、1階の小会議室及び3階の集会室が以下のとおり使用されていた。
・高槻島本労働組合総連合(共産党系):3件 高槻市職員組合:93件
・高槻教職員組合共産党系):2件 高槻市職員労働組合:38件
高槻市役所労働組合総連合(共産党系):1件 高槻市学童保育指導員組合:4件
・民間企業の労働組合:2件 ・阪急タクシー労働組合高槻支部:4件
・高槻交通労働組合:1件 高槻市保育所保育スタッフ労働組合:3件
  ・学校給食調理員非常勤労働組合:2件
  ・連合高槻OB・OG会:1件
  ・連合高槻連絡会:1件
  ・北大阪労福協:1件
  (※以上は明らかに連合系の労働団体
  北摂労災職業病対策会議:2件
大会、会議、学習会 大会、総会、集会、幹事会、会議、親睦会、学習会、旗開き、英会話、ダンス、交流会、福利厚生活動など
計 18件 計 149件



 上記の表のとおり、条例設置の「公の施設」である「労働センター」の利用件数よりも、単に要綱でのみ設置された「分室」の使用件数のほうが、圧倒的に多くなってしまっている。

2 「第4 当裁判所の判断」中,2⑴について

 原審は、「本件分室は、平成20年4月1日から平成21年3月に至るまで、多数回にわたり、労働組合等の団体に対する使用許可がされていることが認められる。これらによれば、本件分室が一定の条件の下に不特定多数の住民の利用に評価できる余地があるようにも思われる。」としながらも、本件分室部分が所管換えされたことや本件要綱に公用目的が規定されたことから、市庁舎の一部分となったとして、「公の施設」ではないとしている(原判決18頁4行目乃至19頁1行目)。
 しかし、本件分室部分の所管換えについては、再委託契約に名を借りた連合高槻による不法占有の問題が、テレビ報道(甲13)されたこと等がきっかけであり、甲17のとおり、大阪高等裁判所は、被控訴人の行為の違法性を認定している(最高裁の棄却によりこの高裁判決が確定している)。
 所管換えの前だけでなく、その後も、連合高槻が本件分室部分を独占的に使用していきた実態は、前項の表のとおり、ほとんど変わっていない。
 つまり、被控訴人は、テレビ報道や議会で問題が指摘された後も、反省をするどころか、再委託から分室へと、姑息に形式を変え、連合高槻に独占的に使用させ続けたのである。
 したがって、この所管換え前後の使用実態にほぼ変わりがないということを見ず、また大阪高裁の違法認定も考慮せず、所管換えや要綱の内容といった形式のみから、本件分室が「公の施設」ではないとした原審の判断は、誤りである。
 本件分室は、「分室」とはされているが、労働福祉課の職員はまったく常駐していない。会議室も市庁舎には多数あり、公用の会議室として本件分室を設置する必要性はなかった。使用実態からすれば、本件要綱制定及びそれに基づく使用許可は、連合高槻に対する便宜供与といわざるをえないのである。

3 「第4 当裁判所の判断」中,2⑵について

 原審は、文化会館条例上、労働センターが有料であるからといって、これ以外に市が労働者等に活動の場を提供することができないと解すべき根拠はない等として、本件要綱制定が文化会館条例及び同施行規則に違反すると断ずることはできないとする(原判決19頁6行目乃至20頁4行目)。
 しかし、同条例で有料と定めた労働センターがあるのに、それと同様の施設を無料で使用できるとすれば、同条例の趣旨は没却されてしまう。
 労働センターと本件分室との距離はわずか500m程であり、このような近接地に、無料の同様の施設設置を認めれば、有料の施設の収益が悪化し、損害を生じることは、自明の理であるし、無料の施設の設置を認めるに足る合理的な理由も、まったく見当たらない。
 労働センターは、議会が条例を可決し制定して設置したのに、本件分室は、被控訴人が議会にも報告せず要綱で設置したのであるから、議会を無視したものということもできる。
 したがって、原審の判断は失当である。
 また、原審は、本件分室の使用者の多くが連合高槻の関係団体であり、本件要綱設置以来、市が本件分室について広報をしていないことを認めながら、「本件分室は労働福祉課の所管である以上、同課と関係のある団体等がその存在を知り得た可能性はあるというべき、連合高槻の関係団体以外の団体が本件分室を利用できなかったことを認めるべき証拠もない以上・・・本件要綱が連合高槻の関係団体に対して有料の労働センターの使用料を免れさせることを目的として制定されたと認めることはできない。」とする(原判決20頁5乃至16行目)。
 しかし、「同課と関係のある団体等がその存在を知り得た可能性はある」というふうに、被控訴人と密接な関係にある団体しか、実際には使用できないのであれば、なぜ、本件要綱3条に、「市内の労働者及び労働団体」に本件分室を使用させることができると規定する必要があるのか。このような規定を本件要綱に設ける以上は、広く市内の労働者に使用させるよう努めなければ、公平性・平等性を欠くと言わざるをえない。被控訴人は、本件分室について、市の広報誌にも、市のホームページにも、掲載していないのであり、明らかに、連合高槻に独占的に使用させる目的があったといわざるをえない。
 原審は「連合高槻の関係団体以外の団体が本件分室を利用できなかったことを認めるべき証拠もない」とも言うが、甲14が本件分室(公開請求においては「厚生会館の連合高槻が占有していた部分」としている)の使用許可申請書の全部であり、(被控訴人が公文書を隠しているのなら別であるが)連合高槻の関係団体以外が使用していないことは、上記の表と、甲14をまとめた原判決別紙1及び2を見比べれば容易に分かるはずで(ただし、北摂労災職業病対策会議の2件については連合高槻との関係が不明であるが)、原審の判断は誤りというほかはない。

4 「第4 当裁判所の判断」中,2⑶について

 原審は、「原告は、本件要綱を定めて連合高槻の関係団体に対して本件分室を無償で使用させることは労働組合法7条3号の『経理上の援助』に当たる不当労働行為であり、それ自体違法であって不法行為を構成する旨主張する。」とする。
 しかし、控訴人(原告)は、「連合高槻の関係団体に対して」というような主張はしていない。控訴人は訴状で下記のとおり主張した(原告訴状12頁7乃至18行目)。

 記

 4 不当労働行為等

  第4の3記載のとおり、平成20年度の分室の1階会議室及び3階集会室の使用件数148件のうち、140件が市職員の団体による使用である。地位も収入も安定している公務員の職員団体または労働組合が、無料で分室を組合活動のために使用してきたわけであるが、これは昨今の景気や民間企業の経済状況を鑑みれば、優遇にもほどがあり、不平等であって、不当な差別的取扱いということができ、公序良俗に反する。
  また、市職員の使用者たる長・●●が、市職員の職員団体または労働組合に対し、このような無料による使用を認めることは、労働組合法第7条第3号に規定の「最小限の広さの事務所の供与」等の規定の範囲を超えているから、経理上の援助として不当労働行為に該当し、同条の趣旨に反するから、違法である。


 原審は、控訴人の主張について、故意か過失か、誤った認識をしており、それ故その判断は失当となっている。
 控訴人の上記主張のとおり、本件分室の使用許可のうち、市職員の団体に対するものは、労働組合法7条3号違反といわざるをえない。

5 「第4 当裁判所の判断」中,2⑷について

 原判決は,本件分室の所管換えにより、本件分室は、新管理規則の適用を受けないとする。
しかし、甲16のとおり、新管理規則への改正の際には、本件分室部分を除外する旨の規定の新設や削除はされていないから、依然として、本件分室は、新管理規則の適用範囲内である。よって、原判決は失当である。

6 「第4 当裁判所の判断」中,2⑸について

 原判決は,本件要綱制定行為が公有財産規則(乙5)12条違反には当たらないとするが、同条は「適正かつ効率的」な運用を定めており、上記のとおり数々の違法性があり、公用の会議室等ではなく、連合高槻の使用の便宜を図ることが実態であったのであるから、実態とはかけ離れた本件要綱制定行為が同条違反であることは明らかである。

7 「第4 当裁判所の判断」中,2⑹について

 原判決は,本件要綱3条2項の規定が、使用料条例(乙6)8条4号「公益上の必要」に該当するから、分室を無料としても同条例に違反しないとする。しかし、そうすると、文化会館条例で労働センターを有料としている規定とは均衡を欠くし、そもそも、労働者の文化教養の向上等については、使用料の免除をするまでの公益性は見いだせない(英会話やダンスでの使用に、無料にするまでの公益性があるとは考えられない(原判決別紙2))。
 したがって、原判決は失当である。

8 「第4 当裁判所の判断」中,2⑺について

 以上からすれば、原判決は失当である。

9 「第4 当裁判所の判断」中,3について

 本件要綱については、以上のとおり違法性が明らかである。
 控訴人は、高槻市議会において、●●に対し、本件について質しており、●●は、本件について、十分な認識をもっている。
 また、●●は、都市産業部長として、本件要綱を廃止する権限を有しており、これを廃止しなかった行為は違法といわざるを得ない。
 したがって、原審の判断は誤りである。

10 「第4 当裁判所の判断」中,4について

 奥本についても、前項の議会に出席もしており、本件については十分に認識し得たのであるから、●●及び●●に対する指揮監督上の義務違反の責任は免れえない。
 したがって、原審の判断は誤りである。

第2 いわゆる「要綱行政」等の問題

 法が規定する「公の施設」を、要綱さえ作れば設置できるとなれば、条例で設置することを定めた地方自治法の趣旨や、同種の「公の施設」を設置する条例の趣旨が、没却されてしまう。
 裁判所が、行政の裁量の範囲をできるだけ広く認めるべきだとしても、本件に関しては、それを逸脱・濫用した違法なものであり、司法の力で止めなければならないケースであると控訴人は思量する。
 連合高槻による職員厚生会館の本件分室部分の独占的占有は、昭和40年代からされており、原判決11頁のとおり、この問題は平成19年11月にテレビで報道され、被控訴人が議会で追及し、住民訴訟を提起し、大阪高裁で違法認定がされた。
 しかし、被控訴人は何ら反省せず、姑息にも「分室」という違法・脱法的な形式に変え、未だに連合高槻に対し便宜を供与し続けている。
 控訴人は、本件については、非常に悪質なケースと考えている。

以 上